「アートはみんなのために」信念が結実した作品が集結
1980年代初頭にニューヨークの地下鉄駅構内で、使用されていない広告板を使ったサブウェイ・ドローイングと呼ばれるプロジェクトで脚光を浴びたキース・へリング。
彼は地下鉄駅構内での制作活動を皮切りに、絵画、彫刻、また舞台セットやポスターの制作など多彩な分野で活躍し、HIV・エイズ予防啓発運動にも取り組んだ。日本初公開となる貴重なドローイングを含む初期から晩年までの約150点を展示し、今も色褪せないヘリングのメッセージをさぐっていく。
31年の生涯でエネルギッシュに取り組んだ作品を6章にわたって紹介
へリングは公共空間でアートを展開する方法を模索し、中でも人種や階級、性別、職業に関係なく多くの人々が利用する地下鉄に注目した。第1章の「公共のアート」では、「ここに描けばあらゆる人が自分の作品を見てくれる」と、駅構内に貼られた黒い紙にチョークでドローイングを描いた作品などを展示。人間や動物から宇宙船に至るまで、シンプルな線で素早く描き出された自由奔放なイメージあふれる作品たちだ。
また第3章「ポップアートとカルチャー」では、幅6mに及ぶ『スウィート・サタデー・ナイト』のための舞台セットを展示。ニューヨークのポップアートとカルチャーの広がりとともに、制作の場を広げていった彼の活動の軌跡が見て取れる。
第6章 「現在から未来へ」では、へリングが1988年にエイズと診断された後、死を意識ながらも最後まで自らの思いを未来へとつないでいこうと励んだ作品が紹介される。最後の個展に出品された三角形の変形キャンバスによる大作《無題》(1988年)のほか、ヘリングの最もポピュラーなモチーフのひとつである「ラディアント・ベイビー」を含む《イコンズ》、22歳の頃のドローイングを17点からなる大画面の版画にした《ブループリント・ドローイング》といった、1990年に亡くなる直前に制作された作品を中心に紹介される。
アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキアとともにカルチャーシーンを牽引したへリングの、時代を超えたメッセージが伝わってくるはずだ。
講演会をはじめ、関連イベントも多数開催
2月24日(月・休)講演会「1980年代のキースへリング」
講師に美術評論家・村田真氏を迎え、講演会「1980年代のキースへリング」が2月24日(月・休)14時~15時30分に実施。会場は地階講堂。定員250名(申し込み不要、参加無料)。
2月16日(日)学芸員によるギャラリー・トーク
本展担当学芸員・乾健一氏による学芸員によるギャラリー・トークが2月16日(日)14~15時、キース・へリングの命日に合わせて開催。会場は2階企画展示室。定員なし(申し込み不要、要企画展チケット)。
開催概要
「キース・へリング展 アートをストリートへ」
開催期間:2025年2月1日(土)~4月6日(日)
開催時間:9:30~17:00(入館は~16:30)
休館日:月(ただし2月24日は開館、翌休)
会場:茨城県近代美術館(茨城県水戸市千波町東久保666-1)
アクセス:JR水戸駅から徒歩20分
入場料:一般1360円、70歳以上680円、高校生1130円、中・小学生550円、未就学児無料
※障害者手帳を持参の人、および付き添いの人1名は無料。
※春休み期間を除く土曜は高校生以下無料。
※2月1日(土)は満70歳以上無料。
【問い合わせ先】
茨城県近代美術館☏029-243-5111
公式HP https://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/viewer/info.html?id=334
取材・文=前田真紀 画像提供=茨城県近代美術館