蚕糸業の研究と技術の発展をたどる『東京農工大学科学博物館』【東小金井】

さまざまな品種の繭の標本。
さまざまな品種の繭の標本。

工学部の前身・農商務省蚕病試験場に端を発し、博物館としても長い歴史をもつ。蚕の病気から製糸まで養蚕業を支えた研究の轍(わだち)が展示され、「アイデアが詰まっていて、現代の技術者の目線で見ても参考になるようですよ」と学芸員の上田裕尋さん。繰糸機や織機、ミシンなどは動態保存されているものも多く、ボランティアの技術者がいる火曜日なら実際に動かしているところも見学できる。

500台を超えるミシンがある。
500台を超えるミシンがある。
靴下網機は構造がよく見える。
靴下網機は構造がよく見える。
電子制御を使わない自動繰糸機は機械機構の究極!
電子制御を使わない自動繰糸機は機械機構の究極!
ジャカード付絹織機のパンチカードで模様を指示する仕組みは、コンピュータのメモリの原理につながる発想だ。
ジャカード付絹織機のパンチカードで模様を指示する仕組みは、コンピュータのメモリの原理につながる発想だ。

『東京農工大学科学博物館』詳細

実習や講義にも使われる貴重な資料の数々『日本獣医生命科学大学付属博物館』【武蔵境】

長次郎の標本はクリーニングのため2025年一度解体予定。見たい方はお早めに。
長次郎の標本はクリーニングのため2025年一度解体予定。見たい方はお早めに。

国の登録有形文化財である建物内の展示室には、日本の里山で暮らす野生動物の剥製や骨格標本がずらり。多くがガラス越しではなく直接見られる露出展示で、キリン・長次郎の骨格標本は現存する日本生まれのキリンの標本の中では最も古い。「動物も建築も両方楽しんでいただけたら」と学芸員の石井さん。学内の研究室と連携した奄美大島の動物を解説する特別展には、最新の情報やかなり珍しい標本も!

自然系展示室に並ぶ剥製。
自然系展示室に並ぶ剥製。
明治42年(1909)竣工の麻布区役所庁舎を移築した、赤い屋根の建物は街のシンボルでもある。
明治42年(1909)竣工の麻布区役所庁舎を移築した、赤い屋根の建物は街のシンボルでもある。

『日本獣医生命科学大学付属博物館』詳細

“つなぐ”技術の歩みと広がりに圧倒される『NTT技術史料館』【三鷹】

光ファイバの母体の製造技術解説。
光ファイバの母体の製造技術解説。

電報、電話、インターネット……日本の電気通信がどんな技術で支えられ、どう発展してきたのかが、実際の機器やレプリカも交えて語られる。仕組みを理解する面白さだけでなく、便利な日常の背景にある膨大な研究の数々に気付かされる展示だ。じっくり見ると半日は優にかかる広大な館内で、ダイヤル式黒電話やプッシュホン、ガラケーなど、懐かしの顔ぶれを前にして思い出話にも花が咲く。

1階ロビーでは、磁石式電話機での通話や手動交換機で交換手体験もできる。
1階ロビーでは、磁石式電話機での通話や手動交換機で交換手体験もできる。
各時代の電話機が一堂に会した様子は圧巻!
各時代の電話機が一堂に会した様子は圧巻!
戦時中に開発された最初の国産自動交換機。
戦時中に開発された最初の国産自動交換機。

『NTT技術史料館』詳細

歴史も感じる、日本の天文学研究の中心地『国立天文台 三鷹キャンパス』【武蔵境】

動態保存されている第一赤道儀室。
動態保存されている第一赤道儀室。

半世紀以上太陽の黒点観測に使われた第一赤道儀室をはじめ、貴重な機器がいくつも保存された広い敷地内には「粋なデザインを取り入れた建築も多いんです」と広報の波田野聡美さん。塔全体がひとつの望遠鏡として機能するアインシュタイン塔(太陽塔望遠鏡)は年2回特別公開も実施。惑星間の距離を140億分の1に縮めて再現した道や4D2Uドームシアターなど、宇宙の規模も体感できる。

立体映像で学べる4D2Uドームシアターは月3回開催(事前予約制)。
立体映像で学べる4D2Uドームシアターは月3回開催(事前予約制)。
敷地内の見学可能な施設をめぐる見学コース。
敷地内の見学可能な施設をめぐる見学コース。
レプソルド子午儀。
レプソルド子午儀。
太陽塔望遠鏡。
太陽塔望遠鏡。
日本最大口径の屈折望遠鏡がある大赤道儀室は、可動式の観測床の下にも入れる。
日本最大口径の屈折望遠鏡がある大赤道儀室は、可動式の観測床の下にも入れる。

『国立天文台 三鷹キャンパス』店舗詳細

取材・文=中村こより 撮影=岩堀和彦