狩猟の安全祈願から始まったといわれる鉄砲まつり
秩父地方で一年間に行われるさまざまな祭りの中でのラストを飾るのが、小鹿野町上飯田地区の八幡神社例大祭、通称「鉄砲まつり」だ。その歴史は200年以上前の江戸時代末期までさかのぼる。由来は諸説あるが、「昔は狩猟をしながら生活をしていたので、猟師が狩猟の安全を願ってお祭りで銃を撃つようになったといわれています」と教えてくれたのは飯田八幡神社の先代宮司の奥さんである近藤寿美子さん。
まず1日目の宵宮は、お祭りを始めるにあたって14時から若衆による宮参りが行われ、その後、秩父地方の祭りに欠かせない屋台と笠鉾が1台ずつ曳き回される。町の郷土芸能である小鹿野歌舞伎も上演される。
2日目は祭典の後、14時30分~火縄銃の演武、15時30分~大名行列が行われ、16時からいよいよメイン行事である「お立ち神事」が始まる。これは銃火を奉納するもので、参道の両脇に並んだ鉄砲隊約40人が放つ十字砲火の中、2頭の神馬が社殿への石段を一気に駆け上がる。その光景は圧巻で、まさに勇壮そのものだ。
「祭りに携わって60年近く経ちます。当時は界隈の農家で飼われていた馬を奉納したりしていたけれど、家畜も減っていって現在では近くの牧場からお借りしています。時代とともにやり方は少しずつ変わってきていますが、この土地に代々伝わる祭りを続けることができています」と近藤さんは話す。
お立ち神事で最高潮を迎えるが、祭りはまだまだ続く。笠鉾・屋台の曳き回しや、神輿渡御、日没後の川べリで行われる「川瀬神事」が行われ、ラストの打ち上げ花火の奉納によって秩父地方の一年間の祭りは終了となる(花火は19時から約30分程度)。
町民全員が歌舞伎一座!?
鉄砲まつりの附け祭りとして行われる小鹿野歌舞伎は、この地で約220年もの間受け継がれている伝統芸能だ。「町中が歌舞伎一座」といわれるほど、役者や語り手の義太夫、衣装やメイク、大道具などを手掛ける裏方にいたるまですべて地元の人たちの手によって運営されている。上演場所は、常設の舞台はもちろん、祭りでは屋台に芸座や花道をつくる「屋台歌舞伎」が特徴的だ。
鉄砲まつりでは1日目の夕方と夜、2日目の昼間に神社付近に設営される屋台で上演が行われる。なかには地元の三田川小学校の子供たちが奉納する歌舞伎『白浪五人男 稲瀬川勢揃之場』も(1回目は7日19時30分~、2回目は8日12時15分~)。5人の泥棒の因果を描いた作品で、子供たちの熱のこもった芝居に注目だ。そのほかの上演スケジュールはhttps://oganokabuki.com/をチェック!
日中は県指定無形民俗文化財の小鹿野歌舞伎を楽しんで、夕方は手に汗を握る大迫力のお立ち神事を見学しよう。
開催概要
「鉄砲まつり」
開催日:2024年12月7日(土)・8日(日)
開催時間:10:00~19:30(7日は14:00~21:00頃)
会場:飯田八幡神社(埼玉県小鹿野町飯田2753)
アクセス:西武鉄道西武秩父線西武秩父駅からバス「栗尾」下車10分
【問い合わせ先】
小鹿野町まちづくり観光課☎0494・75・5060
公式HP:https://kanko-ogano.jp/event/dec-01/
取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供