田代島

ネコじゃらしを手にネコ好きの楽園へ、いざ!

仁斗田港そばの分岐に建つ道案内。 ネコの数情報で行先を示している。
仁斗田港そばの分岐に建つ道案内。 ネコの数情報で行先を示している。

今や全国各地にある「ネコの島」の元祖的存在。経済効果はまさに「ネコノミクス」で、過疎の離島なのに週末になると連絡船は満席になる。ネコ目的なら2つの集落を徒歩で往復すればじゅうぶん。島を一周するなら自転車を使いたい。小島なので日帰りできるが、民宿や自転車のレンタルがある「石巻市マンガアイランド」に1泊するのもいい。

石巻市マンガアイランド

食材を持ち込んで楽しむ ネコ形ロッジの一夜

ネコが自由に寝転ぶ広場。後ろは里中氏デザインのロッジ「しま」。
ネコが自由に寝転ぶ広場。後ろは里中氏デザインのロッジ「しま」。

仁斗田港から坂道を10分ほど上ると現れるアウトドア施設。マンガ家のちばてつや氏や里中満智子氏がデザインしたネコ形ロッジ、広々としたテントサイトがある。泊まらなくても芝張りの広場で自由にくつろいだり、センターハウス(管理棟)に入ってネコの絵を見たり本が読める。

耳を立てた屋根のロッジ小(定員6名)「ちび」「どら」「みけ」。
耳を立てた屋根のロッジ小(定員6名)「ちび」「どら」「みけ」。
ちば氏デザインのロッジ「しろ」。2階建てで外観が他よりリアル。
ちば氏デザインのロッジ「しろ」。2階建てで外観が他よりリアル。
センターハウスの階段や2階創作室で、マンガ家のネコの絵を鑑賞。
センターハウスの階段や2階創作室で、マンガ家のネコの絵を鑑賞。
住所:宮城県石巻市田代浜敷島24/営業時間:4~10月開設/定休日:火

仁斗田集落

島内でもっともネコ密度の高いエリア

「ネコで来たのかい?魚の水揚げのときが絵になるよ」と漁師さん。
「ネコで来たのかい?魚の水揚げのときが絵になるよ」と漁師さん。

石巻からの船が発着する島最大の集落。といってもほかは大泊だけだが。港から山に向けて広がるこの集落に、島のネコの多くがのんびりと暮らす。路地を歩けば、とくに探さなくても視界に入ってくる。民家の軒先や道端で、無造作に日向ぼっこしたり居眠りするネコにほっこり。ちなみに、島のネコは飼いネコと野良の中間、地域ネコのような存在だ。

空き家は多いが想像以上に大きな町。昭和で止まった家並みは新鮮。
空き家は多いが想像以上に大きな町。昭和で止まった家並みは新鮮。
港の待合所で島の第1ネコを目撃、高ぶってしばし足止めされる下船客。
港の待合所で島の第1ネコを目撃、高ぶってしばし足止めされる下船客。

田代島にゃんこ共和国島のえき

ネコとネコ好きが集う島のオアシス

デッキにたむろするネコたちをあやす、共和国理事の渡邉仁悦さん。
デッキにたむろするネコたちをあやす、共和国理事の渡邉仁悦さん。

2つの集落のほぼ中間、ちょうどひと休みしたくなる絶妙な場所にあり、気軽に立ち寄って休憩できる。ネコが描かれた食器でちょっとした飲食ができるほか、持ち込みで食べても可。島民の方たちとの交流の場としても活用したい。猫をテーマにしたオリジナルグッズや島でとれた海産物も品数豊富なので、おみやげはここで。

廃校跡を利用。金次郎像の前には超レアな旧海軍機のプロペラが!
廃校跡を利用。金次郎像の前には超レアな旧海軍機のプロペラが!
田代島産のカキがたっぷり味わえる、かきのうしお汁500円。
田代島産のカキがたっぷり味わえる、かきのうしお汁500円。
揚げがネコ型のきつね300円~、 島で獲れたうにおむすび300円。
揚げがネコ型のきつね300円~、 島で獲れたうにおむすび300円。
オリジナルのポーチ3780円、 田代島の天然ひじき600円。
オリジナルのポーチ3780円、 田代島の天然ひじき600円。
住所:宮城県田代浜字内山69-2/営業時間:10:00~15:00/定休日:無

