アート&焙煎の街だからこその魅力
昭和レトロな佇まいを残す複合施設『fukadaso(フカダソウ)』は、解体寸前だったかつての風呂なしアパート。今ではカフェや雑貨店などが出店し、清澄白河を代表するお出かけスポットとなっている。その102号室に出店しているのが『リカシツ』だ。理化学ガラス製品および機器の老舗企業・関谷理化株式会社のアンテナショップとして2015年にオープン。大学や研究機関に供給している製品はもちろん、日常遣いできるオリジナル製品も販売する。
話してくれたのは、関谷理化株式会社の代表取締役・関谷幸樹さん。「江戸川区に社の物流センターがあることや、『東京都現代美術館』へ訪れるアート関連の人が足を運び、また焙煎所も多いサードウェーブコーヒーの街であり、新たな製品作りの場にふさしいと考え、この地へオープンすることにしました」。
また、ご自身も近隣に住んでいるというのも、出店場所に選んだ理由だそうだ。加えて、老舗店が残る森下、『富岡八幡宮』のにぎわいがある門前仲町など、それぞれに個性ある街が隣接しているのも魅力とのこと。清澄白河は、その中間に位置しており、地下鉄が通るまでは陸の孤島のような場所だったともいえ、だからこそチェーン店の出店も少なく、個人店が多く、お互いに切磋琢磨していけるような場所なんだとか。関谷さんは『深川ヒトトナリ』という深川エリアの街歩き&人訪ねイベントに携わっていたこともあり、つながりが増えて、居心地が良さがあるという。
理化学ガラス職人を元気にしたい!という思い
理化学ガラス製品作りは、職人の高齢化、加えて昨今の少子高齢化に伴う学校減や研究所の統合で、次世代を担う若手職人の育成が厳しいという状況にあるという。そこで、職人の技術を活かした新たな市場開拓を目的に、一般の人にも広く使ってもらえる、今のような製品作りをスタートさせたという。
もともと耐熱性や熱衝撃に優れており、職人の手により自在に形を変える熱加工も可能だ。レンジで温めると熱く持ちにくいため、取っ手をつけることにより使いやすくした取っ手付きのビーカーをはじめ、ビーカーワイングラスや木製の試験管立てなど、この店オリジナルの製品は、理化学ガラス製品の枠にとらわれることなく、あくまで日常遣いできるよう工夫されている。
関谷さんは、「“こういう商品があったらいいな”、“こういう使い方ができる商品がほしい”といったお客様の声が、職人さんの新たな仕事づくりのきっかけになると考えています。ぜひ足を運んでいただき、アイディアをいただきたいです」と話す。
ディスプレイもひとひねり
店内レジ奥には、大きな黒板が掲げられ、何やら数式のようなものが描いてある。店長の関谷りかさんに伺ったところ、販売している商品の組み合わせを表しているそうだ。
「例えば、耐熱ガラスのコニカルビーカーにペンダントライトを加えると、当店のコニカルペンダントになるという組み合わせを絵図で描いています。お客様に分かりやすく、商品をご紹介できればと思い、描いています」と話す。
理科室のイメージを壊すことなく、商品紹介も黒板という演出で、とてもユニーク。壁面の装飾も「クデルナ・ダニッシュ濃縮装置」という環境ホルモン関連の濃縮装置として使用できるもの。こうして飾られてみると、ギュッと!心をつかまれるインテリアになっている。
近くには、家庭用蒸留器「リカロマ」の製品開発がきっかけでオープンした『理科室蒸留所』もあるので、合わせて足を運んでみたい。
取材・文・撮影=千葉香苗