懐かしくてラブリーなアイテムがずらり
『AiLeen by GROGGROG』に並ぶ洋服や小物を見ていると、子供のころに見た海外ドラマの登場人物を思い出す。ほとんどのアイテムが、かわいらしくて、インパクトもあって、ラブリーという表現がぴったり。映像や写真でも映えることから、特に女性お笑いタレントの衣装として購入されたり、リースされたりすることもよくあるそうだ。
訪れるのは、主に女性だが年代は幅広い。「“会社には見える面積を少なめにして着ていきます”とおっしゃりながら、購入される大人の方も多いです」と店長でバイヤーも務める田口怜(たぐちれい)さん。日常的に取り入れる人も多いようだ。
『AiLeen by GROGGROG』は、大宮にある系列店『GROGGROG』の2号店として2008年にオープン。オーナーが古着店を始めた頃から、高円寺でもお店を開きたいと考えていたのだとか。店名にした “アイリーン”は、アメリカのハリケーンの名前にヒントを得た。高円寺にインパクトをもたらす店を作りたいという意気込みが込められている。
店内のビンテージアイテムは、1970年代のアメリカ製かヨーロッパ製が中心だ。買い付け先では時間をかけて1枚ずつ確認。年代が古くて状態のいいものを探し出して、お店では手に取りやすい価格設定にするのが方針だ。
愛好家が探し求める状態のいいコレクターズアイテムも
『AiLeen by GROGGROG』では、アメリカの家庭でリメイクされたジャケットなど、世界中を探しても他では見つからないアイテムが店頭に並ぶこともある。しかし希少なものほど、愛好者の目にも止まりやすく、店舗に並んでいる時間は短い。
中でもちょっと特別なものとして見せてくれたのは「GUNNE SAX(ガニーサックス)」というブランドのドレスワンピースだ。同じ生地を使っているが、少しデザインが違うものが2着揃っていた。「GUNNE SAX」は、アメリカで1960年代末に生まれたブランドで、レースを多用し、袖やスカート部分のシルエットがロマンチック。特に1970年代は、ヒッピーの女性たちから絶大な人気を誇っていたとか。
ロマンチックな雰囲気のアイテムに憧れる人は多く、今も世界中に愛好家がいる。そのため、状態のよいものは高価格になるが、インスタグラムに写真をアップすると、遠方から買いにくる人も珍しくない。
他にも、年代が古く、状態のいい貴重なものが手頃な値段になっていることもある。古着に詳しい男性が、掘り出し物を見つけ出していくこともしばしばだ。特にデニムや、夏にはアロハシャツ、冬にはカウチンセーターなどがマニアの目を引く。彼らはきっちりとものをチェックし、スタッフと古着の知識を交換していくのだとか。
海の向こうから時を経て高円寺に来た古着への愛情
『AiLeen by GROGGROG』は、洋服やファッション小物も多いが、ディスプレイのように見えるものもほとんどが商品。田口さんは、「どんなものがどこにあるのか、把握しています」と話す。こんなにもたくさんあって、入れ替わりも激しいのに? と首を傾げていると、「古着は、一つひとつに個性があるんですよ」と付け加えてくれた。
長く古着に関わっていると、そのとき手にしたアイテムが既存のどのアイテムと並べると個性が引き出されるか、すぐにひらめくのだとか。
また、そのアイテムが大切に着られていたのか、長い時間放っておかれたのかもわかってしまうとも話してくれた。『AiLeen by GROGGROG』では、アイテムはすべて洗濯するが、特にしばらく眠っていたものは「お日さまや風にあてたりすると、不思議とイキイキしてくるものなんですよ」と田口さん。
オーナーは、「何十年も前にアメリカやヨーロッパで作られたものが、いろいろな人の手に渡って、今は日本の高円寺にある。運命的なものを感じます」と古着への並々ならぬ愛情をもつ。
接客でも古着といい出会いがあるように声をかけ、なにも買わなかった人にも、見てくれてありがとうございましたという気持ちで「ありがとうございます」と送り出すのが『AiLeen by GROGGROG』の決まり。
かわいらしいビンテージアイテムを探すなら頼りになる古着店だ。
取材・文・撮影=野崎さおり





