1日に最大約1500個も!
1877年(明治10)に、『名花堂』という名で創業。カレーパンの起源については諸説あるものの、1927年(昭和2)に2代目の中田豊治氏が考案した「洋食パン」が元祖といわれている。
カレーパンは、7時、11時、15時の1日3回焼き上がる。揚げたてを求めて訪れる客も多く、今は店内への入店を制限していることもあるが、軒先には列ができる。
次々と揚がるカレーパンは、平日なら1日に約1000個、週末は約1500個も売れるというから、その人気は半端ではない!
時代を越えても愛される味
今回お話してくれたのは、5代目の中田豊隆さん。「創業当初は、旧深川常盤町という場所でスタートしました。昭和30年代には、現在の地にパン『名花堂』、新大橋通りにケーキ店『カトレア』をオープンし、2店舗営業していました。ケーキを取り扱う洋風の店なので、洋ランの名前を店名にしたんです」と話す。
後に店名を『カトレア』に統一し、ケーキ店は閉店。パンのみを販売している。
「私の学生時代には、この辺りもまだ都電が走っていました。地下鉄の開通で様子は少し変わりましたが、人は大きく変わりません。アクセスの便が良くなって、遠方から足を運ぶお客様が増えましたね」と中田さん。
約140年、この地域の変遷を見守ってきた『カトレア』。昭和、平成、令和と時代を超えても愛される商品を作り続けている。
たっぷり具材で、やさしい甘さ
元祖カレーパンは、豚挽肉、ニンジンや玉ネギなどの野菜がたっぷり入っており、野菜の甘みを感じる。植物性のサラダ油と綿実油などをブレンドした油で揚げているから、胃にもたれる感じもなく、何個でも食べられそう。
サクッとモッチリとしたパン、そしてギュウギュウに詰まったカレーがすぐに口の中にあふれ出してくる。元祖カレーパンは甘口、ピリリと大人な刺激の辛口カレーパンもある。
電子レンジやオーブントースターで再度温めると、揚げたての味わいを楽しめるとの案内もあるので、購入した際には試してみたい。
老若男女、皆に愛されるパン
商品は、菓子パンや惣菜パン、食パン類など種類も豊富だ。昼時ともなれば、元祖カレーパンとともに、様々なパンを買い求める客も多く、森下の人の食を支えているいっても過言ではない。
あわせて買うならば、深川あんぱんもおすすめしたい。しっとりとしたデニッシュ生地のパンで、十勝産小豆を使ったこし餡と、大福豆が入っている。甘すぎず、豆のほくほくとした食感もたまらない。
『カトレア』のパンは、どれも生地にぎっしりと具が詰まっており、200円代の価格帯が多い。価格も種類も下町感覚で、長く愛されている。
『カトレア』店舗詳細
取材・文・撮影=千葉香苗