嘉義はこんな街
嘉義は台南をよりゆるく温和にした感じといおうか。昭和レトロな街並みに、昔ヒノキと製糖で潤った華やかさが宿っている。林業に従事した日本人居住区を広く修復保存した施設や霊峰・阿里山へ至る登山鉄道の駅舎など歴史的観光スポットも様々。食ならば台湾軽食の定番、雞肉飯=鶏肉ぶっかけ丼だ。発祥の地だけに約80 軒が競い合い、いわば香川における讃岐うどんのポジション。コーヒーや茶の名産地が近いので飲み物も高レベル。台湾の宝箱、台北故宮博物院の分院(南部院)が近郊に開館、ますます目が離せない。
嘉義駅周辺 日帰りおさんぽコース
コース概要
嘉義駅〜檜意森活村間の市街地の中心部をぶらつく。そこそこ距離があるので、途中でカットしてタクシーで移動もあり。食では雞肉飯は外せない。紹介する店以外にもいくつも出くわすはず。量が少ないのではしごも容易。嘉義の雞肉飯は火雞肉飯と頭にたいがい「火」がつく。七面鳥のことで、肉は鶏よりコクがある。本場ならではのこだわりだ。
\START/ 1 台鉄・嘉義駅
駅舎は市定古蹟。玄関口からそそる
吹き抜けのコンコースや、入って左手の、三等客用だった待合室のゆったりした造作に昭和レトロの雰囲気を色濃く残す名駅である。
2 嘉義車頭火雞肉飯
駅前から雞肉飯三昧
駅前を出ると老舗『嘉義車頭火雞肉飯』の看板が目に入る。向かいには『三雅嘉義火雞肉飯』も。門柱を形成するように通りをはさんで並ぶ駅前の老舗2軒は、雞肉飯ワールドへの入場ゲートか。
3 Archers Kitchen
こんなおしゃれ所だってある
古ビルをモダンにリノベした大人っぽいカフェ。スイーツにも力を入れていて、懐かしい味わいのプリン110 元なども。
4 MIMICO Café 秘密客珈琲館
フレンドリーな秘密基地
手作り感ただようゆるさが心地よい落ち着く古民家カフェ。入り口から中を見通せないので最初躊躇するが、店員は開放的でフレンドリー。自家焙煎コーヒー120 元もおいしく、軽食類も充実。
5 阿里山森林鐵路車庫園
鉄の心を熱くする
今は観光用となっている阿里山森林鉄道。修理工場などの関連施設のあった敷地に当時使われていた車両を多数展示。さらに隣接する北門駅は、戦前の駅舎を復元した史跡で現役の山岳鉄道の駅。合わせて“鉄”好きを誘う。
6 承億小鎮慢讀
がんばってほしい文化基地
老朽化した書店を大胆にリノベーション、1階〜3 階の各階に異なった趣向の本と飲食スペースを兼営させているのが特徴。嘉義で一番クリエイティブな店。取材時(2019 年夏)は改装中だったが無事復活してほしい。
7 中央噴水池
じっくり見てるとほほえましくなってくる
中心に立つ黄金の投手像は、映画『KANO 』で一躍脚光を浴びた地元出身の野球選手、呉明捷の若かりし頃の姿。実はこの像、ゆっくり回転している。像に尻を向けられたくないという近隣の店に配慮したんだとか。
8 源興御香屋
空いてたらラッキー
おすすめは看板商品の一つ香吉士百香綠茶=パッションフルーツの中国緑茶割りジュース65 元。新鮮濃厚なパッションフルーツと、酸味をやんわり和らげる緑茶のバランスが絶品。
9 噴水雞肉飯
まずは食らうべき元祖めし
雞肉飯を考案したと言われる老舗の本店。使う肉はやはり七面鳥。ややオイリーだがさっぱりめの味は、誰の口にも合うはず。25 元〜。嘉義で雞肉飯をはしごする時の標準としても、訪れておくべし。
10 中央第一商場
ひょうたん状の不思議道
大通り裏手の謎めいたドーナツ状の広場は中央第一商場というショッピングゾーン。商売繁盛の効果もある八卦陣を模したものというがその割には暇そう。隣は中央第二商場、こちらは中央が神社の境内広場になっている。
11 楽豆 LoveBean
店構えからこだわりのヘルシー豆乳
豆漿=台湾風豆乳の専門店。こちらも店舗は古民家リノベ。自然なほのかな甘みで昔ながらの製法にこだわるロハスな豆漿は大人味。
12 菸酒公賣局嘉義分局
将来は駅の顔に
1936年に日本統治時代に建てられた元たばこ酒公売局嘉義支部。ミントグリーンの窓枠と、カーブする壁面が美しい洋館を筆頭に、全部で4棟。2020年に嘉義市立美術館に生まれ変わる予定
