手入れの行き届いた境内にふわりと香る『長谷寺』[長谷]
「香食といって、香りは仏様の食べ物。我々がいただくのはそのお裾分け」と僧侶の美坂至光さん。観音堂では門徒から納められた貴重な線香を焚くこともあるそうで、思わず深呼吸したくなる芳しさが残る。また、写経前に身を清めるために使うのが、沈香をベースに独自に配合した粉末状の塗香(ずこう)。ひとつまみほど両手のひらで擦り合わせると、輪郭のはっきりとした甘い香りが膨らみ、うっとり。
持ち帰りたい香りグッズ
『長谷寺』店舗詳細
フサフサの苔庭に心身を包み込まれる『報国寺』[鎌倉]
報国寺といえば竹の庭が有名で、まっすぐ伸びる約2000本もの孟宗竹(もうそうちく)が視線を空へと誘うが、実は足元も必見。青々とした苔がふっくらと地面を覆い参詣者を迎える。2020年、専門家に相談して境内の苔を大規模に手入れしたところ、それまでも味のある景色だったが、より生き生きとした明るい苔庭に育ったという。上に下にと目を向け、じっくり境内を散策していると時間はあっという間。
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丘陵地ならではのメリハリある風景『円覚寺』[北鎌倉]
丘陵地が浸食されてできた鎌倉独特の谷戸にあり、広大な敷地を持つ円覚寺。高低差を生かした境内では、バラエティに富んだ苔を見ることができる。石塀の多くに苔と相性のいい鎌倉石が使われ、緑のグラデーションを前にするとまるで壮大な壁画を眺める気分。池や水路のそばで見つけることができる肉厚な苔や、全身に苔をまとってモコモコした石灯籠など、写真映えするスポットが多数。
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生命力がみなぎる苔とシダの掛け合い『妙本寺』[鎌倉]
境内が歴史的風土特別保存区域に含まれ、本堂の背後にそびえるのは自然あふれる衣張山(きぬはりやま)。木立ちに挟まれた参道は鬱蒼(うっそう)とし、マイナスイオンが心地よい。苔はかなり環境条件を選ぶそうで、本堂の前、裏手の山側、林、断層など場所によって異なる品種が群生しているのがおもしろい。シダ植物も元気いっぱい自生し、それに対して苔がテリトリーを主張してより色を濃くする様子がにぎやかだ。
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『妙本寺』店舗詳細
取材・文=信藤舞子 撮影=加藤熊三、鈴木愛子