『鮨なかむら』至福の握りと1650円のギャップに衝撃[築地]
「やるからには衝撃的な値段でやりたくて」という店主・中村章(あきら)さんの言葉通り、コロナ禍で宣伝のために始めた昼の握りは、食べ進めるほどに驚愕する。8貫のコースで1650円也。炙ったホタテは香ばく、脂ののった縞鰺はかんずりの辛・酸と相乗。〆鯖にまとわせた白板昆布は見目も麗しく、巻物の具はかんぴょうや煮しいたけ、穴子など手仕事が冴える。鮨職人歴30年。古典に現代的な感覚を取り入れる握りと心意気に感服。
『鮨なかむら』店舗詳細
『秀徳 2号店』場外の穴場、充実のコースににんまり[築地]
築地場外で5店舗を展開する鮨店で、もっとも広く席数が多いのがこちら。鮨種との相性を吟味した赤酢3種と米酢を合わせたまろやかな酢飯は共通ながら、魚の仕入れやメニューは各店舗に託される。2号店で供する8800円のコースは、握り10貫に前菜やお造り、一品料理も盛り込む充実さ。ウニは常時3種類ほど用意があり、お好みで追加するのもあり。旬の魚とカウンター鮨の楽しみを心ゆくまで。
『秀徳 2号店』店舗詳細
『肴や味泉』何倍にも幸せが増す銘酒と味わう[月島]
店主・荒木眞一さんは宮内省御用達の仲卸に勤めて魚を覚え、「旨い魚といい日本酒を」と志して店を開いた。常連客の注文の皮切りは「刺し盛りと煮穴子!」。旬の魚が艶やかな刺し身には、皮目を炙ったり藁焼きしたりとそれぞれに仕事が施してある。煮穴子は、大ぶりの天然物を骨切りし、極弱火で1時間かけて炊く。炭火で焼き上げた香ばしさととろける食感。そこに日本酒を合わせれば、天国行き必至。
『肴や味泉』店舗詳細
『魚河岸三代目 千秋』マグロを存分に頬張りたくなったら[築地]
名物は上質な天然インドマグロの丼。料理長・鎌田規広さんいわく、その特徴は「身の味が濃く、ヅケにしても醤油に負けずにむしろ味が乗ります」。組み合わせる魚も豊洲市場で目利きしてきた天然ものばかり。モットーは、「素材9割、残りの1割を全力で料理する」。忙しいランチ時も刺し身は引き置きせず、都度切り付ける。目を見張る身質や舌触りのなめらかさにモットーが体現されている。
『魚河岸三代目 千秋』店舗詳細
『食堂 ユの木』正統な和食の技と自由な発想が融合[月島]
のれんにこそ「食堂」とあるが、突き出し6品を味わうと「懐石料理店だ」と思わされる。料亭を中心に研鑽を積んだ店主・土屋為芳(ゆきよし)さんの経歴を聞けば納得だ。だからこそ「よりラフで自由度高く」を求めて店を開業。美しいいわし梅煮は、たれは濃厚でいて身はフレッシュ! コロナ禍に編み出した熟成かつおは、藁焼きの鰹を干してチーズのような芳醇なコクを生む。唯一無二の魚料理に感動!
『食堂 ユの木』店舗詳細
取材・文=沼 由美子 撮影=小野広幸
『散歩の達人』2023年9月号より