100点を超える作品から氏の活動の全貌に迫る
ルイーズ・ブルジョワ(1911-2010)は、70年にもわたるキャリアの中で、インスタレーション、彫刻、ドローイング、絵画などさまざまなメディアを用いながら、男性と女性、受動と能動、具象と抽象、意識と無意識といった二項対立に潜む緊張関係を探求してきた。そして、対極にあるこれらの概念を比類なき造形力によって作品の中に共存させるのが大きな特徴だ。
ブルジョワの作品は、主に自身が幼少期に経験した複雑かつトラウマ的な出来事をインスピレーションの源にしている。例えば、六本木ヒルズにたたずむ作品『ママン』は彼女が20歳のときに亡くなった母親がモチーフといえる作品。個人的な記憶や感情を呼び起こすことで、誰にでも想起される普遍的なモチーフへと昇華させ、希望と恐怖、不安と安らぎ、罪悪感と償い、緊張と解放といった相反する感情や心理状態を表現してみせる。
広報担当者は、「ブルジョワは98歳で他界するまで制作を続け、晩年にキャリアの代表作ともいえる作品を多く発表しています。布を用いた作品など、本展出品作品の約半数が、1998年以降に制作された日本初公開の作品となります」とその見どころを語る。
1997年以来、27年ぶりに開催される国内最大規模となる本展には、彫刻、絵画、ドローイング、インスタレーションなど100点以上を一挙に公開され、見逃がせない内容となっている。
創造の源、家族との関係をもとに3つの章から構成
第1章「私を見捨てないで」では母との関係を、第2章「地獄から帰ってきたところ」では父との確執、第3章「青空の修復」では、壊れた人間関係の修復と心の解放が主なテーマとなった作品を展開していく。さらに各章をつなぐ2つのコラムでは、初期の絵画と彫刻、また父の死後に本格的に制作を再開した1960年代の作品を中心に、年代順に紹介する。
自身の家族との関係性、身体性を作品の中で巧みに表現し、普遍的なテーマとして見る者に問いかける。
開催概要
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」
開催期間:2024年9月25日(水)~2025年1月19日(日)
開催時間:10:00~22:00(火のみ~17:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:無休
※ただし9月27日(金)・28日(土)は23:00まで、10月23日(水)は17:00まで、12 月24日(火)・12月31日(火)は22:00まで。
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F)
アクセス:地下鉄日比谷線六本木駅から徒歩3分、地下鉄大江戸線六本木駅から徒歩6分
入場料:平日一般2000円、高校生・大学生・専門学校生1400円、65歳以上1700円、中学生以下無料。土・日・休日一般2200円、高校生・大学生・専門学校生1500円、65歳以上1900円
※事前予約可、日時指定券を専用オンラインサイトから購入可。空きがある場合は事前予約なしの入館可。
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏ 050-5541-8600
公式HP https://www.mori.art.museum
取材・文=前田真紀 画像提供=森美術館