自然に逆らわない生き方を実践する場所
ナチュラルワインはおいしい。でも、そもそも“おいしい”ってなんだろう? 「ヴィナイオータ」の太田久人さんはこう考える。
「究極は“食べて楽しく、次の日楽なもの”だと思うんです。例えば霜降りのお肉を食べ過ぎて、次の日胃が重く辛くなったとします。つまり“おいしい”と思って食べたものが明日以降を生きづらくしたということですよね。それでは本末転倒です。そう考えると、おいしい食べ物ってヒトのエゴを押し付けて出来上がるものではなく、ほぼ“自然に”できちゃうものなのではないでしょうか?」
「ヴィナイオータ」が営む『だだ商店だだ食堂』は、太田さんが思うおいしいを全力で発信する場所だ。食堂では昼には定食、もちろんワインも楽しめて、商店には思いに共感する全国各地の作り手の食料品が並ぶ。野菜や米は、近くの田畑で社員自らが農業部として栽培したものだ(他業務と並行して!)。
さらに“おいしい”を楽しみ、後世にも残すために“おいしい”をもたらしてくれる自然環境を維持する努力も惜しまない。樹を植え、水はけも水持ちもいい環境を整えて、微生物を含む動植物が心地良く暮らせる環境づくりを目指している。
そして、地下には、太田さんに“おいしい”を教えてくれたワインがずらり。同じ銘柄でも複数のビンテージを並べているのは、ブドウの作柄にかかわらず、どれもその年なりの唯一無二の美しさがあると伝えたいからだ。
「食べ心地と飲み心地が軽く、居心地が良い。これこそがおいしさの根幹だと思っているので、それをこの店で感じてもらえたらうれしいです。そしてそのおいしさの背景には、自然への敬意や環境への配慮といったものがあることも。ヒトも自然のメンバーの一員なわけですから、敬意や配慮は当然持つべきものだと思うのです」
話しながら食べた定食には、豊作だという新タマネギがたっぷり使われていて、とてもおいしかった。明日の私の体はすこぶる元気だろう。
取材・文=井上麻子 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2026年7月号より






