お弁当やテイクアウトはショーケース上の窓から提供される。
お弁当やテイクアウトはショーケース上の窓から提供される。

一歩入るとおだやかであたたかみのある空間。2階の日差しも魅力的

1階はカウンター席のみ。左奥に日本酒がディスプレイされている。
1階はカウンター席のみ。左奥に日本酒がディスプレイされている。

にぎやかな高円寺庚申通り商店街を小道に入ってすぐ。しゃれた外観の2階建て一軒家に「ニホレモ」の文字と、総菜がたくさん並んだショーケースが目印だ。商店街が近くなのに静かで落ち着いたムードなのは、店の先にちょっと広めの公園があるからかもしれない。

1階はカフェのようなインテリアで、女性の一人客が多いのも頷ける。裸電球のあたたかみのある照明で、カウンターでゆっくり酒と料理を楽しめる雰囲気だ。シックな1階に対して2階のテーブル席は、大きな窓から入る明るい日射しが魅力。ランチはもちろん、休日の昼飲みにぴったりの空間だ。

2階はテーブル席。たっぷりの日差しがやさしい空間を作っている。
2階はテーブル席。たっぷりの日差しがやさしい空間を作っている。

ほぼひと月でラインナップが変わっていく日本酒。バランスを考えて銘柄を選ぶ

日本酒の瓶がずらり。それぞれの説明書きが入っている。
日本酒の瓶がずらり。それぞれの説明書きが入っている。

「ニホレモ」の「ニホ」とは、もちろん日本酒。日本酒にはレギュラーのメニューはなく、銘柄がほぼひと月ですべて入れ替わるのもこだわりだ。店長の熊谷さんやスタッフが気になる酒に加え、ラベルのビジュアルがおもしろいもの、辛さや香り、強さなど、ラインナップ全体で、目でも下でも楽しめるように工夫している。

その日に飲めるものが何か知りたかったら、店奥の日本酒ディスプレイを見るといい。実物に説明書きが添えてあり、飲み口や香りなどがわかるようになっている。瓶もラベルも本当にさまざまで、見ているだけでもワクワクだ。

自家製レモンサワーはなんと7種!圧倒的な香りと爽やかさがたまらない

ニホレモ特製グラスに入った「本気(マジ)レモンサワー」600円
ニホレモ特製グラスに入った「本気(マジ)レモンサワー」600円

「ニホレモ」の「レモ」はレモンサワー。レモンをピューレにすることからすべて自家製だ。国産ノーワックスのレモンを使っているから、果汁だけでなく、皮もすりおろして使用している。

さまざまな産地から生のレモンを取り寄せ、2〜3日に1回ピューレ状にして冷蔵保存して使用する。時期や産地による味の変化がわかる常連もいるとか。意外なことに、レモンの旬は冬。夏はレモンサワーがよく出るシーズンなのだが、生のレモンを入荷するのが難しく、毎年苦労すると熊谷さんはいう。

サワーに入れる、セロリやトマトも、生の状態からピューレにして作る自家製。
サワーに入れる、セロリやトマトも、生の状態からピューレにして作る自家製。

店で一番人気の「本気(マジ)レモンサワー」をいただこう。グラスを傾けると、飲む前からさわやかなレモンの香りがふわりと漂う。皮まで擦り下ろしているからか、香りがとても強く、シュワシュワとしたレモンの海に入っていくような気持ちになる。一口飲むと、きりっと濃いレモンの風味と強めの炭酸。甘さはなく、心地いい苦味が鼻に抜ける。これならば、刺し身に洋食、どんなものとでも相性がいい。食事とともに楽しむには抜群の酒だ。

レモンサワーは料理との相性もばっちり。
レモンサワーは料理との相性もばっちり。

おいしい!と評判のおばんざい。昼はランチに、夜はつまみに

日替わり定食は、平日ランチのみ。ばんざい定食900円。
日替わり定食は、平日ランチのみ。ばんざい定食900円。

もともと20年以上イタリアンのシェフだった熊谷さん。日替わりのおばんざいは、毎日スタッフとアイデアを出し合ってメニューを決める。旬の素材をたっぷり使い丁寧に作る総菜は、品数も豊富で、常時テイクアウトOK。毎日買いに来る客もいるほどの人気だ。

この日の定食のメインはしいたけの肉詰め。一口噛むと、ジュワッと旨味が溢れ出した。ネギやかいわれ大根のシャキシャキ感と豚肉の食感、そしてタレの甘辛さが絶妙で、甘みのある五穀米がすすむ。3つの小鉢には、ポテトサラダ、ねぎチャーシュー、しらすと九条ネギの玉子焼き。酒のつまみとしてもお馴染みの料理は定食にもぴったり。そして味噌汁に入ったカブは、ちょうどいい火のとおり具合だった。

揚げ物とご飯というイメージの居酒屋ランチとは違い、これなら毎日食べたいな、と思わせる家庭的なやさしさのある味わいだ。

おかみのおばんざい盛り合わせ1380円。一人だったらちょうどいい量。
おかみのおばんざい盛り合わせ1380円。一人だったらちょうどいい量。

酒とともに楽しむなら「おかみのおばんざい盛り合わせ」がいい。刺し身や、さまざまな食材を使った創作料理が少量ずつ入っているので、これ一つでいろんなつまみが食べられる。この日は、ヒラメの刺し身の漬け、市松模様は玉子と穴子の煮こごり、新玉ねぎと魚介のオクラ和え、マッシュルームとししとうのアヒージョ。皿を升の上にのせるなど見せ方にも工夫がある。

ちなみに、ヒラメの漬けは繊細な旨味、穴子の煮こごりのコク、にんにくのきいたアヒージョとさまざまな味わいの料理が付くが、レモンサワーはどのメニューにもぴったりだった。淡白な味の邪魔をせず、濃い味付けや油に対してはさっぱりと口の中を流してくれる。レモンサワー単体でも十分おいしいが、食事とともにして味わうのがいい酒だと改めて実感した。

気になる鯛焼きモナカの中身は、イワシとクリームチーズのリエット。中身は日替わりだ。
気になる鯛焼きモナカの中身は、イワシとクリームチーズのリエット。中身は日替わりだ。

好きな総菜3種をのせた「のせ弁」を持って公園に行こう

ご飯はおかずの下にたっぷり入っている。ご飯の大盛りは無料。
ご飯はおかずの下にたっぷり入っている。ご飯の大盛りは無料。

その日の総菜から3種をご飯の上にのせる「のせ弁」はテイクアウトのみ。総菜のメニューは豊富なので、その日の気分によって選べるのがうれしい。今回は、鶏肉団子のたっぷり野菜ソテー、トムヤム唐揚げ、ポテトサラダというボリューム弁当にしてみたが、野菜がたっぷり入っていて体にもやさしそう。味のしっかり付いた総菜や五穀米は冷めてもとてもおいしかった。ちなみに、おかずとご飯の間には海苔が挟まれていたのもうれしいポイントだ。これで600円はかなりお得感があると思う。

たくさんの品数を、丁寧に着実にこなす熊谷さん。「毎日食べてもらえるように、できるだけ自然なものを提供したい」そう話した。

右が店長の熊谷さん。左はスタッフの長島さん。
右が店長の熊谷さん。左はスタッフの長島さん。
のせ弁のパッケージには、スタッフ直筆のイラストが。
のせ弁のパッケージには、スタッフ直筆のイラストが。

取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