『風景印ミュージアム 直径36ミリの中の日本』

郵便局の奥に潜む、もう一つの世界へ

古沢 保 著/ ジー・ビー/ 1980円+税
古沢 保 著/ ジー・ビー/ 1980円+税

風景印を初めて知ったのは、恥ずかしながら『散歩の達人』編集部に入ってから。たしか調布の多摩川近くをライターさんとロケハンしているときに、そのライターさんが「ちょっと寄っていい?」と小さな郵便局に。持ち歩いているスケッチブックに貼った切手に、風景印を押してもらっているのを見たのが最初だった。調布の住宅地でなんでもない場所だったが、そこに風景印があったことも驚きだったし、図柄もその地の意外な風物がわかり、ちょっぴり感動したものだ。
ちなみに風景印とは、手紙やはがきなどに押される消印の一種。正式名は「風景入通信日付印」という。本来は使用済みであることを証明するために切手を汚す道具なのだが、「郵便物に美しさも与えてくれる」ちょっとうれしい消印なのだ。ちなみに風景印は、全国に2万4000ある郵便局のうち約1万1000局に配備されているという。
本書はそんな風景印に魅せられた著者が、風景印に興味を持った人が最初に読んでほしい本として作った一冊。風景印を手に入れる基本的な方法から、風景印を集めながらの散歩(風景印さんぽ)の提案、風景印コレクションのテクニックまでを紹介。最後には風景印図鑑もあり、初心者の動機づけになりそうな素敵な図柄がずらりと並ぶ。
移動すること自体が難しい時期でも、郵送で取り寄せることができ、気軽にその地を旅した気分にもなれる。ひとりで散歩したり、旅した記念にもできる。この本をきっかけに風景印も散歩の楽しみに加えてみてはいかがだろうか。(土屋)

『シートケーキとレイヤーケーキ』

原亜樹子 著/ 東京書籍/ 1760円+税
原亜樹子 著/ 東京書籍/ 1760円+税

著者はWeb「さんたつ」で好評連載中の原亜樹子さん。エレガントな写真、丁寧なレシピとともに、アメリカの菓子文化についても触れられており、読んでいるだけでも楽しい。アメリカでは特別な日の食卓を彩るというシートケーキとレイヤーケーキ。肩ひじ張らずに作れるので、気軽にチャレンジしたくなる。(白瀧)

今でこそ、いちご大福は違和感なく和菓子の定番の座に収まっているけれど、かつては奇抜な存在だった。1980年代にいちご大福ブームを牽引し、いちごを入れた豆大福と共にバブル期を駆け抜け、いちご大福を定着させた立役者が、新宿住吉町の『和菓子処 大角玉屋(おおすみたまや)』だ。

『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』

パリッコ 著/ 光文社/ 1650円+税
パリッコ 著/ 光文社/ 1650円+税

缶詰バーベキューやベランダピクニックなど、今すぐ真似したくなるような楽しい酒飲みライフハックの数々。コロナ禍を悲観しすぎず、やれる範囲で生活を楽しむことに対しての筆者のある意味貪欲な姿勢は、精神的な豊かさにあふれている。表題にもなっている、筆者の父との思い出エピソードもしみじみ感ぜられた。(吉岡)

『講談最前線』

瀧口雅仁 著/ 彩流社/ 2200円+税
瀧口雅仁 著/ 彩流社/ 2200円+税

演芸評論家である著者が、昨今の講談の盛り上がりについてまとめた一冊。「神田伯山は釈場を復活させるのか」「これは聴きたい! 講談のらしいネタ」など初心者でもわかりやすいトピックが多く、何より講釈師顔負けの軽やかな語り口が小気味よい。読んで聴けば、新たな世界に出合えるかも。演芸は落語のみにあらず!(町田)

『散歩の達人』2022年2月号より

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。