猫神社

養蚕農家だけでなく漁師にも愛されるネコ

狛犬のように対になって寝転ぶネコ。この2匹は神社が定位置とか。
狛犬のように対になって寝転ぶネコ。この2匹は神社が定位置とか。

島の周囲は全国屈指の恵まれた漁場で漁業が盛ん。ネコは大漁を招く、海難事故を防ぐとされ、またネコの行動で漁の良し悪しを判断していたともいわれ、島の中央に「猫神様」が祀(まつ)られている。国交省選定の「島の宝100景」に選定。ちなみに3月に行う例祭の供物はマグロ。
●参拝自由。田代浜字仁斗田  (問)0225-93-6448(石巻観光協会)

田代島オリーブ・カフェ

飲食店の少ない島内で貴重なカフェ

日向ぼっこするネコと海を眺める テラス席でコーヒー300円を。
日向ぼっこするネコと海を眺める テラス席でコーヒー300円を。

漁師の古民家を改装した海を望むカフェレストラン。仙台市内で飲食店を営むオーナーが「地域生活に密着して島の魅力を伝える店を」との思いで一昨年夏にオープン。石巻や県内産の食材を使ったパスタランチなどが食べられる。「猫とオリーブの島」を目標にオリーブを植樹、将来的には島の特産に育てあげ、オリーブを使った料理を出す予定。

アヒージョ650円(ランチセット1000円)。なんか地中海な気分。
アヒージョ650円(ランチセット1000円)。なんか地中海な気分。
靴を脱いであがる昭和的な店内でランチを。パスタランチ800円。
靴を脱いであがる昭和的な店内でランチを。パスタランチ800円。
住所:宮城県石巻市田代浜仁斗田89/営業時間:10:30~15:00(ディナーは予約制)/定休日:月~金ほか

ネコ!ネコ!ネコ!

出没!ニャンコ天国 2019秋 田代島コレクション

ほとんどのネコは2つの集落とそれを結ぶ道で会える。島民にエサをもらっているからか、みんなおっとりして人懐っこい。道の真ん中で寝ているネコも多く警戒感は皆無だ。島を後にする頃には、ヤバイTシャツ屋さんの「ネコ飼いたい」が脳内でエンドレス再生必至。ただしネコに夢中になって無断で住宅敷地内に入ったり、エサをあげるのはダメ。常識的なマナーを忘れないように。

植木鉢に収まり丸くなって眠るのが定番スタイル。
植木鉢に収まり丸くなって眠るのが定番スタイル。
島で五指に入る毛並み。大泊を闊歩していた。
島で五指に入る毛並み。大泊を闊歩していた。
目を見開き塀の上を一心に歩く。
目を見開き塀の上を一心に歩く。
睡眠中、人の気配で義務的に首をもたげたがすぐ熟睡モードに戻った。
睡眠中、人の気配で義務的に首をもたげたがすぐ熟睡モードに戻った。
アゴを上にして無防備に眠る。
アゴを上にして無防備に眠る。
マイナーな前足収納派。
マイナーな前足収納派。

網地島ライン

石巻から田代島へ 小1のプチ船旅

仁斗田港へ入ってくる、今春投入された新造船「マーメイドⅡ」。
仁斗田港へ入ってくる、今春投入された新造船「マーメイドⅡ」。

発着場は石巻、田代島にそれぞれ2つ。徒歩ならJR石巻駅から15分ほどの石巻中央発着所、クルマなら無料駐車場がある石巻門脇(かどのわき)発着所が便利。石巻から島の大泊港まで約50~60分、仁斗田港まで60~70分ほど。天候により大泊港をパスする場合があるので仁斗田港発着で予定を立てよう。
●往復2460円。1日3往復(予約不可)。宮城県石巻市中央1-14-5  (問)0225-93-6125

