花菖蒲にタチアオイ……梅雨に見ごろを迎える花
梅雨に見ごろを迎える花菖蒲。水辺でまっすぐに咲く可憐な姿には清涼感があり、梅雨の重たい空気を吹き飛ばしてくれるかのようです。そんな花菖蒲の名所として知られるのが、東京都葛飾区にある「堀切菖蒲園」です。ここでは毎年花の見ごろの時期に「葛飾菖蒲まつり」が開催され(2025年は5月26日から6月15日まで)、街全体がにぎわいます。堀切の花菖蒲の歴史は古く、江戸時代の浮世絵師・歌川広重らが浮世絵に描いたことも有名です。
私が堀切菖蒲園を訪ねたのは、5月末のこと。見ごろには少し早かったものの、ちらほらと紫や白の上品な花が咲き始めていて、花菖蒲を眺めながら散歩する人たちの姿が見られました。園内には約200種6000株もの花菖蒲が栽培され、「葵上」や「五湖の遊(あそび)」、「堀切の夢」などユニークな名を持つ品種もあります。少しずつ異なる花びらの形や色合いをじっくり観察しながら散歩するのがおすすめです。
また、堀切菖蒲園のすぐそばを流れる荒川の河川敷まで足を延ばすと、ここでもたくさんの花菖蒲が見られました。こちらでは荒川のほとりで咲く花菖蒲とスカイツリーを一緒に写真におさめることもできます。
花菖蒲のほかに、タチアオイもまた梅雨を象徴する花として外せません。道路脇でまっすぐと伸び、長い茎にいくつもの花を付けた姿を見かけたことはありませんか? タチアオイは梅雨入りの頃に花が咲き始め、てっぺんまで花が咲くと梅雨が明けるといわれています。実際はこの通りにはなかなかならないですが、赤やピンクの鮮やかな花びらは梅雨空を明るくしてくれ、梅雨明けの青空にも映えますよね。
梅雨はなぜ起こるの?梅雨前線の源は?
日本の5つ目の四季と呼ばれることもある、梅雨。なぜ梅雨があるのかというと、日本付近で梅雨前線ができるためです。梅雨前線は冷たい空気と暖かい空気が衝突するところで発生しますが、この2つの空気がぶつかるのは日本から遠く離れた「ヒマラヤ山脈」に原因があります。
ポイントとなるのは、上空を流れる「ジェット気流」という強い風です。ジェット気流は西から東へと流れていますが、標高の高いヒマラヤ山脈にぶつかると二手に分かれます。分断したジェット気流が再び合流する場所が、オホーツク海付近です。ここで集まった空気は下降気流となり高気圧へ発達します。オホーツク海は冷たい海なので、空気はどんどん冷えてたまっていきます。
一方で、日本の南方に広がる太平洋は、夏に向けて日差しが強まるとともに暖かくなり、ここにある太平洋高気圧も勢力を強めます。オホーツク海高気圧からの冷たい空気と太平洋高気圧からの暖かい空気、2つの異なる性質の空気がぶつかることで梅雨前線が発生し、長雨を降らせるのです。
お花見は梅雨の晴れ間をねらってみて
梅雨前線は沖縄付近から次第に北上し、平年では本州でも6月に入ると次第に梅雨入りとなります。ただし、梅雨入りしたからといって、梅雨が明けるまで毎日雨が降るのかというと、そうでもありません。梅雨前線の近くでは雨雲がかかりやすくなりますが、少し離れると晴れ間がのぞくこともあります。特に梅雨前線が南へ離れて晴れる時は北から涼しい空気が入りやすいので、比較的過ごしやすくなるのです。
この梅雨前線の位置の予想はとても難しく、ちょっとしたズレで予報が外れることもあります。なので梅雨は気象予報士泣かせの季節ですが、お散歩の計画を立てる時は天気マークだけでなく、天気図上の梅雨前線にも注目してみてください。
貴重な梅雨の晴れ間はお散歩のチャンスです。今だからこそ見られる、梅雨を彩る花を愛でに出かけてみませんか?
文・撮影=片山美紀