手入れの行き届いた境内にふわりと香る『長谷寺』[長谷]

観音堂に併設の授与所には種類豊富なオリジナル線香が並ぶ(塗香は写経会場で販売)。
観音堂に併設の授与所には種類豊富なオリジナル線香が並ぶ(塗香は写経会場で販売)。

「香食といって、香りは仏様の食べ物。我々がいただくのはそのお裾分け」と僧侶の美坂至光さん。観音堂では門徒から納められた貴重な線香を焚くこともあるそうで、思わず深呼吸したくなる芳しさが残る。また、写経前に身を清めるために使うのが、沈香をベースに独自に配合した粉末状の塗香(ずこう)。ひとつまみほど両手のひらで擦り合わせると、輪郭のはっきりとした甘い香りが膨らみ、うっとり。

塗香のザラつきがなくなるまで擦り合せたら、合掌。最後に体に触れ、香りをまとうようにする。
塗香のザラつきがなくなるまで擦り合せたら、合掌。最後に体に触れ、香りをまとうようにする。
美坂さん。楽しい説法も得意。
美坂さん。楽しい説法も得意。
本尊造立1300年を祈念して作られた観音香もおすすめ!
本尊造立1300年を祈念して作られた観音香もおすすめ!

持ち帰りたい香りグッズ

右上から時計回りで塗香500円、長谷寺のかほり守り1000円、長谷寺のかほり1500円、観音香2000円、お線香(白檀)1000円。
右上から時計回りで塗香500円、長谷寺のかほり守り1000円、長谷寺のかほり1500円、観音香2000円、お線香(白檀)1000円。

『長谷寺』店舗詳細

フサフサの苔庭に心身を包み込まれる『報国寺』[鎌倉]

山門をくぐるとすぐ苔庭が広がる。フサフサの見た目に気持ちが和む。
山門をくぐるとすぐ苔庭が広がる。フサフサの見た目に気持ちが和む。

報国寺といえば竹の庭が有名で、まっすぐ伸びる約2000本もの孟宗竹(もうそうちく)が視線を空へと誘うが、実は足元も必見。青々とした苔がふっくらと地面を覆い参詣者を迎える。2020年、専門家に相談して境内の苔を大規模に手入れしたところ、それまでも味のある景色だったが、より生き生きとした明るい苔庭に育ったという。上に下にと目を向け、じっくり境内を散策していると時間はあっという間。

地蔵や石灯籠と苔の共演も見事。
地蔵や石灯籠と苔の共演も見事。
苔生した岩が竹の庭に点在し、いいアクセントになっている。
苔生した岩が竹の庭に点在し、いいアクセントになっている。

こんな苔を発見

ラッパやカクテルグラスに似てる。
ラッパやカクテルグラスに似てる。
フサフサしていて触りたくなる。
フサフサしていて触りたくなる。

『報国寺』店舗詳細

住所:神奈川県鎌倉市浄明寺2-7-4/営業時間:9:00~16:00/アクセス:JR横須賀線・江ノ島電鉄鎌倉駅から京浜急行バス「鎌倉霊園正面前太刀洗・金沢八景駅」または「ハイランド」行き12分の「浄明寺」下車3分

丘陵地ならではのメリハリある風景『円覚寺』[北鎌倉]

石塀に向かってベンチに腰掛け、苔と語り合うひととき。
石塀に向かってベンチに腰掛け、苔と語り合うひととき。

丘陵地が浸食されてできた鎌倉独特の谷戸にあり、広大な敷地を持つ円覚寺。高低差を生かした境内では、バラエティに富んだ苔を見ることができる。石塀の多くに苔と相性のいい鎌倉石が使われ、緑のグラデーションを前にするとまるで壮大な壁画を眺める気分。池や水路のそばで見つけることができる肉厚な苔や、全身に苔をまとってモコモコした石灯籠など、写真映えするスポットが多数。

円覚寺の境内にある黄梅院。花壇では季節の草花と競うように苔が生える。
円覚寺の境内にある黄梅院。花壇では季節の草花と競うように苔が生える。
神仏習合の名残でもある鳥居があり、石灯籠が苔スポット。
神仏習合の名残でもある鳥居があり、石灯籠が苔スポット。

こんな苔を発見

すくすく伸びる胞子体がかわいい。
すくすく伸びる胞子体がかわいい。
花の形をした子が隠れていた!
花の形をした子が隠れていた!

『円覚寺』店舗詳細

生命力がみなぎる苔とシダの掛け合い『妙本寺』[鎌倉]

祖師堂右手の山裾に潜む苔階段。
祖師堂右手の山裾に潜む苔階段。

境内が歴史的風土特別保存区域に含まれ、本堂の背後にそびえるのは自然あふれる衣張山(きぬはりやま)。木立ちに挟まれた参道は鬱蒼(うっそう)とし、マイナスイオンが心地よい。苔はかなり環境条件を選ぶそうで、本堂の前、裏手の山側、林、断層など場所によって異なる品種が群生しているのがおもしろい。シダ植物も元気いっぱい自生し、それに対して苔がテリトリーを主張してより色を濃くする様子がにぎやかだ。

本堂の前に設置された天水桶も見逃せない。
本堂の前に設置された天水桶も見逃せない。
水路沿いは水気を含んでひときわつややか。
水路沿いは水気を含んでひときわつややか。
境内は比較的こぢんまりしているが、参道に多くの見どころがあり、二天門までなかなかたどり着けない。
境内は比較的こぢんまりしているが、参道に多くの見どころがあり、二天門までなかなかたどり着けない。

こんな苔を発見

まるでは虫類のウロコのようだ。
まるでは虫類のウロコのようだ。
寄り添うみたいに群生している。
寄り添うみたいに群生している。

『妙本寺』店舗詳細

取材・文=信藤舞子 撮影=加藤熊三、鈴木愛子