市街エリア

新スポットをめぐって復旧復興の歩みを確認

石巻初の百貨店だった「旧観慶丸商店」。今は文化発信拠点に活用。
石巻初の百貨店だった「旧観慶丸商店」。今は文化発信拠点に活用。

震災で甚大な被害を受けて、風景が大きく変わってしまった石巻市街。日本有数の漁港をはじめ、観光客を受け入れる施設やショップが次々と完成し、少しずつだが着実に復興が進んでいるのを実感したい。駅前のメーンストリートでは、石巻ゆかりの漫画家・石ノ森章太郎の作品「サイボーグ009」の像が、昔と変わらない姿で迎えてくれる。

日和山公園&鹿島御児神社

シャム夫に癒やされながら復興を願って拍手を打つ

手水舎の水を飲みたそうにしていた神社の看板ネコ「シャム夫」。
手水舎の水を飲みたそうにしていた神社の看板ネコ「シャム夫」。

中世には城があったと伝わる市内中心部の丘陵。有名な日和山は標高61.3m。山頂付近に鹿島御児神社が鎮座し、周辺は公園化されている。大鳥居越しに眺める太平洋はとても穏やかで、田代島や牡鹿半島が一望のもと。かつて松尾芭蕉も訪れた絶景ポイントは、震災のとき多くの命を津波から守った場所でもある。展望所で被災前の写真パネルと今の景色を見比べると言葉を失う
●園内・境内自由。宮城県石巻市日和が丘二丁目地内  (問)0225-95-1111(市観光課)

絵馬のネコは「シャム夫」。彼の後姿が刺繍された御朱印帳もある。
絵馬のネコは「シャム夫」。彼の後姿が刺繍された御朱印帳もある。
震災当時を語る散歩中の住民と、中州の「石ノ森萬画館」を眺める。
震災当時を語る散歩中の住民と、中州の「石ノ森萬画館」を眺める。

いしのまき元気いちば

「石巻のうまいもの」が勢ぞろい

いちばんの売れ筋、元気丼1250円。新鮮な魚介満載でリーズナブル。
いちばんの売れ筋、元気丼1250円。新鮮な魚介満載でリーズナブル。

「石巻の新たな魅力を届けたい」と2年前にオープン。1階物販コーナーには、地元で水揚げされた鮮魚や水産加工品をはじめ、農産物、土産などが幅広く揃う。鮮度がウリの寿司や刺し身など、石巻ならではの旬の魚介がとくにオススメ。帰路の腹ごしらえは2階フードコートの『元気食堂』で。こだわりの石巻グルメがとことん味わえる。

かきあめ161円、サイダー270円。季節モノのサバ缶は12月から販売。
かきあめ161円、サイダー270円。季節モノのサバ缶は12月から販売。
金華サバ焼き定食1200円。何をおいてもまず食べたいブランドサバ。
金華サバ焼き定食1200円。何をおいてもまず食べたいブランドサバ。
網地島ライン「石巻中央発着所」そば、駅へのルート上にあり便利。
網地島ライン「石巻中央発着所」そば、駅へのルート上にあり便利。
住所:宮城県石巻市中央2-11-11/営業時間:物販9:00~19:00 フードコート11:00~19:30LO/定休日:無

いしのまき大漁まつり

巨大な魚市場で三陸沖の海の幸を

「鮮魚セリ」も開催される。買受人気分が味わえるとあって大好評。
「鮮魚セリ」も開催される。買受人気分が味わえるとあって大好評。

世界三大漁場の一つ、三陸沖に近い石巻漁港は、水揚量・水揚金額が毎年日本全国で十指に入る大漁港。水揚げ岸壁と魚市場の上屋根の長さがともに日本一の設備を持つ。年1回のイベントでは、新鮮な魚介類や水産加工品が格安で買える。
●魚市場で10月13日9~14時。宮城県石巻市魚町2-14  (問)0225-95-1111(市水産課内・石巻大漁まつり実行委員会)

