局地的な前線も影響!10月に甚大な被害をもたらした「令和元年東日本台風」
秋に大きな被害をもたらした台風として記憶に新しいのは、2019年10月12日に伊豆半島に上陸した台風第19号です。この台風は、関東甲信越や東海、東北の広範囲に記録的な大雨をもたらし、のちに災害の経験や教訓を後世に伝承することなどを目的として「令和元年東日本台風」と命名されました。
台風の接近時には静岡県、神奈川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、長野県、茨城県、栃木県、新潟県、福島県、宮城県、岩手県の1都12県に大雨特別警報が発表され、さんたつ読者に多い首都圏にお住まいの方も大変な経験をされたのではないでしょうか?
当時、多摩川や千曲川などの大規模な河川が氾濫し、浸水害や土砂災害が広範囲に及んだほか、長野県内では北陸新幹線が水没、神奈川県内では武蔵小杉駅周辺のタワーマンションの電気系統の設備が浸水し、長期間停電が続くなどの大きな被害が出ました。
この台風の影響で東日本を中心に過去の記録を上回る雨量となりました。神奈川県箱根町では総雨量が1000mmを超え、一年間で降る雨の約30%もの雨がたった数日で降ったのです。
かつてないほどの大雨となった原因の1つに、秋ならではの要因がありました。当時、関東の北側、そして東北付近に局地的な前線が発生していました。前線は異なる性質の空気がぶつかる場所で発生します。台風が南から送り込む暖かく湿った空気と北側の冷たい空気の間で発生した前線に向かって、多量の水蒸気が流れ込んだことで大雨となりました。
秋はまだ南に夏の名残の暖湿気が残っている一方、北からは冷たい空気が入り始めるため秋雨前線など前線が形成されやすく、そんな時に台風の接近が重なると記録的な豪雨が発生することが多くなるのです。さらに、この台風は海面水温28度以上の非常に温かい海の上を通り北上したため、海から大量の水蒸気が補給され、勢力をあまり落とすことなく接近したことも大雨の原因になりました。
こうした台風や前線による大雨に備え、最新の防災気象情報を確認することはもちろん、ハザードマップ等で避難経路を確認し早めに安全なところへ逃げる、側溝や排水溝を掃除して水はけをよくしておく、水のうや土のうを準備する、貴重品などは2階以上など高いところへ移動しておくなどの対策を取ることが重要です。
離れていても危険!「2019年台風第21号」の間接的な影響で車で避難中に事故が多発
さらに、令和元年東日本台風の接近後、約2週間後にも関東で大雨になったことを覚えているでしょうか?
大雨となった10月25日の天気図を振り返ると、本州の南岸沿いに低気圧、そして日本の東海上に台風第21号があります。台風第21号は日本へ接近しなかったものの、間接的に大きな影響をもたらしました。
低気圧に向かって水蒸気を多く含む湿った空気が流れ込んだことに加え、台風第21号周辺の暖湿気も流入し、関東付近で大気の状態が非常に不安定になったのです。台風から離れていれば安心かと思いきや、決して油断はできません。
この大雨によって、千葉県内では車で移動中に水没し、命を落とす事故が相次いで発生しました。車の中であれば安全という訳ではありません。かえって周囲の変化に気づきにくくなるリスクがあり、水没すると水圧でドアが開かず車内に閉じ込められてしまう危険もあります。
いざという時に備えて、車の中には窓ガラスを割って脱出するためのハンマーを備える、大雨の際はアンダーパスなどの水のたまりやすい場所は避けるなど日ごろから対策を心がけるようにしてください。そして、豪雨時は車で逃げることは危険と心得て、状況が悪化する前になるべく徒歩で避難するようにしましょう。
秋は高潮のリスク大!「2017年台風第21号」の接近で鎌倉のシラス漁被害が深刻に
夏から秋にかけてが年間で最も潮位が高くなる季節ですが、2017年の10月23日、大潮の時期と重なったタイミングで超大型で強い勢力の台風第21号が静岡県の御前崎市付近に上陸しました。
台風や前線の影響で西日本から東日本、東北で大雨となり、全国的に暴風が吹き太平洋側で猛烈なしけとなりました。当時、黒潮の大蛇行も重なって潮位が上昇している中だったため、各地で高潮の被害が相次ぎました。
首都圏では神奈川県鎌倉市で海沿いの施設が高潮や高波によって破壊され、漁具などが流失し名物のシラス漁に大きな影響が出ました。10月も下旬でもう台風シーズンはもうほとんど終わったかと思いきや、深刻な海への被害が出てしまったことが忘れられません。
10月に入って次第に涼しくなってきたとしても台風への対策は欠かせません。自然災害そのものを防ぐことは難しいですが、最新の情報を入手し基本的な対策をとることが、大切な命を守り少しでも被害を小さくすることにつながります。
文=片山美紀 TOP画像=ウェザーマップ
参考:
気象庁「令和元年東日本台風(台風第19号)による大雨、暴風等 令和元年(2019年)10月10日~10月13日 (速報)」
https://www.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/report/2019/20191012/20191012.html
気象庁「低気圧等による大雨 令和元年(2019年)10月24日~10月26日 (速報)」
https://www.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/report/2019/20191025/20191025.html
気象庁「台風第21号及び前線による大雨・暴風等 平成29(2017)年10 月21 日~10 月23 日 (速報)」
https://www.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/report/2017/20171025/20171025.html






