だだ商店 だだ食堂
太田久人さん
筑波大学卒業後、単身渡伊。1998年に「ヴィナイオータ」を創業し、イタリア、フランス、スロヴェニア、オーストラリアなどからのワインやビール、食品の輸入を手掛ける。2020年、つくば市流星台に『だだ商店だだ食堂』を開業。

自然に逆らわない生き方を実践する場所

ナチュラルワインはおいしい。でも、そもそも“おいしい”ってなんだろう? 「ヴィナイオータ」の太田久人さんはこう考える。

「究極は“食べて楽しく、次の日楽なもの”だと思うんです。例えば霜降りのお肉を食べ過ぎて、次の日胃が重く辛くなったとします。つまり“おいしい”と思って食べたものが明日以降を生きづらくしたということですよね。それでは本末転倒です。そう考えると、おいしい食べ物ってヒトのエゴを押し付けて出来上がるものではなく、ほぼ“自然に”できちゃうものなのではないでしょうか?」

お店が立つ場所は、宅地開発が進んだ地域の中にあるが、もともとの地形やそこに何十年も前からある樹木に配慮を払った開発がなされ、緑豊かな環境が広がる。
お店が立つ場所は、宅地開発が進んだ地域の中にあるが、もともとの地形やそこに何十年も前からある樹木に配慮を払った開発がなされ、緑豊かな環境が広がる。
敷地内に古墳を造設した太田さん。古墳は時の権力者の墓であり、土地の環境を整える効果もあったそう。石室が暗渠や酸素供給の役割も果たし、樹木が健全に育つ。
敷地内に古墳を造設した太田さん。古墳は時の権力者の墓であり、土地の環境を整える効果もあったそう。石室が暗渠や酸素供給の役割も果たし、樹木が健全に育つ。
人工的な杉林も間伐など人が適度に手を加えることで、ドングリなどから芽吹いた落葉広葉樹も育つ自然な森に。サンショウやタラの木も!
人工的な杉林も間伐など人が適度に手を加えることで、ドングリなどから芽吹いた落葉広葉樹も育つ自然な森に。サンショウやタラの木も!

「ヴィナイオータ」が営む『だだ商店だだ食堂』は、太田さんが思うおいしいを全力で発信する場所だ。食堂では昼には定食、もちろんワインも楽しめて、商店には思いに共感する全国各地の作り手の食料品が並ぶ。野菜や米は、近くの田畑で社員自らが農業部として栽培したものだ(他業務と並行して!)。

さらに“おいしい”を楽しみ、後世にも残すために“おいしい”をもたらしてくれる自然環境を維持する努力も惜しまない。樹を植え、水はけも水持ちもいい環境を整えて、微生物を含む動植物が心地良く暮らせる環境づくりを目指している。

『だだ食堂』の週替わり定食2900円 (前後)は肉か魚のメインを選べる。自社農園で育てた野菜やお米、たくさんの小鉢がお盆に並ぶ。もちろん地下セラーで選んだワインやビールを飲んでもよし。
『だだ食堂』の週替わり定食2900円 (前後)は肉か魚のメインを選べる。自社農園で育てた野菜やお米、たくさんの小鉢がお盆に並ぶ。もちろん地下セラーで選んだワインやビールを飲んでもよし。
開放感のある『だだ食堂』の内観。金曜の17時以降は、予約制でワインバー営業も。
開放感のある『だだ食堂』の内観。金曜の17時以降は、予約制でワインバー営業も。
日々の食卓が豊かになるような食材や調味料が並ぶ『だだ商店』。農家から届く野菜や牛乳、卵、安全に育てられたお肉なども。ワイン同様、思いをもった全国各地の生産者を紹介する場でもある。
日々の食卓が豊かになるような食材や調味料が並ぶ『だだ商店』。農家から届く野菜や牛乳、卵、安全に育てられたお肉なども。ワイン同様、思いをもった全国各地の生産者を紹介する場でもある。
取材日も続々と野菜が届いていた。
取材日も続々と野菜が届いていた。
店舗の近くにある「亀の尾」を育てる田んぼ。農業部では、無施肥無農薬で米や野菜を育て、自分たちのお店の料理や販売に使ったり、茨城県大洗町の『月の井酒造店』で日本酒も造ってもらったりしている。
店舗の近くにある「亀の尾」を育てる田んぼ。農業部では、無施肥無農薬で米や野菜を育て、自分たちのお店の料理や販売に使ったり、茨城県大洗町の『月の井酒造店』で日本酒も造ってもらったりしている。

そして、地下には、太田さんに“おいしい”を教えてくれたワインがずらり。同じ銘柄でも複数のビンテージを並べているのは、ブドウの作柄にかかわらず、どれもその年なりの唯一無二の美しさがあると伝えたいからだ。

「食べ心地と飲み心地が軽く、居心地が良い。これこそがおいしさの根幹だと思っているので、それをこの店で感じてもらえたらうれしいです。そしてそのおいしさの背景には、自然への敬意や環境への配慮といったものがあることも。ヒトも自然のメンバーの一員なわけですから、敬意や配慮は当然持つべきものだと思うのです」

約13万本のワインが眠る地下セラー。
約13万本のワインが眠る地下セラー。
同銘柄のビンテージが複数並んでいるのが珍しい。「飲むことで、“時間”を 旅できるのもワインの奥深さです」。
同銘柄のビンテージが複数並んでいるのが珍しい。「飲むことで、“時間”を 旅できるのもワインの奥深さです」。

話しながら食べた定食には、豊作だという新タマネギがたっぷり使われていて、とてもおいしかった。明日の私の体はすこぶる元気だろう。

住所:茨城県つくば市流星台56-3/営業時間:だだ食堂:11:00~17:00LO/だだ商店:11:00~19:00/定休日:だだ食堂:月・火/だだ商店:日~火 /アクセス:つくばエクスプレスつくば駅から徒歩35分

取材・文=井上麻子 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2026年7月号より