『博多天神』
都内に数店舗ある、豚骨ラーメンのローカルチェーン店。ラーメン一杯500円という破格で、注文してから出てくるのも早い。ここに高菜、紅ショウガ、それにコショウをたっぷり振りかけてズルズルッ! 飲んだ後でも、この極濃スープに絡んだカタメ細麺の喉越しがたまらない。キクラゲとの相性も抜群だ。
『天王』
高円寺駅と新高円寺駅のちょうど中間にある〝ザ・昭和〟のラーメン屋。『生姜醤油ラーメン』のスープが、飲み疲れた胃を優しく労わる。そして、コシのあるたまご麺が唇に心地よく、漫画のようにズルズルとすするのがいい。酒場の帰りに一度「ごっつぉさん。勘定ここに置いておくよ」といって、爪楊枝を加えながら颯爽と立ち去るのが夢である。
『いのこ』
副都心線の平和台駅から少し離れたところにあり、一見してラーメン屋とは思えない外観。ここの『海老味噌ラーメン』は、ひとすすりすれば強烈な海老の風味が全身をめぐり、酔ったアタマでもカッと目が醒める旨さ。プリップリの中太麺が、海老の香りと共にゴクリと食道を過ぎていく……海老だ、私は海老になった。思い出しただけで、酒が一杯飲めそうだ。
酔っぱらったときの〝家系ラーメン〟は、特に旨く感じるもの。なにより〝シメた感〟が満たされるのだ。その中でも新中野駅にある『武蔵家』は格別。特徴的な赤スープに、これまた特徴的な中太麺がよく合う。他の家系の中太麺にくらべて、圧倒的な〝ツルシコ感〟があり、麺をすするたびに「うまい麺だなぁ……」と、周りに聞こえないようにつぶやいてしまう。私の〝家系ナンバーワン〟は、当分揺るがないだろう。
『ホープ軒』
都内に〝ホープ〟と名の付くラーメン屋が数多くあるが、飲んだ後の〝ホープ〟はとにかく旨い。私のよく行く『阿佐ヶ谷ホープ軒』もそうで、あの黄色い看板が見えたら入らないわけにいかない。チャッチャした背脂の玉が浮いたスープ。そこに箸を潜らせると、テリツヤの縮れ麺が顔を出す。白いシャツなんて気にもせず、ズルズルと勢いよくすする気持ちよさ。この時ばかりは、脂が胃に優しい……酒を飲んでいるときも〝今日もホープ軒に寄ろう〟と、どこかでそう思っている自分がいるのだ。
ほろ酔いでも泥酔でも、シメに食べるあのラーメン、あの麺をすする快感は、酒に酔った時だけの楽しみのひとつ。
ズルズルッ、ズルズルー……
今夜も、酒場のあとに麺を奏でよう。
取材・文・撮影=味論(酒場ナビ)