\GOAL/ 13 嘉義文創園區
現在進行形の穴場のおもしろ文化施設
高粱酒の酒造工場跡を再利用した文化施設。各種イベントや工作教室に加え、ひと癖あるカフェや独立系書店などが参入、建物によっては酒造りの機械や道具がまるごと残っていて興味深い。営業時間は店ごとに異なる。
嘉義・夜まで営業しているカフェ3選
丁式茶
銘茶を深くカジュアルに味わう
親の代からの茶畑で、最高級の中国茶と紅茶を真摯に追求する若い主の店。茶を気軽に楽しんでもらおうと店はカフェ風。高級茶をカップで供したり、丸く凍らせた茶氷で、薄まらないアイスティーを仕立てたり。中国茶もいいが台湾紅茶130 元〜を未経験ならぜひここで。
霜空珈琲
余白の美学の中でくつろぐ
庶民的な商店街にできたハイセンスな古民家カフェ。細い通路先の扉を開けると、天井の高い真っ白な空間が現れる。席の間をゆったりとり、壁の余白を活かして古い掛け時計や花がぽつりと置かれたインテリアも素敵。贅沢な空間で美味なコーヒーやケーキを満喫。コーヒー160 元。
竹居茶樓
建物も料理もビッグ
街はずれの風雅な茶芸館。池のある庭園を囲む中国式伝統建築で映画ロケにでも使えそうな雰囲気と広さ。本格中国茶230 元〜に加え中華料理が豊富。しかも深夜3時(!)までの営業でアルコール類も豊富。部屋が細かく分かれていて、気兼ねなく過ごせるのもいい。
嘉義・朝食からディナーまで、おすすめグルメ3選
王家祖傳本產牛雜湯
観光客の増える9 時以前がおすすめ
東市場で湯気をあげる大鍋が目印の牛雜=牛モツのごった煮スープは、ひと口すすれば食いしん坊も黙る逸品。臭みは皆無、部位の異なるモツの歯触りと澄んだスープの奥深いハーモニー。130 元。魚の頭など食材の並べ方が几帳面で美学すら感じる周辺の露店も必見。
林聰明沙鍋魚頭
ご飯が進む具沢山な鍋
台湾の定番鍋の一つ、沙鍋魚頭の老舗。揚げた川魚の身を白菜、キクラゲ、豚肉、豆腐などと鍋に投入、甘味噌風の特製沙茶醬スープで煮込む。汁が染みこんだ揚げ衣と白身魚の取り合わせが絶妙。沙鍋魚頭330 元(2 〜3人)。レトロで活気ある本店の雰囲気もよい。
心宜草堂
佇まいから体によさげ
古渋な漢方薬局、永昌堂参薬行2 階にある薬膳料理店。うって変わって現代的内装で料理はコース仕立てのボリュームある定食各種。味の方は薬っぽさはほとんどなく食べやすい。定食359 元〜。1階でオリジナル漢方茶各種が安く手に入るのもうれしい。
嘉義・見どころスポット3選
檜意森活村
さながら日本統治時代のテーマパーク
戦前、嘉義で林業に携わっていた日本人の宿舎28 棟を調査した上で正確に修復、街並みごと再現した台湾最大規模の日本式木造建築エリア。建物内は出入り可で、ショップや飲食店になっているものも多い。
嘉義公園
名所テンコ盛りの巨大公園
1910年開園。嘉義の街を一望できる射日塔、嘉義神社があった名残の和風建築を使った史蹟資料館、色鮮やかな孔子廟、中国の天体観に基づく奇抜な遊歩道・天干地支牆之道、隣は鬱蒼とした嘉義樹木園と見どころ満載。
台灣花磚博物館
小ぶりでも見どころいっぱい
戦前、台湾に持ち込まれた和製マジョリカタイルを収集、古民家で展示する博物館。レトロな図柄が魅力的。入場料50 元。
嘉義・さんぽに便利なホテル2選
日帰りでも観光できるけど、広大な檜意森活村、嘉義公園、 阿里山森林鐵路車庫園などをじっくり見るには1泊がおすすめ。嘉義さんぽに便利な2つのホテルをご紹介します。
蘭桂坊花園酒店
市内さんぽの起点
『蘭桂坊花園酒店』は街の中心部で隠れ家風に立つホテル。部屋は小さめだが現代的で清潔。嘉義一番の賑わいの文化路夜市が間近で東門市場に朝食へ行くのも余裕。
南院旅墅
通向きでスタイリッシュな大箱
市街地の東奥にそびえるリゾートタイプの大型ホテル。見晴らしの利く広い部屋でゆったりすごせる。檜意森活村、嘉義公園など歴史的観光スポットもほど近く、新たな発見があって楽しい。市街地の奥をメインに散歩するならもってこい。2度目以降の嘉義にオススメ。
取材・撮影・文=奥谷道草
MOOK『散歩の達人 台湾』より