生まれ変わった現美の魅力
『東京都現代美術館』は、1995年に開館し、戦後美術から近現代にいたる幅広いジャンルの作品約5400点を収蔵、さまざまな切り口の企画展を行っている。2016年より3年という長い休館を経て、設備機器の更新をはじめ、美術館を隅々まで楽しめる新たなサイン、木場公園側のアプローチをメインとしたパブリックスペースの整備、美術図書室の改装などを行った。
今回の改装は、「来館者はもちろん、近隣住民も気軽に足を運んでもらい、美術館やアートがより身近なものになるればという想い」がこめられており、2階のカフェ&ラウンジを通じて、体感できるようになっている。
エントランスからまっすぐ進み、ミュージアムショップ脇の階段を上ると、『二階のサンドイッチ』がある。
ゆるやかにカーブを描く階段は、どこかワクワクさせる。一体、どんな店舗が待っているのだろうか……。
パンを額縁に見立てた新アート!?
店内へ足を踏み入れて真っ先に目に飛び込むのは、彩りも鮮やかなサンドイッチの数々。契約農家から仕入れた野菜や沼津港から毎日届く新鮮な魚など、産地直送のもので素材本来のおいしさを生かした多彩なサンドイッチは、どれにするか迷ってしまう。
“サンドイッチは食における「額縁とアートの関係」に似ている”というのが店のコンセプト。パンに挟む具材は、ローストポークやデミグラスソースのハンバーグ、低温調理の鴨の炙りローストなど、シェフ考案のレストランで味わうような料理が使われている。
シェフ渾身の豪華サンドイッチ
今回食したのは、グリルチキンのフランス風バイン・ミー。ガラムマサラで、スパイシーに仕上げたチキンと、エストラゴンというハーブの爽やかな風味がきいた一品。フランスパンからはみ出るほどのボリュームで、お腹も十分満たされる。
パンとともに味わうのは、きれいな紫色と紅茶の色合いが美しい、蜂蜜とレモンのジャスミンティー。混ぜて味わうのだが、きれいなグラデーションを崩すのがもったいない。一口飲んでみれば、優しいジャスミンの風味と、ほんのり甘さと酸味が広がり、肉や魚系のサンドイッチとのバランスもよい。
店内も一つの展示空間のよう
今回案内してくれたのは、店舗の運営元である株式会社スープストックトーキョーの三枝光毅(さえぐさ みつき)店長。
「美術館の地下1階にあるレストラン『100本のスプーン』も運営元が同じでして、そこのシェフが考案したサンドイッチを提供しています。
パン(額縁)に挟むことで、料理(アート)を思い思いの場所で食べることができます。目の前が木場公園という絶好のロケーションでもありますので、テイクアウトでも楽しんでいただけます」と話す。
店舗は円型フロアになっており、レジ・厨房を囲むように座席が配置されている。天井からやわらかな光りが差し込み、店内を温かく包み込む、開放的な空間だ。
コルクの円型ベンチ、木の温もり感じるテーブルやイス、レジ脇にはかわいい埴輪の置物など、美術館ならではのアーティスティックな雰囲気そのままで、隣席ともほどよい距離をとってゆったりくつろげる。
デザート系のおすすめ
デザート系サンドイッチを一品紹介しよう。木場公園にはベンチとテーブルが置いてあるので、テイクアウトしたサンドイッチを食べるのにもうってつけだ。
あんバターホイップは、たっぷりのつぶ餡と 軽やかなホイップクリーム、バターの濃厚さが加わった、サンドイッチというよりスイーツ! つぶ餡のやさしい甘さは、緑茶にもよく合いそうだ。
イートインもいいけれど、自然の中で食べるサンドイッチも格別なので、お試しを。
取材・文・撮影=千葉香苗