『いつも、日本酒のことばかり。』

読めば日本酒の見方、味わい方が変わるかも!

山内聖子 著/イースト・プレス/1500 円+税

「ウチには砂糖がないんですよ」。取材中に、山内さんがふとこぼしたひと言は、私にとって結構意外だった。別に山内さん自身、甘いものが苦手なわけではない。むしろスイーツと日本酒も合うということを教えてくれた人だから。じつは、本書の第1章の「さしすせその、さ」でも書かれているが、山内さんにとって「さしすせそ」の「さ」は「酒」、日本酒のことなのだ。甘みがほしいときは日本酒で補うということらしい。しかも料理酒ではなく、普通に飲む、結構いい日本酒をどぼどぼ使うという。山内さん曰く「砂糖を入れるよりも素材の味がくっきりし、やさしい味わいに仕上がる」そうだ。
本書は、そんな山内さんが、日本酒の魅力にあらゆる角度から迫ったエッセイ集。山内さんには『散歩の達人』本誌でも2018年12月号まで2年以上にわたり「NEO日本酒論」を連載してもらったし、本誌特集の日本酒企画ではしばしばお願いしているのだが、にじみ出る日本酒へのリスペクト、斬新で鋭く独特な視点に、いつも感心しながら仕事をしてきた。そして不思議なのは、抑えきれない熱い日本酒愛があるのに、文章からは押しつけがましさは感じられないこと。さらりと自然に、素直な気持ちが伝わってくる。本書も同様で、じつは日本酒造りの歴史や工程にもしっかり触れているのに、小難しくなく、読みやすくまとめられている。一方で「夏の生酒だけはいただけない」とか「日本酒の辛口ってなんなんだ」とか、ところどころに山内さんらしい鋭い指摘も点在。そんな言葉をスパイスに、日本酒の面白さを感じながら読める一冊だ。(土屋)

『ニッポン脱力神さま図鑑』

宮田珠己 著/廣済堂出版/1600 円+税

日本にはさまざまな神様・仏様がいる。本書は中でもゆるくて素朴な路傍の信仰対象に注目。田の神さあ・鬼コ・国東仁王など6テーマに分け、323体もの神仏をユニークな解説と写真で紹介している。多くは江戸時代に作られたとされる独創的な面々と、その文化が今も地域に受け継がれている様子に、驚き、脱力。(町田)

『東京老舗の名建築』

二階さちえ 著/エクスナレッジ/1600円+税

街なかで古い建物に出合うと、昔の東京のスケール感を知ることができて楽しい。震災や戦災、そして時代の変化の中で数多くの建物が失われ、日々スクラップ&ビルドが繰り返されている東京。本書は、そんな大都会に残る――いや、主の思いで「残されて」いる、24の老舗の名建築を紹介。巻末の用語解説も親切だ。(渡邉)

『先生、ワインはじめたいです!』

こいしゆうか 著 杉山明日香 先生/大和書房/1300円+税

ワインは難しそうで敬遠していたけれど、本書は安価で自分好みのワインを見つけるためのコツが満載! 品種別の味わいの違いも、シンプルなイラストでわかりやすい。焼き鳥とピノ・ノワール、シャルドネと揚げ物など、ワイン×料理の意外な組み合わせも教えてくれる。ビールや日本酒派の人にこそおすすめの一冊。(吉岡)

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。