暮らしに寄り添う店。人が帰ってくる“巣”としての『THE LIFE』

柏駅から徒歩2分。JRの線路沿いのビルの2階、食事をしながら電車の行き交う様子を眺められる『THE LIFE』がある。2017年に創業したカフェ&ビアバーで、看板に描かれた空っぽの鳥の巣には、「旅立つ場所でもあり、帰ってくる場所でもある」という思いが込められている。

店名の「LIFE」には、まさにこの空気感が宿っている。

柏駅東口から『ファミリかしわ』を通ってくると楽に店までたどり着ける。
柏駅東口から『ファミリかしわ』を通ってくると楽に店までたどり着ける。

店内にはカウンターとテーブルが並び、昼はママさんグループ、夜は仕事帰りの女性ひとり客、夫婦、会社帰りの団体まで客層が幅広い。日々の生活のなかで、ふと立ち寄ればここには誰かがいて、ひと息ついてから家に帰れる。駅前だから11時半から23時まで通し営業なのもありがたく、軽い食事やスイーツも、メニューは素材にこだわる自家製ソーセージからパスタまで、好きなものを好きなタイミングで楽しめる。「お客さまの生活に寄り添って、ここに来ることで一日が少し良くなる店でありたいんです」とオーナーの森田晋介さん。

オーナーの森田晋介さん(中央)、妻の森田里枝さん(右)、シェフの長沼光男さん。
オーナーの森田晋介さん(中央)、妻の森田里枝さん(右)、シェフの長沼光男さん。

特に昼はママさんたちが、ランチと一緒に気兼ねなく昼ビールを楽しめる場にもなっているようだ。ランチが14時まで開いているのも、この生活のリズムに寄り添う姿勢ゆえだ。

窓際の席から常磐線が行き交う様子が見られる。
窓際の席から常磐線が行き交う様子が見られる。

さらに、この店が面白いのは人がつながる場所になっていること。

カウンターで出会った常連同士が仲良くなり、今ではゴルフ部なるコミュニティーまで誕生。年に一度は常連客やバイトOB7080人が集まるキャンプイベントも開催される。「別々に来ていた人たちが、いつの間にか仲間になってるんです。もう、僕らよりお客さん同士のほうが付き合いが深いかもしれませんね」と森田さんは笑う。

ランチの主役はサラダバー。地元野菜を直売所や農家から調達するフレッシュさ

ランチで圧倒的な存在感を放つのが、THE LIFEサラダバー1480円だ。

ランチのお客さんの9割が注文する看板メニューで、種類は常に3〜5種類ほど。内容は季節や仕入れで変わり、「昨日と今日でメニューが違う」ことがむしろ魅力になっている。

このフレッシュ感を支えているのは、オーナー自ら仕入れに赴くこと。

柏や我孫子の農家、直売所の『道の駅しょうなん』や『柏のやさい ろじまる』など、野菜の調達先は4、5軒。毎朝LINEグループで届く“本日の収穫状況”を見て、リアルタイムで注文をするという。

生野菜だけでなく、温野菜もある。ドレッシングやオイル、ナッツ類のトッピングも充実。
生野菜だけでなく、温野菜もある。ドレッシングやオイル、ナッツ類のトッピングも充実。

「その日いちばんおいしいものを、その日のうちに料理に使う」

この姿勢が、サラダバーの人気たるゆえんだ。

オイルや野菜に栄養価の情報が書かれているのもうれしい。
オイルや野菜に栄養価の情報が書かれているのもうれしい。

デリはシェフ2名が仕込みを担当し、総菜でありながら専門店の一皿のような仕上がりになる。サラダバーだけで満足感があるのは、シェフの腕があればこそ。

サラダバーはサラダとデリ、デザートとスープ、ソフトドリンクまでお気に召すまま!
サラダバーはサラダとデリ、デザートとスープ、ソフトドリンクまでお気に召すまま!

