風味と食感に惚れる、冷やしたぬき『山王 ひらそば』
店に入ると、トントンと小気味よいそばを切る音が。店主・平林功さんは和食、そばを修業し開業。隣の実家の酒屋が扱う地酒も揃える。中でも「信州とご縁がつながって」と、安曇野のそば粉、わさびをはじめ、肴や薬味に用いる花わさび漬けなどの食材も入手。さらに、酒蔵の仕込み水でそば打ち。コシのある二八そばは、夏は冷やしたぬきで。米油で揚げた天かすの香味と食感が、かつお節香るそばつゆに加味され、恍惚となる。
『山王 ひらそば』店舗詳細
夏品種の新そば、味わえます『布恒更科』
卵を加えたぬた、アナゴの煮こごり、しゃきしゃきの岩もずくなど、旬味の肴で酒をちびりちびり。その後、供されたのは新そばだ。「うちは6月から」と、3代目店主の伊島巧(たくみ)さんは、白い芯だけを用いる。手打ちは1963年の創業当初から。「単に機械が買えなかっただけ」と笑うが、赤城深山の山間で育った夏品種を熟す前に刈ったそばは、ほんのり緑色。たまり醤油と合わせて寝かせた濃い口のつゆにつければ、香りが鼻を通り抜ける。
『布恒更科』店舗詳細
漆黒の丼から立ちのぼる、磯の香り『柏庵』
大森といえば海苔。「真っ黒になったらおもしろいかも」と、店主の五味敦さんは、大田市場で有明海産磯海苔を仕入れ、そばの上に敷き詰めた。かつおと昆布の出汁と合わさり、湯気からもう、ふくよかな香り。途中でわさびを落とせば、清冽な風が吹き抜ける。昼はそば中心だが、夜は四国と石垣島から直送された天然魚などの一品料理と、20時以降はカウンターでしっぽり燗酒と楽しんで。趣向を変えつつ、深夜まで営むうれしい店だ。
『柏庵』店舗詳細
畑にもこだわった蕎麦はミシュラン掲載の名店『蕎麦や もりいろ』
『ミシュランガイド東京2020』でビブグルマンを獲得。ソバは産地や品種だけでなく、生産者にもこだわる。産地や粉の碾き方が異なる2種のそばが楽しめる二種もり1320円。夜は日本酒やベルギービールと楽しめる。
構成=フラップネクスト 取材・文=佐藤さゆり(teamまめ)、塙 広明(アド・グリーン) 撮影=高野尚人、塙 広明(アド・グリーン)