三角の口切りは新鮮ラムから!『ラムジンギスカン羊々』

羊肉のクセが好きならロールかマトン!
羊肉のクセが好きならロールかマトン!

ジンギスカン文化が根付く鳥取県大山町の隣、米子で育ち、昔から羊肉に親しんでいた小梨さん。「うちの生ラム880円は新鮮でやわらかい。苦手な人も食べられますよ」。一方で羊のワイルドな香りを楽しみたいなら、ロール800円をぜひ。濃い目のつけだれが酒を加速させる。

18:00~22:00LO、日休。
☎03-3421-1127

店主偏愛の酒で2軒目から酩酊『青木商店』

6、7人で満員の『青木商店』。「飲むね~」(店主)、「飲ますね~」(客)と、狭さが楽しい一体感を生む。「女性店主の立ち飲みも増えてきました」と店主・奈緒子さん。
6、7人で満員の『青木商店』。「飲むね~」(店主)、「飲ますね~」(客)と、狭さが楽しい一体感を生む。「女性店主の立ち飲みも増えてきました」と店主・奈緒子さん。
奥は3品盛り合わせ770円。熟成酒の「瑞祥黒松剣菱」60㎖ 880円。
奥は3品盛り合わせ770円。熟成酒の「瑞祥黒松剣菱」60㎖ 880円。

ジンなら「タンカレーNo.10」、焼酎なら「小鶴 初心者お断り」、ウイスキーはアイラ中心と店主・奈緒子さんの愛するお酒がずらり。「お酒をほめられると、我が子をほめられたようでうれしいの」。おつまみになるバターチキンカレー330円は、当日調理と数日間煮込んだものが選べる日もあり、後者がおすすめ!

17:00~23:00LO、月休。
☎なし

煙の向こうの激渋大将にキュン『焼豚(やきとん)とし』

「俺がいるときはいつでも店を開けるよ」と大将。
「俺がいるときはいつでも店を開けるよ」と大将。
カシラなどやきとんは各150円。タレ・塩・醤油から選べる。瓶ビール700円。
カシラなどやきとんは各150円。タレ・塩・醤油から選べる。瓶ビール700円。

昭和の銀幕俳優のようなオーラのとしさんが、焼き台に立って30ウン年。「昔からずっと炭火。やきとんは炭火じゃなきゃ」。つまみはやきとんのみと潔く、タン、レバ、シロ、ナンコツなど全9種。8席の狭いカウンターで煙にまみれながらがっつくべし。

開始時間不定~20:00ごろ(日・祝は12:00~19:00ごろ)、不定休。
☎なし

有りそうで無かった深い漬け酒ワールド『TICO(チコ)』

「ナッツの殻は床にポイでOKですよ」。
「ナッツの殻は床にポイでOKですよ」。
バイマックル(コブミカンの葉)ジン650円。お通しのマカデミアナッツや落花生は食べ放題。
バイマックル(コブミカンの葉)ジン650円。お通しのマカデミアナッツや落花生は食べ放題。
常連を大切にしており、カレンダーにはその誕生日をメモ。
常連を大切にしており、カレンダーにはその誕生日をメモ。

壁に瓶がずらりと並ぶ、漬け酒が名物。ピーチディルウォッカやコーヒーシナモン、レッドチリジンといった定番に加え、この日は牛タンジャーキー漬けなんてトリッキーな季節限定モノも! 「昔はオレオを漬け込んだものもあったよ」と常連さん。20~70代まで幅広い客層が楽しく飲める雰囲気も素敵だ。

18:00~翌2:00、無休。
☎なし

『おかえりー』で初めてなのについ「ただいま」

「ここで仕事の疲れを取ってくださいね」。
「ここで仕事の疲れを取ってくださいね」。
卵と生青のりのスープ、ネギとワカメのぬたなどお通し3品1100円。生ビール600円。
卵と生青のりのスープ、ネギとワカメのぬたなどお通し3品1100円。生ビール600円。

引き戸を開ければ、常連も一見(いちげん)も分け隔てなく接してくれる早苗ママが迎えてくれる。「お客さんは家族だと思っているので、料理は無添加で手作りを大切にしています」。お通し3品には汁物が1品付き、痛飲した胃を慰めてくれる。1杯目はなめらかな泡にこだわったスーパードライの生で決まり!

18:00~24:00、土・日休。
☎なし

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酒飲みどもが溜まりゆく今宵も楽しきデルタ地帯

三角形の角の方にこそ狭い店が多いはず。ということで、ゆうらく通りを歩くと、『羊々』という“狭旨(せまうま)”そうな店を発見。

「三角地帯は雑多で戦後の香り、アジアの雰囲気が残っていて好き」と店主の小梨治さん。おすすめの羊肉を丸めてスライスしたロールを頬張ると、野趣あふれる香りが広がる。4㎜と厚めに切ってあり、ガッツリと肉喰(く)ってる感が気持ちいい。

続いて三角の中央を探索。酔客でにぎわう立ち飲みの『青木商店』の店主・青木奈緒子さんいわく「もとは夫がここで焼き鳥屋をしてたの。でも体調を崩してしまって、私が(2024年)10月から立ち飲みを始めました」。

酒のセレクトが渋く、燻酒(くんしゅ)で作るアイラ・ハイボールや剣菱の熟成酒のビターな旨さは、おつまみカレーと相思相愛。酔いに任せて店主と常連に狭くて素敵な店を聞くと「『おかえりー』のママは義理人情に厚くて素敵よ」「『焼豚とし』の大将は怖そうに見えるけど実は優しい」。

『とし』はここから約10mの近さだ。勢いでそちらへ。大将のとしさんはギョロ目で迫力がある。そして店には品書きがない。ざわざわ……。

「昔あったけど、自然に破れてどこかへいったんだよ」

壁には競輪の車券、それに投票所と書かれた紙が。これは一体?

「道に落ちてたから拾って貼ったの」

大将の不思議な世界観にしびれつつ、2軒隣の『TICO』へスライド。店に入ると足もとでガリッ! 隣客が「お通しのナッツの殻は床に捨てるのがルールなんです」と教えてくれた。自家製漬け酒のバイマックルジンをいただくと、爽やかさと苦みが相まって実に旨い。

漬け酒沼にハマり、千鳥足で帰路につこうとすると、後ろから「『おかえりー』はこっち!」の声が。『青木商店』でその店を教えてくれた常連の大(だい)さんだ。大さんと肩を組み『おかえりー』に入ると、お通しのパプリカ入り切り干し大根に既視感が。平田早苗ママは「『青木商店』でも出た? 奈緒子ちゃんがお店を始めるとき『食事まで手が回らない』と言ってたから、応援の気持ちで向こう分の総菜もわたしが担当してるの」とニッコリ。ママのやさしさにジーンときてると隣で「三角地帯No.1のいじられ役は俺だ〜」と大さんも意味不明に盛り上がっている。三角でつながった丸っこいご縁に感謝!

左から、常連の大さん、ライター・鈴木。「三角でつながった縁にマルッ!」。
左から、常連の大さん、ライター・鈴木。「三角でつながった縁にマルッ!」。

取材・文・撮影=鈴木健太
『散歩の達人』2025年1月号より