古びた雑居ビルの2階に広がるスタイリッシュな空間
JR船橋駅南口から真っすぐ伸びる駅前通りを、駅を背にして道なりに歩く。あわただしく行き交う人と車でにぎやかな大通りをしばらく進み右折すると、今までの喧騒が一転。小さな店や雑居ビル、住宅が並ぶ静かな路地に出た。その一角のかなり年季の入った雑居ビル2階が『PHILOCOFFEA 201』だ。
白と黒を基調にしたインテリアに木のカウンターのある店内には、ビンテージ感のあるアイアンの小さなテーブルが5卓。スタッフがコーヒーを淹れる洗練された仕事を、カウンター越しに見ることができる。美味しいコーヒーを淹れるために計算しつくされたメソッドで、最高に美味しい状態に丁寧に淹れられたコーヒーを楽しむための空間だ。
世界一を目指して作られたスペシャルティコーヒー“友達”
さて、早速メニューをチェック。すぐに目に飛び込んできた“友達”という名のコーヒー。訊くと、粕谷プロセスで精製されたスペシャルティコーヒーで、「ほかのコーヒーでは感じられないような風味を持ったコーヒー」とのこと。これは是非とも飲んでみたい。そこで「003 友達 TOMODACHI」と、スイーツはバスクチーズケーキを注文することにした。
コーヒー豆の選択・買付・焙煎・品質管理までを行うコーヒーカンパニー『PHILOCOFFEA』の代表でもある粕谷氏が現地に行ってエチオピアの生産者と一緒にプロデュースし、粕谷自らが考案したダブルアナエロビックハニープロセスという精製方法が「003 友達 TOMODACHI」だ。
「この方法で精製した豆は、ぶどうとかプラムのような味わいで、冷めてくるとマスカットとかキウイフルーツ、パインアップルみたいで、本当にフルーツ感が強いコーヒーになってますね」と、ヘッドバリスタの小野光さん。まだ豆の状態の“友達”を特別に嗅がせていただいたが、確かにぶどうの香りがした。
ドリップされ、運ばれてきたカップから漂うコーヒーの香りに絡まるほのかなぶどうの香りが、なんとも魅惑的である。まさに小野さんが言う「独特なアロマ」だ。「ちょっと口に含んでワインっぽく回してもらうと、ジューシーな酸味を感じるかなって思います」と小野さんがアドバイスしてくれた。
少し冷めたコーヒーを口に含んで転がしてみる。雑味がなくスッキリとして、甘い。普段はミルクを入れて飲むことが多いが、ミルクを入れて飲むのが惜しく最後までブラックでいただいた。焦げ目のついたバスクチーズケーキの濃厚さが、さらに“友達”の味を引き立ててくれる。まるでワインとチーズを楽しむような、そんなリッチな気分に浸った。
もし、どんなコーヒーを飲むか迷ったら、ぜひスタッフに相談してみよう。コーヒーやあわせるスイーツなど、丁寧にアドバイスしてくれる。その日の気分を伝えれば、きっとピッタリのコーヒーをチョイスしてくれるはずだ。
美味しいコーヒーのために、豆ごとに温度も淹れ方もカップも変える
最高品質のコーヒーであるスペシャルティコーヒーを提供する『PHILOCOFFEA201』では、豆によって淹れる温度も淹れ方も変え、イートインではコーヒーを注ぐカップにもこだわる。
フルーティなコーヒーには、アロマが閉じ込めやすい縁がすぼまった飲み口の薄いワイングラスのような形状の有田焼のカップ。もうひとつは笠間焼の陶芸家Keicondoさんのもので、ちょっと深めに焙煎されたコーヒーにはこちらを使う。重さがあり飲み口が厚いことでコーヒーのボディ感や甘さをより感じられるためだ。
また、同店ではイートインのほか、テイクアウトや自家焙煎コーヒーの販売も行っている。ドリッパーがなくてもお湯とカップさえあれば淹れられるディップスタイルコーヒーもあり、世界チャンピオンのコーヒーを家でもアウトドアでも手軽に楽しむことができる。
取材・文・撮影=京澤洋子(アート・サプライ)