大正15年(1926)創業の『タカノフルーツパーラー』は、とっても近代的でおしゃれな空間だった
新宿東口を出るとすぐ右手に、新宿高野の大きなビルが見える。地下道からも直結しているので、入り口を見かけたことのある人も多いはずだ。
地下1階のフルーツギフトフロアでは、旬のフルーツやスイーツを購入できる。
エレベーターで5階に上がると、老舗のフルーツパーラーらしい食品サンプルが出迎えてくれる。これがかなり精巧で、眺めるだけでも期待感が高まる。
新宿の街を見下ろす明るい店内は、都会的で洗練された雰囲気だ。席間も広く、感染症対策もしっかりしているのがうれしい。『タカノフルーツバー』の閉店が記憶に新しいが、現在は5階フロアをすべてフルーツパーラーの客席にしており、一層広く快適な空間となっている。
タカノと言えばこれ。静岡県産マスクメロンパフェ
『タカノフルーツパーラー』を代表するメニューといえば、生のフルーツをふんだんに使ったパフェ。こちらの静岡県産マスクメロンパフェ3080円は、新宿本店だけで食べられる特別なメニューだ。運ばれてきた途端、メロンのすばらしい香りが広がる。
上部には美しく飾り切りが施されたマスクメロンがたっぷりと5切れも! 食べるのがもったいなくなるほどのゴージャスなビジュアルだ。
メロンを一切れ口に入れると、とろけるような甘さの果汁がじゅわっと染み出す。フルーツクチュリエが食べ頃を見極めたマスクメロンは、味も食感も最高だ。
そして中には、生のメロンから作ったシャーベットやグラニテが。同じ素材を使っていても、食感や味わいがそれぞれ違って飽きさせない。ソフトクリームやホイップクリームは甘さ控えめで、ボリュームがあるのに最後までさっぱりと美味しく食べられる一品だ。
フルーツの甘みと酸味にほんのりバターの塩気が効いた、伝統のフルーツサンドウィッチ
次に頂いたのは、フルーツサンドウィッチ1210円と紅茶605円。フルーツサンドウィッチは創業初期の頃からある定番メニューとして多くのお客さんに愛されている。付け合わせにはヨーグルトフルーツが添えられていて、食事としても満足できるボリューム感だ。
食べてみると、マンゴーとバナナの濃厚な甘みと、いちごとキウイフルーツの酸味を、あっさりとした甘さ控えめのホイップクリームがふんわりと包んだ、なんとも幸せなお味。薄く塗られたバターのコクと塩気がまた絶妙なアクセントになっていて、何切れでも食べたくなってしまう。
最近は丸ごとのフルーツがゴロっと入ったフルーツサンドが流行りだが、一切れで何種類ものフルーツの組み合わせを楽しめる、昔ながらのフルーツサンドウィッチの良さを改めて実感できる。
フルーツの美味しさをそのまま閉じ込めた、フルーツミックスジュース
タカノフルーツパーラーでは、フルーツを使ったジュースもぜひ一度味わってほしい。写真はフルーツミックスジュース990円だ。パイナップルや、オレンジ、りんご、バナナ、黄桃などをピューレ状にミックスしたジュースは、驚くほど濃厚で、フルーツの美味しさがギュッと詰まった華やかな味わいだ。
氷も同じミックスジュースを凍らせて作っているので、時間がたっても薄まらないのもうれしい配慮だ。フルーツの甘みと酸味が活きた爽やかな味わいのジュースの底には、グレナデンシロップが。かき混ぜながら飲み進めると、鮮やかな色と味のグラデーションが楽しめる。
いつまでも色褪せない『タカノフルーツパーラー』の魅力
新宿高野の前身である「高野商店」が創業したのは明治18年(1885)。その後、店頭でフルーツを食べたいというお客様の声にこたえて始めた縁台サービスが、フルーツパーラーの前身だという。
フルーツサンドウィッチやパフェ、ジュースなど、昭和初期からある定番メニューも多いが、その味は当時と全く同じというわけではない。フルーツの甘さも、お客さんの味覚も、昔と今とでは異なる。伝統を守りつつも、今食べて美味しい一皿を目指して、クリームの配合や甘さなど、少しずつ改良を重ねてきたという。
『タカノフルーツパーラー』のお客さんは、老若男女実に幅広い。久しぶりに東京へ来たからと立ち寄ってくれる年配の方や、「以前お母さんやおばあちゃんに連れてきてもらった」という若いお母さんなど、かつての思い出を大切にしているお客さんも多いという。
懐かしくて、思い出よりも一層美味しい一皿は、そんなお客さんたちの心を掴んで離さない。
『タカノフルーツパーラー』店舗詳細
取材・文=岡村朱万里 撮影=井原淳一