「ビートルズは始まりであり、きっと到達点。何を聴いてもベースにビートルズがあるんじゃないかと思うんですよ」と、話すのは店主の陶山哲典(すやまてつのり)さん。彼は2人の兄の影響を受け小学生の頃からビートルズを聴いていた、根っからのビートルマニアだ。
「あの頃はラジオをかけていると1時間に1回くらい『抱きしめたい』がかかってました。だから身体にすりこまれているんですよ」。そんな陶山さんは、ロックカフェを開くにあたりビートルズの曲名から店名を取った。
「とりあえずビートルズの曲にしたかったんです。みんな安心して来られるじゃないですか」
スピーカーやアンプは知り合いがくれたものを利用しながら、少しずつ進化。音響や芸能関係のお客さんも多いそうで、オーディオ通からもその音はお墨付きをもらっている。スピーカーが織りなす音のシャワーは、なるほど長い時間をかけて培った歴史も感じさせる。
「お客さん同士がいろいろ話してますね、それが楽しいみたいで」と陶山さん。この店はリクエストしてレコードを聴くシステム。それゆえレコードをかける度に、客は新たな音楽を発見し、懐かしいサウンドに共感するのだ。
「会社名も肩書きも関係ない、利害関係なんてまったくなしというのがいいんだと思います」
音楽が共通言語、これぞロックカフェ。今日もビートルズの盤に、陶山さんの手でゆっくりと針が落とされる。
取材・文=半澤則吉 撮影=小野広幸