ビルの一角にある「そこへ帰りたくなる」カフェ
吉祥寺駅の南口から井の頭公園方面へ徒歩3分。なにげなく歩いていると、思わず通り過ぎてしまいそうな「けやきビル」という雑居ビルの3階に『alley cafe』はある。階段を上がっていくと、アンティークな雰囲気が漂う扉が出迎えてくれる。
扉を開けて店内に入ると、暖色の照明が灯る、温かみのある空間が広がっていた。『alley cafe』は、およそ9年半もの長い月日、この場所で変わらず営み続けている。
「お腹だけではなく、心を満たすカフェを目指しています」と話すのは、現オーナーである伊藤さん。実は今年、『alley cafe』をオープンした初代オーナーから、伊藤さんの営む会社でカフェの運営を引き継いだばかりなのだそう。
伊藤さんは、お店を引き継いでからも、店名をはじめ、「雰囲気を楽しんでもらう」という店のコンセプトをそのまま残し続けている。その証拠に、店内はおしゃれなアンティークがそろうカフェらしい空間なのだが、不思議と「もう一度帰ってきたくなる」ような、温かい空気に包まれていた。
人気のカフェではお客の滞在時間に制限を設けることもあるが、このカフェではあえて時間制限を設けていない。これは「お客様にゆったりと寛いでもらうこと」を第一に考える、前オーナーの想いを守り続けているから。『alley cafe』が、カフェ激戦区の吉祥寺で10年近くも変わらずに愛されている理由の、ひとつといえるだろう。
読書やお酒で、心ゆくまで自分の時間を過ごす
わずか20席ほどのこぢんまりとした店内には、ゆっくりと過ごせる理由がたくさんある。例えば、本棚に並べられた、さまざまなジャンルの本。前オーナーが集めたもので、「本を読みながら、ゆっくりと過ごしてほしい」という思いが詰まっている。実際に、本を手に取ってくつろぐ人も多い。ほっとひと息をつきながら、普段は手に取ることのない本との出会いも楽しめそうだ。
昼間は、窓から光があふれ、店内を明るく照らす。プレートなどの食事メニューを提供するランチタイムは主婦やOLが訪れ、カフェタイムには自家製スイーツを目当てに訪れる学生でにぎわうなど、時間帯によって訪れる人の年齢層が変わり、カフェの風景は移り変わる。
また、夜になると店内は照明を落とし、キャンドルを灯して昼間の雰囲気とはガラリと変化。夜の時間帯は、オリジナルカクテルなどのお酒やおつまみを提供しているため、一人で訪れてゆっくりと1日を締める人も多い。このカフェは日常のさまざまなシーンに寄り添い、人々の心を満たしてくれるのだ。
看板メニューは、丁寧に手作りされた自家製チーズケーキ
そんな『alley cafe』の、オープンから変わらない看板メニューはオレオのニューヨークチーズケーキ。ここ数年は、SNSでかわいらしい見た目に惹かれ、チーズケーキを目当てにやって来る人も少なくない。たしかに、直感的に「食べてみたい」と思わせてくれる、魅惑的な見た目だ。
砕いたオレオをたっぷりと生地に練りこみ、その上にさらにオレオをぎゅうっと敷き詰め、オーブンで焼いたチーズケーキ。甘いオレオと、酸味のあるチーズケーキの相性の良さは言うまでもない。さくっとしたオレオと、舌のうえで溶けるなめらかなチーズケーキとの食感の対比も楽しい。はじめて来店したら、間違いなく食べておくべき鉄板スイーツだ。
また、ドリンクも頼んでみることにした。「こちらは特に女性に人気ですよ」とおすすめしてもらったのは、アイスチャイ630円。マイルドなチャイと、ミルクが調和したティーラテだ。チャイといえど、スパイス感がおさえられているので飲みやすい。やさしい甘さとミルクのコクが、ひととき、やすらぎの時間を運んできてくれる。
今までのメニューを残しながらも、これからは「新しいメニュー作りにも挑戦していきたい」と語る伊藤さん。また、ゆくゆくは時代のニーズに合わせた店舗展開や、店内の雰囲気作りをおこなっていくことで、『alley cafe』の魅力をたくさんの人に広めていきたいという。
何度も帰ってきたくなる隠れ家は、くつろげる空間やおいしいメニューで、人々の心を静かに満たしてくれる。
※緊急事態宣言中はフード19:00LO、ケーキ&ドリンク19:30LO/定休日:火/アクセス:JR中央線吉祥寺駅から徒歩3分
取材・文・撮影=稲垣恵美