【吉祥寺の個性を引き出す個人店】
本から始まる人とのつながり『百年』
吉祥寺にお店を開いたのは2006年8月。以来、「本を売る場」ではなく「本を通して人とやりとりをする場」を目指してきた。店内の古本は、お客さんからの買い取りが8割も占めるが、本を大切に扱い、誠実な値付けをし、必要としている人のところへ本を届けることを愚直に続けたからこその結果だろう。磁石のように、良書は良書を呼ぶのだ。本を読む行為は孤独だが、そこから始まる対話があることを、『百年』は教えてくれる。
実物を手にとる貴重な体験『よみた屋』
店主の澄田さんは「古書店を商いとして成り立たせる」ことに長年心を砕いてきた。古本といえども、売れ筋や旬のものがある。このごろはビジュアル重視の“見る本”が増えてきた、とのこと。曰く「絵や写真は、やはり実物の力が違います。デジタルでは再現できない」。昭和30年代の絵本を手に取ってみれば、その紙質やインクの鮮やかさに五感が刺激される。実物のありがたみを、ひしと感じる。

生活と心の糧となる本を探しに『青と夜ノ空』
新刊、古書を問わず、「生活を豊かにしてくれる本」を集めて2014年10月2日にオープン。衣・食・住をテーマとした、肩肘張らず手に取りやすい本が、静かで穏やかな空間に並ぶ。日本各地で発行されているリトルプレスにも力を入れている。店主の中村克子さんは元編集者。「本、ギャラリー、ワークショップを合わせた、コミュニケーションの場をつくりたい」とのこと。ほっと一息つける、日常生活の一幕である。
本が好きな気持ちをそのまま売り場へ『BOOKS ルーエ』
『BOOKSルーエ』の2階には、花本武さんという本の話を始めると止まらない書店員がいる(取材当時)。売り場で静かに輝いているのは、本を読んだときの興奮を的確に伝えようとするポップ。「人間の頭の中って整理されていなくて、でもごちゃごちゃなままでいいんじゃないかと思うんです。いつも迷っていますが」。その勢いと迷いが、売り場づくりの原動力だ。「いかに楽しんでやれるかが勝負です」。その楽しさがお客さんに確実に伝わっているのだ。

【地域に寄り添う大型書店】
百貨店開業当初から、地域に寄りそう『紀伊國屋書店 吉祥寺東急店』
東急百貨店内にあって、低めの棚で通路が広く、ゆったりと本を選ぶことができる。特に力を入れているのは児童書で、ロングセラーから最近の人気の絵本までが揃う。そのつながりで小学校受験の参考書も充実するなど、子育て世代のニーズに応えている。レジ横には、とくに問い合わせが多い雑誌やNHKのテキストが集められたコーナーがあり、客層を熟知した細かい気づかいが伝わってくる。
『紀伊國屋書店 吉祥寺東急店』店舗詳細
通りすがりに立ち寄って「今」を知る『ブックファースト アトレ吉祥寺店』
駅ビルの通路に沿う細長いつくりで、通勤通学や買いもの帰りに気軽に立ち寄る人でにぎわっている。通路寄りの平台には奥の棚に並ぶジャンルから厳選したラインナップが置かれていたり、おすすめポイントを書いたポップを立てたりと、本を探しやすくする工夫が光る。スタッフは巷で話題になっている本を、いち早く並べるために広くアンテナを張っていて、旬の売り場が日々更新されている。
『ブックファースト アトレ吉祥寺店』店舗詳細
思いがけない出合いがある、地域随一の品揃え『ジュンク堂書店 吉祥寺店』
実用書から学術書、入門書から専門書まで、圧巻の品揃えで知識欲を満たしてくれる。扱う冊数が多いため、目的の本を見つけやすくするためにスタッフは試行錯誤を繰り返していて、ジャンル、著者名、テーマなどを横断する本の並びが楽しい。何かを始めようとする欲求を後押ししてくれる、頼もしい存在だ。
『ジュンク堂書店 吉祥寺店』店舗詳細
/営業時間:10:00~21:00/定休日:無(コピス吉祥寺に準ずる)/アクセス:JR中央線・京王電鉄井の頭線吉祥寺駅から徒歩5分
取材・文=屋敷直子 撮影=木村心保、金井塚太郎、鈴木愛子