知られざる映画大国ジョージアのソ連邦時代の名画が集結
コーカサス山脈の南に位置し、ロシア、アゼルバイジャン、アルメニア、トルコと国境を接するジョージア。人口は約370万人。ジョージア人を中心に多様な民族が暮らしている。3000年の歴史があるといわれ、東西交易の要所であるために周辺国から度重なる侵略を受けてきたものの、今日まで独自の言語、文化を守り通してきた。ロシア帝国の支配から1918年に独立。1921年から70年間、ソ連邦に組み込まれていたが、1991年に独立を回復。しかし内戦、分離独立の紛争が激化し国内が混乱したために映画作品も傷つき、1000以上の作品が上映不能になってしまったという。
そんなジョージアのソ連邦時代の名作を一挙に上映する映画祭が開催される。
ジョージア映画祭主宰・はらだたけひでさんは、「近年、ワインや料理で注目されるコーカサスの国ジョージア。この国の映画は欧米とは異なる魅力に満ちています。ジョージア映画祭2024では、ソ連時代の黄金期の作品を特集し、政治体制の抑圧のなかで、人間と時代を描いた名作の数々をご紹介します。これらの作品は世界が対立、分断し、混迷する今日、一層の輝きを帯びて蘇るに違いありません。人間味にあふれ、独創的であり、映画への愛が込められた名作の数々をどうぞお楽しみください」と、語ってくれた。
百聞は一見に如かず。ジョージアから生み出された、名作の数々にぜひ触れてみてはいかがだろう。
8つのプログラムで特集上映
Aプログラム:ラナ・ゴゴベリゼ監督特集
『金の糸』(2019)、『インタビュアー』(1978)で日本でも知られるラナ・ゴゴベリゼ監督を特集。戦後のジョージア映画の発展を担ってきた一人で、今も旺盛に製作を続けている。現在95歳の彼女の挑戦の軌跡を回顧する。
Bプログラム:エルダル・シェンゲラヤ監督特集
寓意(ぐうい)豊かな作品を生み出し、国民から圧倒的な支持を受けてきたエルダル・シェンゲラヤ監督を特集。ジョージア映画人同盟の代表を長く務めた彼は、現在91歳。極上のユーモアとペーソス、人間への温かな眼差しと権力への批判を込めた傑作の数々を紹介していく。
Cプログラム:よみがえる歴史的名作
ジョージア人の魂の礎である叙事詩『豹皮の騎士』の唯一の映画化作品を筆頭に、日本では未だ知られざる名匠レフヴィアシヴィリとエサゼ、彼らに続く世代となるジョルジャゼら各監督の個性あふれる作品を上映する。
Dプログラム:ギオルギ・シェンゲラヤ監督と「ピロスマニ」
1978年における日本公開で、観客の心に画家ピロスマニとジョージアの存在を強く印象づけた『ピロスマニ』。ジョージアの過去と現在、そして未来を予見させられる作品は必見である。
Eプログラム:ジョージア映画祭アンコール
過去2回のジョージア映画祭からジョージア映画を語るうえで見逃せない名作5作品を再上映。戦後の国民的ミュージカル、新風を吹き込んだ作品、1960年代のコバヒゼ監督、ココチャシヴィリ監督の作品を上映する。
Fプログラム:オタール・イオセリアーニ監督特集
2023年12月に亡くなった世界的名匠イオセリアーニ監督を追悼上映。ソ連時代に彼がジョージアで製作した作品はすべて上映禁止にされた。しかし数々の作品から、その反骨精神、ユーモアとアイロニー、哲学的思索と詩的感性が伝わってくる。
Gプログラム:テンギズ・アブラゼ監督「祈り 三部作」
巨匠テンギズ・アブラゼ監督が20年の歳月をかけて完成させたジョージア映画の金字塔「祈り 三部作」。「人の美しい本性が滅びることはない」という信念のもと、人間の迷妄や欲望がもたらす社会の暴力を描き、人間性を虐げるものを告発していく。
Hプログラム:「母と娘-ヌツァとラナ」特集
ラナ・ゴゴベリゼ監督の母であり、ジョージアで最初の女性監督ヌツァ・ゴゴベリゼ。1930年代、スターリンによる粛正のために流刑されたヌツァとラナ、2代にわたる映画への取り組みと彼女たちの時代を捉えていく。
開催概要
「ジョージア映画祭2024」
開催期間:2024年8月31日(土)~9月27日(金)
会場:ユーロスペース(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F)
アクセス:JR・私鉄・地下鉄渋谷駅から徒歩10分
入場料:一般1700円、学生・60歳以上1300円、障害のある方1000円(付き添いの方1名まで有効)
※リピーター割引映画祭の半券提示で1400円(本人のみ有効)
※全席指定のチケット販売はオンライン(鑑賞日の3日前から上映1時間前までクレジットカードのみ購入可)または窓口販売(鑑賞日の3日前から現金のみ)
【問い合わせ先】
コミュニティシネマセンター☏050-3535-1573
「ジョージア映画祭2024」公式HP https://georgiafilmfes.jp/
『ユーロスペース』HP http://www.eurospace.co.jp/
取材・文=前田真紀 ※画像は主催者提供