武蔵野が発祥の看板メニュー油そばに、学割やランチセットも大人気!
『宝華らぁめん』は立川に本店があり、国分寺店は2号店として2009年にオープン。オーナーは東小金井に今もある中華料理店『宝華』で修業したあと、のれん分けで『宝華』の名物料理・油そばをメインとした『宝華らぁめん』を開いた。そもそも油そばは、東京・武蔵野地域で発祥したという説が有力で、中央線沿線には油そばがおいしいと言われるお店が点在している。
今や全国区となった油そば。スープのない汁なし麺で、麺にタレと油が絡められた分、麺の味わいをダイレクトに感じられるのが人気の秘密だろう。
午後の仕事に備えて、お昼をしっかり食べたい大人に好評なのが、メインの油そばやラーメンにプラス250円すると食べられるランチセットだ。開店から14時までの間に行われているサービスで、半チャーハン、ネギチャーシュー丼、餃子と半ライスのうちどれかを選べる。餃子も餡から手作りしていて人気だというが、厨房から聞こえるカンカンカンとお玉と中華鍋を振る小気味よい音につられて、油そばにランチセットの半チャーハンをつけて注文した。
水の違いが味に出る!? オーソドックスなのにこだわりの詰まった油そば
テーブルに運ばれてきた油そば。たっぷりのかいわれ大根とナルトが丼に彩りを添えている。油そばの麺は、製麺所の「草村商店」が手掛ける中太麺だ。すでに醤油だれと油が絡められていて、弾力のある麺は喉越しもよく、食べやすい。
店長の大木裕史(おおきひろし)さんは「油そばの中ではさっぱり系だとよくお客さんから言われます。ただタレの量は多めに入っています」と話してくれた。
このタレが秘伝となっていて、立川のお店でオーナーが作ったものを国分寺店でも使っている。
「国分寺の店で作ると、どうも味が違う、水が違うせいだとオーナーが言うんですよ」と大木さん。
国分寺と立川は、たった8km程度しか離れていないのに、そんなにも水が違うとは! タレに使っている材料は、一般的な醤油と調味料。油も植物油を使うことにはこだわっているが、入手しにくいものを使っているわけではないのだとか。材料が少ないだけに、作り手にとってはほんの少しの違いが大きく感じるのかもしれない。
オーナーのこだわりは、タレ以外にもある。麺をゆでるときにタイマーは使わないのも『宝華らぁめん』のスタイルだ。鍋から一本だけ麺を取り出して確認するなど、ゆでる人の感覚を頼りに麺をゆでている。
豚バラ肉を使ったチャーシューは、糸で縛った状態でゆでたあと、油そばに使うのと同じ醤油ダレに漬け込んでいる。主張しすぎないチャーシューは脂身が程よく抜けてしつこくないのも好感触だ。メンマも塩漬けの状態で仕入れて、店で戻して味付けしている。
豚バラ肉をゆでたスープは、鶏がらを合わせて、口直しのためのスープに使われている。薬味のネギだけが添えられた何気ないスープだが、深みをしっかり感じる味に仕上がっている。
全体的にシンプルながら、きちんとこだわって作られているから、何度でも食べたい味に仕上がっているのだろう。
半チャーハンも、具材は卵、ネギ、チャーシュー、ナルトを刻んだ王道スタイル。半量ながら、しっかり炒めて仕上げられていてレンゲで口に運んで、はふっと食べるたびに「こういうのが食べたいんだよねぇ」とニマニマしてしまう。
誰にとっても居心地良し。快く食事ができる良心的なお店
店長の大木さんは、なんと高校1年生で立川の『宝華らぁめん』でアルバイト始め、大学生になったころ国分寺に2号店ができたタイミングで異動。ホール担当から始めて、アルバイト時代には賄(まかな)いの担当もしながら25歳で社員になって、その後店長に。20年近く『宝華らぁめん』にいて、働きやすい職場だと話してくれた。厨房の様子からも、その雰囲気が伝わってくる。
国分寺店は30席近く席があるが、カウンター席なら1人でサッとおなかを満たしたい人にもピッタリだし、ボックスタイプのテーブル席は家族や仲間同士での食事も気兼ねなく楽しめる。
オープン当初から店内奥にある柱時計が、30分に一度、時を知らせるたびに一層親しみやすい空気がお店を包む。油そばのおいしさはもちろん、店内の雰囲気もまた味のうち。また食べにこようと思わせてくれる温かみがあるのだ。
取材・撮影・文=野崎さおり