館所蔵の絵暦から江戸カレンダーの魅力にふれる

平安前期の天台宗の僧、良源が角の生えた鬼となった姿である角大師を模した絵暦。この絵に潜む「正、三、五、十一、八、六」の1・3・5・6・8・11月が、天明6年の小の月となる。
平安前期の天台宗の僧、良源が角の生えた鬼となった姿である角大師を模した絵暦。この絵に潜む「正、三、五、十一、八、六」の1・3・5・6・8・11月が、天明6年の小の月となる。

絵暦(えごよみ)または大小と呼ばれ、単に数字で示すだけではなく、ユーモアを交えて制作されていた江戸のカレンダー。本展では江戸時代の暦法について解説するとともに、大と小の月数の隠し方をいくつかのパターンに分類して、絵暦を展示。どこに大小の月が隠されているかを読み解きながら、アイデアと技法をこらした作品を楽しめる構成になっている。

広報担当の金本裕子さんは、「江戸時代に使用していた太陰太陽暦では、毎年同じ月でも日数が変わりました。そのため、何月が大の月(30日)か小の月(29日)か知ることが重要でした。そこで、小さな摺物(非売品の私的な版画)の絵の中に大小の月をしのばせたユーモアに富んだデザインの絵暦が制作され、江戸時代に大流行しました。本展では絵暦の中に、どこに大小の月が隠されているか、読み解きつつお楽しみください」と、楽しみ方を教えてくれた。

まるで謎解きのようなユーモアあふれる大小探し

ときには数字以外で月数を示す場合もあり、睦月などの月の異称や、雛祭や端午の節句などその月を代表する行事、風物を隠し込んだ大小が作られている。現代ではその景物が何月を示すか難解なものも多く、それらを読み解いていく面白さを感じられるはずだ。

大小は明和年間(1764~72)初期には交換会が開かれるほど流行したという。ユーモアやウィットのある大小は制作を依頼した人物が考案したと思われるが、最終的にどのような絵で表現するかは葛飾北斎などの絵師に任せられていたと考えられる。

北斎やその一門が携わった大小を読み解きながら、その趣向を味わってみてはいかがだろう。

よくみると金太郎の横に置かれている鉞には“小”という文字と刃先に「正、五、六、八、十、十一」の文字が。1、5、6、8、10、11月が小の月は、寛政11年(1799)。この年に配ったものということがわかる。
よくみると金太郎の横に置かれている鉞には“小”という文字と刃先に「正、五、六、八、十、十一」の文字が。1、5、6、8、10、11月が小の月は、寛政11年(1799)。この年に配ったものということがわかる。

開催概要

「読み解こう! 北斎も描いた江戸のカレンダー」

開催期間:2024年12月18日(水)~2025年3月2日(日)
※前後期で一部展示替えを実施
前期:12月18日(水)~1月26日(日)
後期:1月28日(火)~3月2日(日)
開催時間:9:30~17:30(入館は~17:00)
休館日:月 ・12月29日(日)~2025年1月2日(木)・7日(火)・14日(火)・2月25日(火)
※1月3日(金)・13日(月・祝)・2月24日(月・休)は開館。
会場:すみだ北斎美術館 3階企画展示室(東京都墨田区亀沢2-7-2)
アクセス:JR総武線両国駅から徒歩9分、地下鉄大江戸線両国駅から徒歩5分
観覧料:一般1000円、高校生・大学生・65歳以上700円、中学生300円、障がい者300円、小学生以下無料

【問い合わせ先】
すみだ北斎美術館 ☏03-6658-8936
公式HP  https://hokusai-museum.jp/Edocalendar/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=すみだ北斎美術館