広重や国芳の戯画から風刺画まで、庶民を楽しませた「たわむれ」の軌跡
浮世絵には、現世を苦しみ=「憂世」ではなく、楽しみ=「浮世」として捉える考え方があるという。なかでも戯画は「たわむれ」の絵として、見る者を笑いに誘い、今も高い人気を誇っている。
本展では、『町田市立国際版画美術館』の浮世絵コレクションを中心に、幕末明治期の戯画をおもに紹介。天災や戦争によって人々の間に不安が渦巻き、混迷の時代だった幕末明治期。そんななかでも浮世絵は、屈することなく「たわむれ」に興じつづけ、描かれたキャラクターたちは決して笑いをやめなかったという。
歌川広重や歌川国芳による戯画のほか、鯰絵や麻疹絵、幕末期の風刺画、昇斎一景の開化絵、そして小林清親のポンチ絵など、前期・後期あわせて約250点が集結。うき世(憂世・浮世)における「たわむれ」の数々に、思わず笑みがこぼれそうだ。
大地震に麻疹流行まで、災害も笑いで描き出す
中でも注目なのが、幕末明治期に人気を博した浮世絵師による戯画だ。歌川広重(1797~1858)による『東海道五拾三次(保永堂版)』は、叙情豊かな東海道の風景とともに、旅人たちのユーモアに満ちたドラマを描いた作。客引きから必死に逃れる人など、風景画のなかに笑いの要素があふれている。
また、戯画の名手として今も多くのファンを惹きつけている歌川国芳(1797~1861)の戯画も登場。複数人で男性の横顔を作った戯画の代表作《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》や、江戸幕府を風刺した作品として当時評判になった《浮世又平名画奇特》などが展示される。
さらに、安政2年(1855)に発生した江戸大地震や、文久2年(1862)に日本全国で流行した麻疹を題材とした鯰絵や麻疹絵なども登場。荒唐無稽な予防法や見えない病気を可視化した独自のキャラクターが描かれているのも興味深い。
社会的な危機も笑いで乗り越えようとする人々の姿から、たくましさが伝わってくる。
関連イベントも開催
記念講演会「明治版画の動向と戯画・風刺画」
美術史家・岩切信一郎氏を講師に迎えた記念講演会が館内講堂にて開催。
9月21日(月・祝)14時~
定員100名(予約不要・要本展観覧券)
記念講演会「幕末風刺画に見るわらい」
館長の大久保純一氏による記念講演会「幕末風刺画に見るわらい」が館内講堂にて開催。
10月17日(土)14時~
定員100名(予約不要・要本展観覧券)
担当学芸員によるギャラリートーク
館内企画展示室にてギャラリートークが開催。
10月3日(土)・11月8日(日)各回14時~
参加には当日の観覧券が必要です。
開催概要
「うき世のたわむれ:笑いつづける浮世絵と幕末明治の渦」
開催期間:2026年9月12日(土)~11月23日(月・祝)
前期:9月12日(土)~10月12日(月・祝)
後期:10月15日(木)~11月23日(月・祝)
開催時間:10:00~17:00(土・日・祝は~17:30、入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし9月21日・10月12日・11月23日は開館)、9月24日(火)、10月13日(火)
会場:町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2(東京都町田市原町田4-28-1)
アクセス:JR横浜線・小田急電鉄小田原線町田駅から徒歩15分
入場料:一般1000円、大学生・高校生500円、中学生以下無料
※障がい者手帳をお持ちの人と付添1名は半額。
【問い合わせ先】
町田市立国際版画美術館☏042-722-3111
公式HP:https://hanga-museum.jp/exhibition/schedule/2026-631
取材・文=前田真紀 画像提供=町田市立国際版画美術館






