「全てをハイにする」とは??

「全てをハイにする」は、自粛期間中の“買い出し”を楽しむために思いついた遊びだ。「何に焼酎を入れると美味しいか」を考えながら、スーパーやコンビニへ行き、オリジナルの「〇〇ハイ」を作る。この遊びによって少し視点を変えるだけで、いつもの売り場が輝いて見え、どこへ行くのも立派な散歩。身も心もハイになれるのだ。

「全てをハイにする」の基本ルールは以下。

ルール①焼酎に入れたら美味しそうなもので割って飲んでみる
ルール②食べ物を粗末にしない

創業50年以上の大衆酒場『北海 三四郎』へ

白のれんには三四郎の文字。店名の“三四郎”は店主が小説「姿三四郎」のモデルとなった明治の柔道家、西郷四郎氏の子孫であることから名付けられた。
白のれんには三四郎の文字。店名の“三四郎”は店主が小説「姿三四郎」のモデルとなった明治の柔道家、西郷四郎氏の子孫であることから名付けられた。

板橋には昔ながらの酒場が点在し、どの店にも筋金入りのご常連がついている。そんな店たちのドリンクメニューの中に長年ひっそりと愛されてきたローカル酒がある。牛乳ハイだ。牛乳ハイを出す店の中でも、古株であろう創業50年以上の大衆酒場『北海 三四郎』にうかがった。

ズラリと並ぶ短冊。酎ハイ類は充実の品揃えで、期間限定の生しぼりかぼすサワーや自家製梅干し使用の梅干サワー 、焼酎にブルーベリーを漬け込んだブルーベリーサワー などがある。

ドリンクメニューの中にさりげなく牛乳ハイが……。

あった。(上段左から7つ目)

おとなりには、あの“ホイス”まである。

牛乳ハイの誕生や板橋に根付いた時期について、店主の志田さんにお話を聞いてみた。

牛乳ハイに30年の歴史あり

「牛乳ハイ」で使っている牛乳たち
「牛乳ハイ」で使っている牛乳たち

――いつ頃からお店で牛乳ハイを出されているんですか?

志田さん:30年くらい前にはメニューにあったと思うよ。当時は、周りで「牛乳ハイを出してるお店はほとんどなかったね。

――板橋に牛乳ハイが広まったのはいつなんでしょうか?

志田さん:もう閉めちゃったけど、西巣鴨のあたりに牛乳ハイの元祖と言われるお店があってね。地域的にも近いこのあたりでも、いつの間にか牛乳ハイを出すお店が少しずつ増えたんだと思うよ。

――大ブームになるわけでなく、じわじわ広がって静かに愛されてきたわけですね。

志田さん:なんにでも合うお酒ではないから、みんなが頼むわけじゃないしね。でも、好きな人は好きみたいで。

いたってシンプル。牛乳ハイの作り方

ここで牛乳ハイを作る様子を見せていただくことに。サッポロの甲類焼酎にダバッと勢いよく牛乳を注いでいく。

 

志田さん:こうやって、氷を入れて、焼酎に牛乳を入れて完成!

――作り方は昔から変わらず、ですか?

志田さん:最近、牛乳のメーカーを変えたんだけど、牛乳びんなのは変わらないねぇ。

牛乳ハイ420円。朝からグイッといきたくなる見た目だ。
牛乳ハイ420円。朝からグイッといきたくなる見た目だ。

牛乳ハイはまろやかな口あたりで、焼酎の酒っぽさがあまり感じられない。腰に手を当てて勢いよく飲み干せそうな飲みやすさだ。牛乳を使っているので、飲んべえの免罪符“健康に良さそうだから飲んでもよし”が発動して、ゴクゴク。

前回取材したホイスもそうだったけど、体に良さそうなお酒はついつい飲み過ぎてしまうんだよなぁ。

牛乳ハイに合うつまみを探せ

三ちゃんチーズ460円。
三ちゃんチーズ460円。

せっかくなので牛乳ハイに合わせたメニューを注文する。人気メニューの三ちゃんチーズは、ジャガイモにタラコを乗せて、マヨネーズとチーズがとろ〜り。牛乳ハイと食べると、ポテトグラタンのような味わいになる。洋食っぽいメニューは比較的合わせやすそうだ。

ホルモン炒め600円。
ホルモン炒め600円。

ホルモン炒めも甘辛い特製ダレが牛乳にうまくマッチ。脂の旨みを牛乳で包み込む、なんとも不思議な味わいだ。

刺身の三品盛り1080円。※内容は日替わり
刺身の三品盛り1080円。※内容は日替わり

牛乳ハイとのペアリングには向かないが、お店自慢の、刺身の三品盛りもいただいた。日によって4品盛りになっていることもあるようで、さりげないサービスにお店の優しさがにじむ。他のサワーとあわせるならば、どじょうの唐揚やアジフライもおすすめとのこと。

私を横目に「『牛乳ハイ』なんてのもあったんだね。今度頼んでみようかな」と常連さん。牛乳ハイは見た目にも存在感があり、隣の席で飲まれるとどうしても目に留まる。こうして静かに板橋でこの地位を築いてきたのかもしれない。

2回続けて、長年愛される酎ハイのお店を取材してきた。ホイスと牛乳ハイの共通点は、ちょっと健康に良さそうなところ。次は、お酒を飲む言い訳になる健康系酎ハイを作ってみようかな。

『北海 三四郎』店舗詳細

住所:東京都板橋区板橋1-19-3/営業時間:17:00~24:00(金・土は~翌1:00)/定休日:月/アクセス:JR埼京線板橋駅から徒歩2分

取材・撮影・文=福井 晶

美味しい〇〇ハイを作りたいなら、長年愛されるドリンクから学べ。酎ハイの神様が枕元でそう言った。あらゆるものに焼酎を入れて〇〇ハイにする遊び、その名も「全てをハイにする」の記念すべき第10弾は、自宅を飛び出して、幻の酎「ホイス」を提供する恵比寿の『田吾作』を訪問! 酎ハイの礎ともいうべきドリンクを飲むことで〇〇ハイへの愛を深め、さらなる高みを目指す。