大ぶりのネタがぎっしり乗った海鮮丼
名物は何と言ってもボリュームたっぷりの海鮮丼。この日(11月)のネタは、サーモン、タコ、コハダ、イカ、スダコ、マグロ、エビ、いくら、ホタテ、玉子の十種類。厚切りなので食べ応えもある。器からはみ出さんばかりの見た目も迫力満点。この海鮮丼にお味噌汁とお新香、小鉢がついて1160円とお手頃価格。
市場直送なので、新鮮なこともお墨付きだ。熱々で出してくれるお味噌汁にもほっとする。新鮮な青菜と豆腐が入ったおふくろの味だ。
海鮮丼の次に人気なのは海鮮親子丼。親子丼と言っても鶏と卵ではない。「海鮮」がつくから一味違う。サーモンとイクラで親子丼なのだ。こちらも厚切りで大ぶりのサーモンと、たっぷりのイクラが丼を埋め尽くす。海苔も乗っているので、海苔でイクラを巻いてもおいしいかも知れない。
ほか、冬に登場する期間限定のカキフライ定食890円もファンが多いという。
船橋市場の歴史を見続けて半世紀
初代店主の大野安枝さんは、1969年の船橋市場開設と同時に開業。実家が魚屋だったものの、それまで飲食店での料理経験はなかったそう。市場が一番盛況だった頃には、3時間しか店を閉めていないほどの忙しさだったという。
あまりの忙しさに娘の五十嵐好江さん加わり、現在は孫の雅哉さんが店主を務めている。雅哉さんは元プログラマーという異色の経歴だ。
お客さんとの掛け合いがBGM
この親子御3世代がとにかく明るい! そこにパートさんや市場の常連さんが集うと、すぐに小気味よいやりとりが始まって心地いい。通販で送ってもらったという熊手の話で盛り上がっていた。
一仕事が終わって、ゆっくり昼ビールを飲む人もちらほら。
市場内では有線放送などのBGMはないが、このおしゃべりを聞いていると「市場にいる」という臨場感を感じられて楽しい。もちろん市場外からの一般客も歓迎される。
愛情も奥行きも深いおふくろの味
厨房を覗くと大鍋でおでんを煮ていた。「おでんは寒くなってきたからやってみました」と女将さん。見回すとお品書きは、煮魚や焼き魚、揚げ物にラーメンと驚くほど種類も豊富。メニューは、季節やお客さんの好みに合わせて柔軟に変わる。バリエーションも豊かで愛情たっぷりのおふくろの味が、客足が絶えない秘訣なのだろう。
取材・文・撮影=新井鏡子