古市勇介(ふるいちゆうすけ)【金魚番長】
1994年生まれ、東京都目黒区出身。巣鴨中学・高校時代のほとんどを池袋界隈で過ごす。上智大学経済学部中退。NSC東京24期生。NSC入学後すぐに箕輪智征と金魚番長を結成。2024年M-1グランプリ敗者復活戦第3位。
バスケも将棋も、漫才のネタ合わせまで全部『ジャンプ』で
——プロフィールに「池袋のことなら全て知っています」と。
金魚番長・古市 ちょっと言い過ぎかもしれませんが(笑)、学校が池袋だったんですよ。中高一貫の男子校に通っていたので、友達が住んでるところもバラバラ。なので休みもほぼ池袋に集合して遊んでました。『ジャンプ』は今でもあるのかな。
——『中高生センタージャンプ東池袋』ですね。
古市 そうです。バスケもフットサルも卓球もできて、当時死ぬほど通ってました。予定も決めずに集まってたんで、たまに誰もいないこともあって。そんなときは小学生と将棋指したり。
——いいお兄ちゃんですね。
古市 さすがに小学生より僕の方が強いんで、勝ちそうだなと思ったらその小学生がいきなり盤面バーンって叩(たた)いて。「おめえの負けだよ!」ってブチギレられて。で、僕も思わず「ごめん」って謝ってました。
——お兄ちゃん……。
古市 ははは。区の施設なんで無料なんですよ。文化祭でやる漫才のネタ合わせもジャンプでしてました。
——その頃から漫才をやっていたんですか?
古市 文化祭の時限定でしたけど。芸人にはずっと憧れていて、でも親に大学は行けって言われて、一応進学校だったので。浪人して大学には入学しましたが、だんだん行かなくなっちゃった。
——漫才の道を諦められなくて?
古市 いや、朝までポケモンGOしてたら起きられなくて。
——うちの子だったらキレます。
古市 卒業したらNSC(芸人養成所)に行こうと思ってたんですけど、4年で卒業できないことが分かって、これ以上かかると俺おじさんになっちゃうと。それで大学をやめました。
東京のカラオケを牛耳る『カラオケ747』
——芸人を目指したきっかけはやはりM-1でしょうか。
古市 バナナマンさんが好きで、でもネタというよりはバラエティー番組を見て憧れてました。M-1はちょっと見てたぐらいであまり分からないです。とにかくテレビに出たくて、結局そうなるためにはM-1に出るのが早いんじゃないかと思って。
——テレビに出たかった。
古市 目立つのが好きだったんですよ。幼稚園の時も桃太郎役のジャンケンで負けたら僕すごいごねたらしくて、結局桃太郎は2人いるという設定に変えてもらいました。
——最近よく聞くやつ(笑)。
古市 たぶんもう少し若かったら芸人じゃなくてユーチューバーやってたんじゃないですか。
——M-1を目指してNSCに入ってくる方たちとの温度差を感じることはなかったですか?
古市 でも負けず嫌いではあるので、出るなら勝ちたいっていうのはあったので。
——芸人になってから池袋との関係は変わりましたか?
古市 NSCが最近、神保町から東池袋に本拠地を移して、それでまた来るようになりました。僕のテリトリー内に。ただかつてが来過ぎではあったので、今は来るとちょっと懐かしいような、不思議な気持ちです。中高の頃はここ(『伯爵』)なんか敷居が高くて入れなかったです。
——中高時代はジャンプ以外だとどちらへ?
古市 サンシャイン通りのケンタッキーで、友達がナンパするのを2階席の窓から見るというのが定番でした。あと西池袋公園では、浪人の時にみんなで集まっては本気の缶蹴りと鬼ごっこをしてました。ハンバーグのおいしい『札幌牛亭』も通ってましたね。高校の時においしいお店をずっと探していて。中がレアで、ソースもデミグラスではなくこしょうの味。ここを見つけた時は感動しました。
——デートも池袋ですか?
古市 もう逆に『ナンジャタウン』行ってました。意外と空いてるんですよ。『カラオケ747』もよく行きました。
——カラオケ747?
古市 やっぱ知らないのか……めっちゃ安い747。僕ずっと東京のカラオケは747だと思ってたんです。
——東京のカラオケを牛耳ってるのは747。
古市 はい。そしたら池袋にしかなかった(注:新宿、新橋にも店舗あり)。
——でも分かります。中高時代に過ごした町はもはや“世界”。
古市 新宿とか渋谷とは違う何かがありますよね。東上線の人が多いからか服もそんなに気取ってないですし、アニメイトとかオタク系の文化も入ってきてますます不思議。
離れて尚感じる池袋という町の「引力」
——去年M-1敗者復活で注目され、今年は決勝進出の期待が大きく寄せられている中、プレッシャーは感じていますか?
古市 迷いはありますよ。過去に1回、たぶんこういうの求められてるんだろうけど、それとは違うやつをやっちゃって、失敗も経験してる。で、終わってからじゃないと何が正解かは分からないという。
——しんどい戦いですね……。
古市 M-1があるから毎年張り合いがあるけど、ほんとは早く辞めたい(笑)。僕ネタ書いてないのにきつい。ちらつくんですよね……。
——ちらつく?
古市 カラオケ行っても、喉を痛めちゃったらどうしようとか。M-1あるしなぁとか。
——でも遊んではいる(笑)。
古市 はい。いえ、なんかね、心の底から遊べない。夏休みの宿題終わってないのに遊んじゃってるけどみたいな。やっぱり優勝するしかないですね。
——最初金魚番長はNSCから組んだコンビだと知ってびっくりしました。箕輪さん、一緒にジャンプ行ってそう(笑)。
古市 結構勘違いされますね。合うんですかね、波長というか。2人で喋(しゃべ)るラジオも全然苦じゃない。自然とそうなったかもしれない。昔から極力毎日2人で何かやるようにしてたんで。仮に1週間ライブがなくても、どこかで一緒にネタ合わせはしていたり。
——池袋にコンビで来ることは?
古市 それはまだないですけど、なんなら箕輪のほうが今池袋に近いし。そう考えると池袋の引力感じますね。やっぱ池袋のことならなんでも知ってるかもしれない(笑)。
今回お話を伺った場所は……
珈琲専門館 伯爵 池袋北口店
8:00~23:30、無休。
豊島区西池袋1-29-1
☎03-3988-4997
取材・文=西澤千央 撮影=山出高士
『散歩の達人』2025年11月号より





