元はマスターのお母さんが営むスナックだった
オープンは昭和63年(1988)。それ以前はマスターのお母さんが営むスナックだったそうだ。「Lifeという店名は、母親がスナックをやっていた頃から変わっていません。そういう意味では、ここにLifeというお店があるのは、もう44~45年になりますね」とマスターの定方勝行(さだかたかつゆき)さん。入口が二重扉になっているのは、カラオケの音が外に漏れないように配慮したスナックだった頃の名残だ。店内はボックス席だったが、改装してカウンターがメインのバーにした。
実家に帰ってきたような不思議な安心感
定休日は日曜のみ。ほかは正月三が日を除いて、ほぼ休まずに営業している。定方さんにこれほど長く続けてこられた理由を尋ねてみた。
「お客さんに恵まれたことが大事ですね。運がよかったです。いいお客さんに恵まれると、何も言わなくてもお客さんの方から来てくれます。長い人は、もう30年になりますね」
OK横丁は昔から居酒屋が多く、バーという形態のお店は珍しかった。宴会などでひとしきり飲んだ後、一人でゆっくりとお酒を味わいたい時などに重宝されたそう。それにしても何だろう、この実家に帰ったような気分。物腰柔らかなマスターが醸し出す、不思議な心地よさがある。そんなことも、長く続いた秘密なのだと思う。
デスソース入りの激辛カクテルもある
カクテルは、ピリ辛から激辛まで辛さが選べるオリジナルのトマトのカクテルが人気だ。ウォッカとトマトジュースにイギリス伝統のウスターソース、リーペリンソースを加えた爽やかながらパンチの効いたカクテルだ。これに激辛のデスソースや、ハバネロを加えたカクテルを好んで注文するお客さんもいるそう。カクテルは800円から、好みを聞いて作ってくれる。ウィスキーも1杯500円からそろえている。
チャージは500円。お通しはフルーツ、クラッカー、サラミ、乾き物の4種類から選ぶ。
店頭の灯りはほとんど灯さずに32年
看板を照らす照明は、基本いつも消えている。実はオープン以来、点灯した日は数えるほどしかないそう。「電球を変えたこともあるのかな? 覚えていません」と定方さんは笑う。酔客が気軽にドアを開けるのを予防するためだ。でも決して、一見さんお断りではない。灯りがなくとも、自然とお客さんが足を運んでくれる不思議な磁力のあるバーなのだ。お客さん同士が仲良くなって、グループで遊びに出かけたり、定方さんの誕生日を祝ってくれたこともある。今まで、あらゆる年代、職種の人がカウンターに座ってきた。
最後に『Life』という店名に込められた思いを聞いてみた。「店名をつけたのは母親ですが、人の人生(Life)の一部になれたらいいんじゃないかなぁという思いがあったのだと思います。そんな、大げさなもんじゃないですが」と謙虚だった。
そうしている内に最初のお客さんが入ってきた。「いらっしゃいませ」の言葉はない。「おかえりなさい」のように、すっと迎えられていた。
『COUNTER Bar Life』店舗詳細
取材・文・撮影=新井鏡子