光、知覚、意識を通る没入的な作品世界へ誘う

撮影=下村一喜
撮影=下村一喜

1990年代半ばに自身のパフォーマンスに基づいた写真や映像作品である「サイボーグ」シリーズを発表し、CGを先駆的に使ったSF的なイメージで時代の寵児として注目を浴びた森万里子氏。その後、森氏の関心は、日本のアニメ文化、ジェンダー、ポストヒューマンといった現代社会への批評的な視点から、仏教の死生観や宇宙観に深く影響されたより壮大な哲学的関心へと広がり、作品は、涅槃や浄土など仏教的世界を連想させるインタラクティブな大規模インスタレーションへと発展。太古の時代から無限の宇宙まで、時空を超越したあらゆる生命のつながりを提唱する概念「ワンネス(Oneness)」が中核的な価値観となっていった。

そこから世界中の学者や科学者との研究・協力に基づき、アニミズム、縄文やケルトなどの古代文化、仏教の唯識論、素粒子論、宇宙物理学まで広範な主題の探究がなされ、その成果は《WaveUFO》(1999~2002)に代表される最新テクノロジーを駆使した作品として具現化、体験化されていく。

「(前略)生と死は物質的な次元では分かれているように見えても、より深い層においては、もともと分断されていないのかもしれません。その感覚は、名付けることのできない内なる光として、作品の中に静かに息づいています」(森万里子氏)

展覧会タイトル「燦燦」は森万里子の実践の中心にある「光」を象徴した言葉。テクノロジーの加速と不安定さが渦巻く現代において、すべてをつなぐ希望でもある「光」が息づく作品が、自身を見つめ直す契機を与えてくれるに違いない。

森 万里子 《Wave UFO》 1999-2002年 展示風景:「森万里子:Wave UFO」 ブレゲンツ美術館(オーストリア) 2003年 撮影:リチャード・リーロイド
森 万里子 《Wave UFO》 1999-2002年 展示風景:「森万里子:Wave UFO」 ブレゲンツ美術館(オーストリア) 2003年 撮影:リチャード・リーロイド

エポックメイキングな初期作品から現代の活動まで一挙展覧

森 万里子 《スター誕生》 1995年
森 万里子 《スター誕生》 1995年

最初のセクションでは、森氏が大きな注目を浴びる契機ともなった《スター誕生》(1995年)や「サイボーグ」シリーズ(1994~1995)など90年代の作品が登場。アニメ、ビデオゲーム、コスプレ、ファッションを先駆的に採用した作品に始まった活動は、高度なデジタル・イメージング技術を用いて、仏教の宇宙観、仏教の図像に基づいた神格化された姿で自身を演出した作品へ。華やかな作品の外見の裏に進化し続ける精神性への信念が暗喩されていることも見逃せない。

さらに2000年代初めから全人類のつながり「ワンネス」という概念を提唱し、具現化させていった作品に注目。《Wave UFO》内のCG映像《コネクティッド・ワールド》など、深層意識とのつながりを視覚化させた作品を取り上げる。

また、展示の締めくくりとして森氏が2010年に設立したFaou財団の活動にも注目する。宮古島やリオデジャネイロにそれぞれの地域コミュニティの協力を得ながら、宇宙や天空の動きとも連動したパブリックアート作品を設置する活動が紹介される。

時空を超え、ミクロからマクロまで自在に行き来する壮大な創作活動の軌跡を目撃しよう。

森 万里子 《トムナフーリ》 2006年 ガラス、ステンレス、LED、リアルタイム制御システム  327.4×115.3×39.6 cm  撮影:リチャード・リーロイド 画像提供:SCAI THE BATHHOUSE(東京)
森 万里子 《トムナフーリ》 2006年 ガラス、ステンレス、LED、リアルタイム制御システム 327.4×115.3×39.6 cm 撮影:リチャード・リーロイド 画像提供:SCAI THE BATHHOUSE(東京)
森 万里子 《リング:自然とひとつに》 2016年 積層アクリル、ステンレススチール、コンクリート 618×φ300 cm  Courtesy:Faou公益財団(ニューヨーク) 展示風景:クナンベベ州立公園(ブラジル、リオデジャネイロ州)撮影:ステファニー・レアル
森 万里子 《リング:自然とひとつに》 2016年 積層アクリル、ステンレススチール、コンクリート 618×φ300 cm Courtesy:Faou公益財団(ニューヨーク) 展示風景:クナンベベ州立公園(ブラジル、リオデジャネイロ州)撮影:ステファニー・レアル

開催概要

「森万里子:燦燦」

開催期間:2026年10月31日(土)~2027年3月28日(日)
開催時間:10:00~22:00(火・11月27日は~17:00、ただし11月3日は~18:00、2月23日は~22:00。入館は閉館30分前まで)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F)
アクセス:地下鉄日比谷線六本木駅から徒歩3分、地下鉄大江戸線六本木駅から徒歩6分
入場料:一般2800円(土・日・祝3000円)、高校・大学生1700円(土・日・祝1800円)、65歳以上2400円(土・日・祝2600円)、中学生以下無料

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/marikomori/

 

取材・文=前田真紀 ※画像は主催者提供