屋根裏で眠っていた作品たちが牧野博士の庭園へ
『牧野記念庭園』スタッフが杉山雅子氏の作品に出会ったのは、2016年のこと。雅子の夫であり、植物生態写真家の埴沙萠(はに しゃぼう)氏の展覧会を終え、作品の返却に自宅を訪れた時のことだった。「実は屋根裏にも作品があってね……」という言葉で屋根裏をのぞくと、所狭しとばかりに作品が並んでいたという。杉山氏の作品は、どれも木や貝などの自然の素材が使われ、伸び伸びと育った姿がそのまま作品に生かされている。
「好きだから、楽しいから」と、無邪気な心で生み出された作品たちは、杉山氏が亡くなった後、屋根裏で静かに眠り続けていたが、満を持して『牧野記念庭園』に来ることになったという。
企画展担当の伊藤千恵さんは、「作品はどれも木や貝などの自然の素材を使って作られたもの。木は枝分かれしたり曲がっていたりと自然の姿がそのまま作品に表れています。展示作品について使われている素材を探したり、タイトルを考えたりできるパンフレット(展示室で無料配布)も用意しています。パンフレットの問いに回答してくれた人には、作品に使われたものと同じような貝の詰め合わせをプレゼントします(数量限定)」と語る。
作品たちのユニークで生き生きとした姿が観る者の創作意欲もかき立てそうだ。
NHKドラマ『らんまん』のモデルとなった牧野博士の庭園も必見
『牧野記念庭園』は、牧野富太郎博士が大正15年(1926)から94歳で亡くなる1957年まで居住し、自らが採集してきた植物を植え、「我が植物園」として愛した住居跡を整備した庭園。牧野博士の没後、博士ゆかりの地を広く一般に開放し、博士の偉業を末永く後世に伝えようと、練馬区が1958年に開園した。園内には300種類以上の草木類が生育し、スエコザサ、サクラ”仙台屋“、ヘラノキなど、学問的にも貴重な植物を多数見ることができる。
また、常設展示室では牧野富太郎博士が植物採集や研究のため愛用した道具などが展示されるとともに、研究活動や生活の様子が紹介されている。書屋展示室には書斎と書庫の一部が当時のまま保存され、晩年を過ごした様子が再現されているのも興味深い。
開催概要
企画展「木と貝でつむぐ杉山雅子のファンタジー」
開催期間:2025年8月9日(土)~11月24日(月・休)
開催時間:9:30~16:30
休園日:火(9月23日は開園)、9月24日(水)
会場:練馬区立牧野記念庭園記念館(東京都練馬区東大泉6-34-4)
アクセス:西武鉄道池袋線大泉学園駅から徒歩5分
入園料:無料
【問い合わせ先】
練馬区立牧野記念庭園☏03-6904-6403
公式HP https://www.makinoteien.jp/
取材・文=前田真紀 画像提供=練馬区立牧野記念庭園