まねきショップ

地元住民と交流し被災地の今を知る

手作りシフォンケーキ160円、コーヒー250円をイートインで。
手作りシフォンケーキ160円、コーヒー250円をイートインで。

喫茶・軽食と買い物ができる門脇地区のコミュニティー拠点。昆虫を厚紙で作る「ダンボルギーニ」やネコグッズといったレアな名産品やみやげ物が充実。買い物も一苦労という周辺の復興住宅に住む高齢者のために、食料品や雑貨などの日用品の品揃えもスーパーのように豊富。スタッフのお話、震災にまつわる書籍コーナー、復旧・復興の歩みが分かる写真を通して石巻の今を知ろう。

津波到達点の印がある本間家土蔵。被災後に修復、資料館になった。
津波到達点の印がある本間家土蔵。被災後に修復、資料館になった。
震災遺構として保存予定の旧門脇小学校に建っていた二宮金次郎像。
震災遺構として保存予定の旧門脇小学校に建っていた二宮金次郎像。
住所:宮城県石巻市門脇町2-6-38/営業時間:9:00~18:00/定休日:月
震災1ケ月後に建てられた看板のレプリカ。「石巻南浜津波復興祈念公園」(予定地)内にあり、そばに献花台も。
震災1ケ月後に建てられた看板のレプリカ。「石巻南浜津波復興祈念公園」(予定地)内にあり、そばに献花台も。

河北エリア

風力発電のプロペラが並び、牧草地が広がる上品山の山頂付近。
風力発電のプロペラが並び、牧草地が広がる上品山の山頂付近。

「奥の細道」の芭蕉と同じように旧北上川に沿って内陸に入り、北上川の流れを渡ると旧河北町(かほくちょう)。町中心の飯野川地区にはぜひ味わいたいユニークなグルメが3つある。やさしい山容の上品山が見守る、のんびりした町で舌鼓を。ちなみに「飯野川」は日本武尊東征の故事にちなんだ地名。その由緒に芭蕉も感嘆したのではなかろうか。

サバだしラーメン

サバ好きは要チェック!ご当地麺の復興グルメ

『割烹 高大』の特徴はサバの竜田揚げと縮れ細麺。700円。
『割烹 高大』の特徴はサバの竜田揚げと縮れ細麺。700円。

飯野川地区の独特のサバだし文化に着目した石巻専修大学のゼミが地元と連携して商品化。サバの臭みやクセが出ないよう乾燥させた頭と中骨からダシをとったスープは、旨味と深みのあるコクが特徴。飯野川地区の6つの食堂か、カップ麺で味わえる。各店それぞれ工夫を凝らしたラーメンは個性的。「石巻おでんバーガー」も同大学とのコラボだ。

道の駅「上品の郷」

話題を呼ぶ2つのご当地グルメを賞味

石巻産の練り物と地場野菜をはさんだ「おでんバーガー」380円。
石巻産の練り物と地場野菜をはさんだ「おでんバーガー」380円。

地場の農産物や石巻圏の物産品を揃える直売所、レストラン、立ち寄り温泉施設などがある。直売所入り口の『小ばやし』では「サバだしラーメン」、その隣の『まんじゅう屋さん』では、揚げかまぼこ、焼ちくわなどをはさんだユニークな「石巻おでんバーガー」が味わえる。

サバだしラーメン700円。 スープは塩と醤油をブレンド。
サバだしラーメン700円。 スープは塩と醤油をブレンド。
住所:宮城県石巻市小船越二子北下1-1/営業時間:直売所9:00~19:00/定休日:無

割烹 高大

2大ご当地麺を味わいつつ 愛らしいネコの絵も鑑賞

「石巻焼きそば(玉子のせ)」700円。独自ソースとゴマ油が味の決め手。
「石巻焼きそば(玉子のせ)」700円。独自ソースとゴマ油が味の決め手。

創業80年の老舗で、石巻の2大ご当地麺「サバだしラーメン」「石巻焼きそば」の両方が楽しめる。「石巻焼きそば」いちばんの特徴は、麺を二度蒸しすることで茶色になること。魚のダシ汁をかけて蒸しあげるようにして焼きそばを作る。モチッとした食感と香ばしさがたまらない。

ネコの水彩画は店主の奥さん作。習い始めて2年足らずと思えない。
ネコの水彩画は店主の奥さん作。習い始めて2年足らずと思えない。

取材・文・撮影=飯田則夫
『散歩の達人』2019年10月号より