蒲田行進曲の発車ベルが聞こえる、線路脇の赤いテント
お店は、自転車置き場を挟んだ線路脇にある。駅ビルからでも徒歩30秒ほど。店内に入っても、発車ベルの蒲田行進曲が聞こえてくる。テントのひさし屋根と同じ、赤いカウンターは一直線で赤いスツールが10席並んでいる。
オーナーの秋山大地(あきやまだいち)さんは、10年以上前から横浜市内で主に居酒屋など複数の飲食店を経営している。横浜発祥の家系ラーメンには10代の頃からなじみがあり、大人になってからも気に入った店に頻繁に通う、家系ラーメン好きだ。
家系ラーメンの作り方にも興味が湧き、自分でも家系ラーメンの店を開きたいと考えるようになった。そして声をかけたのが学生時代からの友人で、現在店の店長を務めている勝田幹生(かつたみきお)さんだ。勝田さんは家系ラーメンの店で修業し、2人で『ラーメン 三楽家』としての味を磨き上げてきた。
肉のうまみを効かせた、こだわりの一杯
家系ラーメンといえば、スープは豚骨醤油。他の店でも肉料理を多く扱う秋山さんは「肉から出た出汁が効いているスープを目指しています。骨髄の味よりも肉のうまみですね」と話す。スープは豚のゲンコツと、肉がたくさんついた状態の背ロースに、鶏ガラ、昆布などを大きな寸胴に入れて炊き込んでいる。特に豚は臭みが出ないようにと、新鮮なことはもちろん、80kg以下の小ぶりの豚のみを使用している点もこだわりの一つだ。
ラーメンは味の濃さ、油の量、麺の固さが選べる。初回ということもありすべて「普通」でお願いしながら、いちばんシンプルなラーメンの食券を差し出した。
カウンターの向こうで勝田さんが麺をゆではじめ、その間に、丼に湯を張って温め、ほうれん草はその場でゆがく。注文が入ってからほうれん草をゆで始めるのも『ラーメン 三楽家』のこだわりだ。
ゆで上がった麺を丼に入れ、大きなチャーシュー、彩り鮮やかなほうれん草、そして海苔が盛り付けられ、カウンター越しに差し出された。醤油が香るスープはキレがあり、白いごはんが欲しくなる。もっちりした食感の中太麺にもスープがよく絡む。麺は湘南の『麻生製麺』から取り寄せていて、特殊な切り刀が使われているとのこと。
秋山さんの肉に対するこだわりは、大きなチャーシューにも現れていて、店の自慢のひとつだ。大きな塊のもも肉を店内で釜焼きにしたもので、口に入れたときに感じる、燻したような香ばしさにはっとさせられる。
スープ、麺、チャーシューと食べ進めていたら、トッピングの海苔がずっとシャキッとしていることに気が付いた。食べてみると、口の中で音がするほど厚みがしっかりしている。家系ファンは、スープを吸わせて、ごはんを巻いて食べる人が多いそうだが、その味わい方にも適している。
ほうれん草をその場でゆでることや品質のいい海苔を使っていることなど、手間やコストがかかってもよりおいしく提供したいという姿勢を感じた。
SNSフォロワー向けの太っ腹なサービスあり!
卓上調味料は、おろしニンニク、豆板醤、刻み生姜、ニンニクと昆布を漬けた酢、おかず生姜。また必要に応じてスタッフに声をかけると、マヨネーズやフライドガーリック、激辛唐辛子もサービスしてもらえる。
家系といえば、ライスと一緒に食べるのを楽しみにしている人も多いだろう。1杯100円のライスは、新潟県産コシヒカリを主に使っていて、なんとおかわり無料。おなかをすかせて訪れた人は、スープはもちろん、おかず生姜などと一緒にありがたくいただこう。
またXのアカウントをフォローしている人向けに、海苔やキクラゲ、時にはチャーシューなど、毎日必ず何か1種類がサービスされる。太っ腹だ。
オープンして1年余りが過ぎ、秋山さんも勝田さんも、もっとおいしいラーメンにしたいと頻繁にラーメンを食べ歩いては改良を試みるなど、研究を怠らない。
現在は、人員の関係で17時から24時までの営業。いちばん忙しいのは夜22時から23時とのこと。遅くまで働いたあとや、蒲田で飲んだあとなど、1日を締めくくり、翌日もまた元気に過ごすための一杯を求めて立ち寄りたい。
取材・文・撮影=野崎さおり






