駅沿いなのに隠れ気味? な本格フレンチ
「赤羽で食事」というと、駅近くの居酒屋が主役になりがち。ビール片手に焼き鳥や枝豆をつまみつつ、仲間たちとワイワイ楽しむ――それはそれで楽しいが、ちょっと雰囲気のいいお店でリッチなひと時を過ごしたいなんて時は、『CARIB(カリブ)』に行ってみるのはどうだろうか?
JR赤羽駅東口を出て、線路沿いに歩くこと5分ほど。賑わっている駅前の居酒屋やラーメン店から離れていくと、シックな黒い看板で『CARIB』と書かれたお店にたどり着く。「リーズナブルに飲める街・赤羽」にありながら、本格フレンチが楽しめるお店として常連客から根強い支持を集めているのがこのお店だ。
「2012年にオープンしたので、2021年で9年目ですね。今までこうした取材とかを受けたこともないし、クチコミで話題になるということもなくて……我ながら『よく9年も続いたなぁ』なんて思いますよ」とは、オーナーシェフの奥様・入佐佐千代さんの評。
少々遠慮気味に話しつつも、夫婦二人三脚でお店を切り盛りしてきたことで地元赤羽に住む常連客が根付いて、今では親戚のように付き合う方もいるというほど。本格フレンチのお店ながら、入佐夫妻の仲睦まじい様子もあってか、居心地のいいアットホームな雰囲気を感じる。
そもそも赤羽にお店を出したというキッカケも、入佐夫妻の仲の良さを感じるものだった。
「私たちはもともと赤羽に住んでいたんですが、2011年に東日本大震災がありましたよね? その当時、シェフ(勉さん)は都心のレストランに勤務していたのですが、地震の後はなかなか帰ってこられなくて。こんな大変な思いをするなら、いっそ自宅の近くに店を出そうというので、オープンしたんです」
家族揃って赤羽の街に住み、生活していくという思いが、このお店が生まれる大きな理由となった。夫婦仲睦まじくやってきたからこそ、赤羽の街に愛され、本格フレンチのお店が根付いたのだろう。
食材にこだわり抜いて、ランチメニューは全て日替わりに
『CARIB』ではディナーがメインになってはいるものの、「リーズナブルな価格で本格フレンチが食べられる」ということで、オープン当時から設定されていた日替わりのランチメニューも人気。
ランチでは常時4種類ほど日替わりメニューが用意されていて、そのラインナップはラム肉のスパイス煮込みや国産鶏もも肉のロースト、ホロホロ鳥入りのサラダなどどれも食べたくなるようなメニューの数々だったが、その中でも「人気ならこれが1番」という、ブラックアンガス牛ハラミのステーキのセット1980円を注文した。
「お店としては『旬の食材をおいしく食べてもらいたい』という思いがあるんです。なので、ランチメニューは固定のものがなくて、全部日替わりなんです。シェフがその日仕入れた食材で作りたい料理を作ってお出しするという感じなので、メニューも全部手書きにしているんです」
「旬の食材を一番いい時期に食べてほしい」と思いに加え「野菜をたっぷりと食べてほしい」という入佐夫妻の願いが表現されたランチメニュー。盛岡から定期的に取り寄せているというこだわりの春野菜はどれも味が濃く、新鮮さがありありと伝わってくるほど。ハラミステーキにも負けず劣らずの味わいで食べ応え抜群のランチメニューとなった。
夫婦二人三脚だからこその“温かみ”
その日ごとに異なるメニューで楽しめるランチに、食材への徹底したこだわり。そしてお店に漂うどこかほんわかとしたあったかい雰囲気……赤羽にありながら本格フレンチを堪能できる『CARIB』の魅力をトコトン堪能。まさに自分だけの秘密にしておきたいとっておきのお店だが、佐千代さんにお話を伺うと、「決して隠れているわけじゃないんですよ!」という意見も。
「駅から近いところにあるんですけど、メイン通りではないせいか、ホントに隠れ家っぽい感じになっちゃってますが(笑)、食材にこだわった上質なフレンチをこれからも提供していきますので、是非食べに来てほしいですし、ちょっといいワインが飲みたいという方はぜひ!」とコメントしてくれた。
夫婦二人三脚だからこそ生まれる、本格的ながらどこか親しみのあるフレンチのランチ。ちょっとリッチな気分に浸りたいときに大切な人と行きたい素敵なお店だ。
構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌弘