最初、このプロジェクトのことを聞いたとき、率直に「KADOKAWAがなぜ所沢に?」と驚いた。
じつは元々、KADOKAWAは埼玉県内に所在する物流倉庫を新築できる広い土地を探していたが、現在のサクラタウンの場所、旧所沢浄化センター跡地が利用できることになり、このプロジェクトが始まったという。そして、ただこの場所を工場や倉庫に利用するだけではなく、所沢市との共同プロジェクトとしてみどり・文化・産業が調和したまちづくりを進める拠点とすることにした。周辺では道路や街並みの整備、IT産業など先端産業の誘致などが、多方面に進められていくが、「ところざわサクラタウン」に続き、東川を挟んで反対側には、2021年中に所沢市が観光情報・物産館を整備する予定だ。

「角川武蔵野ミュージアム」の本棚劇場。 ©️KENGO KUMA & ASSOCIATES ©️KAJIMA CORPORATION
「角川武蔵野ミュージアム」の本棚劇場。 ©️KENGO KUMA & ASSOCIATES ©️KAJIMA CORPORATION
社員食堂でもある「角川食堂」だが、誰でも利用できる。 ©️2019 MANERE Co., Ltd.
社員食堂でもある「角川食堂」だが、誰でも利用できる。 ©️2019 MANERE Co., Ltd.
体験型書店「ダ・ヴィンチストア」。 ©️2019 MANERE Co., Ltd.
体験型書店「ダ・ヴィンチストア」。 ©️2019 MANERE Co., Ltd.

注目は石造りのミュージアム

さて、そんな「ところざわサクラタウン」だが、敷地内の施設もすごい。まず目を引くのが、角川文化振興財団が運営する「角川武蔵野ミュージアム」だ。建築家・隈研吾が水に浮かぶ石をイメージして作ったミュージアムは外観から圧巻だが、美術・博物・図書をまぜまぜにして、連想や想像力でつなげようとするコンセプトも斬新。象徴となるのは4、5階の2階層をぶち抜いた高さ8mの巨大本棚に囲まれた空間「本棚劇場」。KADOKAWAの刊行物をはじめ、角川源義文庫、山本健吉文庫など様々な個人蔵書2万5000冊が一堂に並ぶ。3階にはアニメの文化を紹介する「EJアニメミュージアム」も併設している。

ほかにも、イベントやコンサートも行える「ジャパンパビリオン」や「千人テラス」。人と本をつなぐ新しい本屋「ダ・ヴィンチストア」。一般でも利用できる社員食堂「角川食堂」をはじめ、地域の店も入ったショップ&レストラン。さらに33部屋を用意する「EJアニメホテル」や神社まで建設。

東所沢にできるこの複合施設は、埼玉県だけでなく首都圏を代表する、全く新しい文化発信拠点になるはずだ。

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ところざわサクラタウン
JR武蔵野線東所沢駅から徒歩10分
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3・11・14

取材・文=土屋広道(本誌編集部) 画像提供=KADOKAWA
『散歩の達人』2020年2月号より