絵本作家かがくい ひろしの魅力を多角的に紹介

累計発行部数900万部を超え、子供たちに広く愛される絵本「だるまさん」シリーズ。

特別支援学校のベテラン教員だったかがくいひろし(1955~2009年)は、50歳で作家デビューした。長年にわたる障害児教育の現場経験で培われた知見や実感から生みだされたものが“かがくいひろしの絵本”だという。

本展は、かがくい没後初の大回顧展であるとともに、関東地方初の開催となる。絵本原画や制作資料とともに、かがくい絵本の魅力に迫る内容になっている。

かがくいが絵本作家として活動したのは50歳から54歳で急逝するまでのわずか4年間だった。その間、驚異的なスピードで16作品(没後刊行含む)を世に送り出し、どれ一つ絶版になることなく、今も読み継がれている。かがくいがのこした16作品すべての原画を見ることができるのも、本展の見どころの1つだ。

原画を生で目にすれば、彼の絵本が今なお子供たちの心をなおつかんで離さない理由が見えてきそうだ。

『おもちのきもち』2004-2005年(C)Hiroshi Kagakui / KODANSHA
『おもちのきもち』2004-2005年(C)Hiroshi Kagakui / KODANSHA
『みみかきめいじん』2009年(C)Hiroshi Kagakui / KODANSHA
『みみかきめいじん』2009年(C)Hiroshi Kagakui / KODANSHA
『まくらのせんにん そこのあなたの巻』2009年(C)Hiroshi Kagakui Kosei / shuppansha
『まくらのせんにん そこのあなたの巻』2009年(C)Hiroshi Kagakui Kosei / shuppansha

絵本のルーツとなる教員時代の資料から81冊のアイデアノートまで展示

かがくいは特別支援学校の教員として過ごした28年の間、どうやったら子供たちが興味をもつか、笑ってくれるかを懸命に考え、工夫を凝らした教材をつくったという。言葉のない子でも笑い出すかがくいの絵本には、障害児教育の現場で積み上げられた実感や想いが詰まっている。

貴重な教員時代の資料や映像とともに、81冊に及ぶ、常日頃持ち歩いていたというアイデアノートの一部も展示。描き、作ることで前進し続けた表現者としてのかがくいひろしの頭の中を垣間見ることができる。

また、「だるまさんと一緒にあそぼう!映像アトラクション」と題して会場限定で「だるまさん」をはじめ、かがくい絵本のキャラクターが登場するアニメーションが公開される。こちらも見逃せない。

アイデアノート№28 2004-2005年(C)Hiroshi Kagakui / 撮影=黒澤義教
アイデアノート№28 2004-2005年(C)Hiroshi Kagakui / 撮影=黒澤義教
遠足バス(かがくいひろしが教員時代に生徒と一緒に作ったもの) 2007年 / 松本佳子、松本拓万蔵 / 撮影=黒澤義教
遠足バス(かがくいひろしが教員時代に生徒と一緒に作ったもの) 2007年 / 松本佳子、松本拓万蔵 / 撮影=黒澤義教

開催概要

「日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家 かがくいひろしの世界展」

(C)Hiroshi Kagakui
(C)Hiroshi Kagakui

開催期間:2024年9月14日(土)~11月4日(月・休)
開催時間:10:00~19:00(入館は~18:30)
休館日:月(祝の場合は開館、火休)
会場:八王子市夢美術館(東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F)
アクセス:JR中央線・横浜線八王子駅から徒歩15分、京王電鉄京王線京王八王子駅から徒歩18分。
入場料:一般900円、高校生以上・65歳以上450円、中学生以下無料
※来館日時指定予約の人を優先入館。詳細は公式HPにて。

【問い合わせ先】
八王子市夢美術館☏ 042-621-6777
公式HP https://www.yumebi.com/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=八王子市夢美術館