渋谷・松濤の基礎知識
渋谷は今、100年に一度といわれる再開発が進み、渋谷ストリームや渋谷スクランブルスクエアといった高層ビルが続々と建ち、駅とその周辺は日々変化している。一方で、その波にさらわれることなく、「のんべい横丁」をはじめ、『名曲喫茶ライオン』や『ムルギー』がある百軒店商店街といった昭和風情たっぷりの一画も残っている。
そのにぎやかさとうって変わり、松濤エリアは、立派な邸宅が立つ都内屈指の高級住宅街。明治時代には旧佐賀藩・鍋島家により茶園「松濤園」が開かれ、高級茶「松濤」を栽培していたという。これがこの地の町名として採用され、鍋島松濤公園にその面影をとどめている。
1 SHIBUYA SKY
約230mのパノラマビューに感動
渋谷スクランブルスクエアの展望施設。屋外展望空間「SKY STAGE」は、眼下にスクランブル交差点や渋谷の街が広がり、ハンモックに寝そべれば空との一体感を味わえる。
2 のんべい横丁
戦後誕生の人情あふれる飲食街
JR高架沿いにある昭和レトロな飲み屋街。広さ約2〜3坪の小さな居酒屋全38店舗がひしめく。3代続く焼き鳥『並木』、93歳の大ママが営む『会津』など創業50年超えの店もある。
3 MIYASHITA PARK
渋谷の新たなランドマーク
2020年7月オープンの全長約330mからなる低層複合施設。日本初出店の店舗を含む約90店舗が入る商業施設、屋上公園として整備された宮下公園、ホテルが一体となっている。
4 戸栗美術館
陶磁器の名品が勢ぞろいした美術館
創設者・戸栗亨が蒐集した、伊万里、鍋島などの肥前磁器、中国や朝鮮などの東洋陶磁器を中心に所蔵。年4回の企画展を開催。
5 鍋島松濤公園
貴重な自然遊水池が残る公園
紀州徳川家の下屋敷払い下げをうけ、鍋島家が明治9年(1876)に開いた茶園「松濤園」の跡地。区内でも珍しく自然湧水池が残り、樹木や草木が覆う自然豊かな児童公園だ。
6 松濤美術館
紅味を帯びた花崗岩の外観が印象的
建物中央に配した吹き抜け空間の噴水を囲むように、円形に展示室が配される。企画展のほか、東京都渋谷区に関連する公募・小企画展、音楽会や美術教室などを開催。
7 Bunkamura
さまざまな文化・芸術の発信基地
昭和64年(1989)に開館した大型複合文化施設。総客席数2150席を備えるオーチャードホール、映画館や美術館、カフェやアート関連のショップなどからなり、年間300万人もが訪れる。
名曲喫茶ライオン
静かに、名曲に耳を傾ける時間を
大正15年(1926)に恵比寿・並木橋で開業し、後に現在地へ移転。クラシック音楽の愛好家が集う名曲喫茶で、毎日定時コンサートを行う。ホットコーヒー600円、ミルクエッグ770円。
ムルギー
70年変わらぬ味で愛される
昭和26年(1951)創業の老舗カレー店。ルーから手作りし、スパイス以外はすべて国産食材を使用。おすすめは玉子入りムルギーカリー1100円で、山の形に盛り付けたライスが特徴的。
【街探検】奥シブ探訪
大人が楽しむ、人気急上昇の“奥シブ”。ここでしか味わえない絶品グルメを
渋谷の中でも、最近注目されているのは通称・奥シブ(奥渋谷)。NHK放送センター近く、渋谷東急本店から井ノ頭通りにかけた神山町・宇田川町・富ケ谷エリアのことをいい、神山商店会の通りをメインに、個性強めのショップが並ぶ。
昭和から続く鮮魚食事処で『孤独のグルメ』にも登場した『魚力』をはじめ、日本を代表するショコラティエの店『ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマ』、店内製造のチーズ専門店『&CHEESE STAND』などはいわずと知れた人気店。中でもポルトガル菓子専門店『ナタ・デ・クリスチアノ』の、焼き上がりに合わせて行列もできるエッグタルト「パステル・デ・ナタ」230円は、並んでも手に入れたい一品だ。
また、異色のコーヒースタンドが多いのも特徴で、ラテに特化した『THE LATTE TOKYO』、元寿司職人が作るたまごサンドが大人気の『CAMELBACK』など、その道に精通したグルメは、一度は試してみたい。
取材・⽂・撮影=アド・グリーン
『街がわかる 東京散歩地図』より