ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。
近著は『ピエール瀧の23区23時 2020-2022』(産業編集センター)。

秦野市の龍にまつわる伝説とは

この「ペコちゃん公園 はだの」はさ、秦野市立の公園なんだよね?

—— そうですね。『不二家』の工場がここからすぐのところにあるという縁もあって、不二家がネーミングライツを取得して2018年からこういう装いになったそうです。

ネーミングライツでこうなったのか。じゃあ一応地域に根ざしたというか、ご当地公園っていう事ではあるんだな。秦野市って全然知らないんだけどさ、他に有名な名産品とかあるの?

—— 今はほとんど生産されていないらしいんですけど、タバコの葉の耕作が有名で、今も「たばこ祭り」は市内最大の観光イベントみたいですね。2023年は36万人集まったそうです。

36万人!? それはすごい! その祭りは何すんの? みんなでスパ~ッてタバコ吸うワケじゃないよね?(笑)。まあ、農作物としてのタバコの収穫を祝う収穫祭ってことだろうけど。すごいね、全然知らなかったな。で、ペコちゃんか……。なんか売店で不二家のおやつ的なものとか売ってたりするのかな?

—— いや、特には。自販機でアイスは売られているんですけど、メーカーは森永でしたね。

なるほど(笑)。ネーミングライツを取得してるから園内にペコちゃんがいるのは分かるんだけどさ、な~んか気になるのはこの龍だよね。そこかしこにフィーチャーされてるし。あのでっかい複合型遊具も、おそらく龍を模して作られてるワケでしょ? なんでそうなったのかな?

—— ちょっと調べてみますね……えー、秦野市には龍にまつわる伝説が残されています、と。その伝説にちなんで、こうして龍の遊具が置かれているみたいです。

龍の伝説? どんな内容なの?

—— まずですね、今は今泉名水桜公園という公園になっている場所にあった沼に、龍が住んでいたらしいです。そして「その龍は人に見られることを怖がるが、人の話し声や歌声を聞くのは好きで、岸辺に近づいてはこっそり聞き耳を立てていた。ある日、この沼の近くに住む美しい娘が、月明かりを頼りに沼に自分の姿を映して、歌いながら櫛で髪をとかしていた。しかしひょんなことから娘は足を滑らせて沼に落ちてしまい、水面で歌声を聞いていた龍はその姿を娘に見られてしまった。姿を見られたからには返すわけにはいかぬ、と娘をさらい、自らの背に乗せたまま沼底深くへ潜ってしまった」と。

はあ……。なんか『千と千尋の神隠し』的な川の氾濫の話かと思いきや、そうじゃないのね。それで、そのあと龍と娘はどうなったの?

—— 「娘が消えた村は大騒ぎになったが、娘は見つからず。それからしばらく経ち、ある日雷雨で川は増水し、沼はあふれて、土手を越えると室川(注:秦野市を流れる川)へと一斉に流れ込んだ。この時に村人達が大水から現れた龍と、その背に乗った娘を見た。龍は室川を下って見えなくなり、龍の尾が触れたところに尾尻という地名が残されている」ということだそうです。

……え、それで女の子は……?

—— いや、ここまでで伝説はおしまいみたいですね(笑)。

「電気グルーヴ公園」の実現性やいかに……

そうなんだ(笑)。娘のその後が気になるわ~。せっかくそんな伝説が残ってるんなら、龍の背中にペコちゃんが乗ってるコラボが見たかったな。じゃあせっかくだから龍の背中を滑ってみよう。結構デカい滑り台だよね。うわ、上まで来ると結構高いわ。じゃあ滑りまーす。おわ! アチチチッ! ケツが熱い! ローラーになってるからなのかな? 滑ってる間すごくお尻が熱くなるんだけど(笑)。

—— 本当ですか? じゃあ僕も滑ってみますね。うわ、アッツ!(笑)。これなんか敷いて滑る方がいいですね。

でしょ? 多分ローラーの摩擦熱だよね。

しかしこうして改めてこの公園を見るとさ、ファンキー度でいうと、ネーミングライツってのはファンキーなのかもしんないね。だってそのおかげでこの公園の遊具とかアップデートされてる感じあるじゃない。ここみたいに各市町村が売ってくれれば、たとえば「電気グルーヴ公園」も可能なわけじゃん。八王子に鬼の滑り台の公園があったけど、ああいうのを赤鬼と青鬼で作ることも可能ってことだよね、ネーミングライツを取得すれば。その手があったか、って感じ。各地の地方自治体も、買ってくれるところがあるならやってみたらいいのにね。そのおかげで維持費が捻出されて、遊具も新しくなったりするだろうからさ。子供にとっても良くない?

—— この企画の締めくくりに「電気グルーヴ公園」開園は最高だと思います!

まあそれは俺らにどんだけメリットがあるのかをまず考えないといけないけどね(笑)。不二家っていう企業が秦野市にお金を払うのは、イメージアップとか、地域との関係性もあるだろうから理解はできるじゃん。そういえば、さっき公園の地図を見たら奥の方に野球場や陸上競技場もあったけど、ああいうのも何かの名前がついてるの?

—— 野球場は付いてましたね、「中栄信金スタジアム秦野」って名前でした。地元の信用金庫がネーミングライツ取得してるみたいです。夏の甲子園の神奈川県大会とかもやってる、結構広い球場ですね。

そっか。つまりそれもグラウンドの維持管理費にまわせてる仕組みでしょ? 今ならポケモン公園でもいいし、ダンダダン団地公園でもいいし。作品にまつわるような土地の公園のネーミングライツを取得して、二次元コードとかを園内に貼って、そこからでしかアクセスできない動画を見られるようにするとかもできるよね。公共施設だから、商売にすることはできないだろうけど。ということで、この公園のいちばんファンキーな部分っていうのは、やっぱりネーミングライツのシステムだろうな! 可能性を感じるよ!

ペコちゃん公園 はだの

ペコちゃん度 ★★★★★
その手があったか度 ★★★★★
あれ、女の子は? ?????

水飲み場:あり  トイレ:あり
自販機:あり  灰皿:なし

住所:神奈川県秦野市新町10/営業時間:入園自由/定休日:入園自由/アクセス:小田急電鉄小田原線秦野駅から「高砂車庫前」「渋沢駅北口」行き神奈川中央交通バス約8分の「カルチャーパーク前」下車6分

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2025年1月号より

ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」!今回は、埼玉県さいたま市の根岸東児童公園(恐竜公園)からお届けします。
――毎月ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」!今回は東京都葛飾区です。西小岩五丁目公園、通称「モンチッチ公園」に来ました。
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