シャキシャキのダイコンに、瑞々しく香りのいい春菊。温野菜のサツマイモやカボチャは甘く、ビーツは旨味が強い。野菜本来の味わいが濃いから、調味料はほんの少しで満足だ。

デリはジャガイモやベーコンがぎっしり詰まったトルティージャが気に入った。

モリモリと2回おかわりをして満足し、ホットコーヒーをいただきながらデザートにリンゴたっぷりのシブーストを味わった。

一気に食べたから、スープを飲んでもう一回おかわりしよう。

この日のデリは、ジャガイモのトルティージャ、ズッキーニと赤玉ねぎのマリネ、白身魚のエスカベッシュ。
この日のデリは、ジャガイモのトルティージャ、ズッキーニと赤玉ねぎのマリネ、白身魚のエスカベッシュ。

ランチメニューには、サンドイッチ、パスタ、ハンバーガー(パティはアンガス×黒毛和牛赤身の手ごね)、カレーなども揃い、どれもサラダバーとの相性がいい。

ランチの食事メニューに750円をプラスしてサラダバーをつけることもできる。
ランチの食事メニューに750円をプラスしてサラダバーをつけることもできる。

「季節によって味が変わるから、今日は何があるかな? って楽しみに来てくださる方が多いですね」と、森田里枝さんは話す。

ランチでは、1、2杯クラフトビールを楽しむ近所の常連も多い。「子供が帰ってくる前にリフレッシュしていける」という声もある。この街で頑張って働く人たちの息継ぎの場でもあり、柏駅前の“昼のオアシス”でもあるのだ。

15TAPのクラフトビールと、店主の“人生を変えた一杯”

夜は、クラフトビールが主役のビアバーになる。

タップ生ビールは常時15種類、さらに缶・ボトルを含めると20種前後。すべて作り手の顔が見えるブルワリーから仕入れている。

電車からも目立つビールの瓶や缶のパッケージ。国内で醸造される、作り手が見える銘柄を選んでいるという。
電車からも目立つビールの瓶や缶のパッケージ。国内で醸造される、作り手が見える銘柄を選んでいるという。

そもそも、森田さんの飲食業歴はスペシャルティコーヒーを提供するカフェからはじまった。コーヒーの世界で“豆の個性”と向き合ううちに、お酒への興味も深まり、さいたま副都心で行われた「けやきひろばビール祭り」での一杯が人生を変えたという。

「クラフトビールって、こんなにおいしいんだ……って衝撃でした」

はじめはお気に入りのブルワリー1社とだけ取引していたが、お客さんとの会話や日々の勉強で知識が深まり、今では全国各地のブルワリーと直接やり取りするまでになった。

そしてついに、店のオリジナルビール「THIS IS THE LIFE」を、静岡・沼津にある『REPUBREW』と共同で仕込んだのだ。

「みんなが好きな味!」と森田さんが太鼓判を押すオリジナルクラフトビール『THIS IS THE LIFE』(提供写真=THE LIFE)。
「みんなが好きな味!」と森田さんが太鼓判を押すオリジナルクラフトビール『THIS IS THE LIFE』(提供写真=THE LIFE)。

味の特徴を森田さんに尋ねると「グレープフルーツのような香りで、白い内皮のほろ苦さもありながらほんのりトロピカル。それでいて飲みやすいのに苦味もしっかり、というね。気づいたらグラスが空っぽになる軽やかさもあるんです」と説明してくれた。おいしそうすぎて、想像だけでもポワンと目元が赤くなってきそうだ。
「これが人生の醍醐味だ」と名付けられた一杯を、次の機会にぜひいただいてみたい。

クラフトビールはマニアックな世界に見えがちだが、森田さんが「初めて飲む人の扉になりたい」という気持ちで選んだラインアップが取り揃えられている。『THE LIFE』はビール文化の入り口としての役割も担っている。

住所:千葉県柏市柏1-1-8-2F/営業時間:11:30〜23:00(ランチは〜14:00LO、カフェは〜17:00LO)/定休日:不定/アクセス:JR常磐線・東武鉄道東武アーバンパークライン柏駅から徒歩2分

取材・文・撮影=パンチ広沢