とにかく明るい!白いタイルがまぶしい憩いの場
昔ながらの造りで天井が高いから? それともタイルが白くてまぶしいから? どっちでもいいけど、とにかく明るい!! 浴室に入ったときの感想がこれだ。それほどまぶしくきれいだ。ふわ〜っと湯気も立ち上って、一瞬、ここは天国かしら…。なんて気持ちになった。
約90年前に祖父が始めた銭湯。3代目店主の久留島章子さんはずっと父を手伝ってきた。
「温泉は、たまに行くところだから薄暗くてもいい。でも、毎日来る銭湯は、明るくないと」とは父の教え。浴室タイルの張替えを、久留島さん主導で行ったのは10年ほど前のこと。教えの通り清潔感のある美しい内装に仕上げた。
「とはいえ、色や模様は完全に私の趣味なんですけどね」と笑う。
昼間は青空、夜は星空。露天風呂で季節を感じる
露天風呂は5人ほどが入れる広さで、風呂の脇にベンチが置かれている。十分な広さがあるので空が大きく開け、開放感が抜群だ。星空はもちろんいいが、久留島さんは青空の下で入る風呂が好きだと話す。
季節を風で感じますね、というと「雪の日にわざわざ『雪見湯』を楽しみに来る人もいますよ」とのこと。なかなかいいアイデアだなと思った。
日替わりの薬草風呂は熱め、水風呂はキンキンに冷やす
薬草風呂は、曜日によって内容が替わる。金曜のコーヒー風呂以外は生薬を使うので、身体の芯まであたたまると好評。とくに、土曜の「萬喜湯(ばんきとう)」は唐辛子の効いたお湯で、身体はじんじん、風呂上がりも汗が出るほど。
そしてサウナ愛好家から熱烈に愛されているのが、キンキンに冷えた水風呂だ。18℃とあるが、もっと冷たいのではないかと噂される。サウナを出ると、隣にシャワー、そしてその隣に水風呂、と導線もスムーズ。露天風呂のベンチでの外気浴は最高だ。
3代目のやさしい目線と気配りはこれからも続く
大きな改装だけでなく、久留島さんならではの感性で工夫を凝らしてきた。
たとえば浴室内にあるサウナ用のバスタオル置き場。フックの色をカラフルにすることで、自分のタオルを判別しやすくなったと好評だ。また、玄関のディスプレイや待合室の飾り、男湯と女湯の暖簾(のれん)などを月ごとに替えているのも季節感があり、楽しみにしている客も多い。このような小さな工夫を山ほど実践してきたが、まだまだやりたいことがある、という。
車椅子の方でも気軽に銭湯に来てもらえるように、段差を解消したいと思案中とのこと。次はどんな変化があるのか楽しみな銭湯だ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