『赤線本』

赤線を舞台にした26編のアンソロジー

渡辺 豪 監修・解説/イースト・プレス/ 2300円+税

「赤線」に強い憧憬(しょうけい)がある。1946年から、売春防止法が施行される1958年までの12年間だけ存在した、警察公認の売春街だ。今では考えられないであろう街区が生まれた背景には、戦後、進駐軍の性犯罪抑止のために作られたRAA(特殊慰安施設協会)撤廃後、街に横行した街娼を容認せざるを得なかったためということもあるらしい。私が憧憬を抱くのは、単に公然と買春したかったからではなく、往時がどんな風景だったかを今では知る由がないからだ。
本書は、そんな欲求を解消してくれる一冊である。個人的にすでに読了している作品も収録されていたものの、収録順にも大きな意味があり、改めて赤線の歴史的解釈、考察をするのに貴重な資料ともいえる。
タイトルからして、上野千鶴子氏あたりが血相を変えて糾弾してきそうな内容と思われそうだが、決して売春礼賛などといったものではなく、娼婦自らが書いた作品や、客観的視点のエッセイ・ルポなども収録され、多面的に解釈できる作りになっている。
赤線とは一体何だったのか。本書を読んだとて、到底その答えは導き出せない。しかし、現代にも連綿と続く風俗産業の歴史、実態をある程度知ることはできるだろう。惜しむらくは、一定の読者層を確実に排除し得る、直球すぎるタイトルだ。とはいうものの、代わりにタイトルをつけろと言われても、確かにこれ以外思い浮かばない。そのくらい、「赤線」という題材は難しく、奥深いと言えるのだ。(久保)

『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』

月山もも 著/KADOKAWA/1400円+税

誰にも気兼ねなく、見るものや食べるものなどに向き合う「ひとり時間」の過ごし方を提案する一冊。「酒」「温泉」「山」「旅」の4章それぞれで初心者ならではの不安にも対応し、例えば「ひとり酒」では難易度別の攻略法や楽しみ方も案内している。グループで行動しにくい今だからこそ、お出かけのヒントになるかも。(土屋)

『空港の解体新書』

大野達也 編/イカロス出版/1400円+税

空港の種類やコード、空港内で働くクルマ、機内食を作る工場など、空港や飛行機にまつわる情報をまとめた一冊。滑走路の標識の意味や機体のメンテナンスなど、過去何十回と空港を利用するも得られなかったあれこれが、イラストでわかりやすく解説されていて楽しい。それにしても日本に97カ所も空港があるとは。(町田)

『続にっぽん建築散歩』

小林泰彦 著/山と溪谷社/1120円+税

全国に残る著者お気に入りの名建築を、美しいイラストとともに散歩する。特筆すべきは、充実した街の歴史解説。例えば山形県鶴岡の、知識はなくとも大工たちが懸命に造りあげた「擬洋風」といわれる建築群のエピソードが興味深い。「古い物は尊い」と漠然と思うだけでなく、史実を知ることで街歩きをより楽しく。(高橋)

『散歩の達人』2021年1月号より

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。