こうしたキャラクターたちが、像として街に飾られていることも多い。色鮮やかなFRP製、銅製など使われる素材もさまざまであるが、私が一番気にかかるのが、石でできたキャラクター像である。

なぜかと言えば、『ドラえもん』の「のび太の魔界大冒険」で、大魔王の手先・メジューサに石にされてしまうドラえもんとのび太を思い起こさせるからであった。

『のび太の魔界大冒険』で石にされてしまったドラえもんをモチーフにした石像は、『藤子・F・不二雄ミュージアム』(川崎市)に設置されている。
『のび太の魔界大冒険』で石にされてしまったドラえもんをモチーフにした石像は、『藤子・F・不二雄ミュージアム』(川崎市)に設置されている。

バカバカしいとはわかっていつつ、かわいらしいキャラクターが石になっている姿を見ると、つい「魔法で石にされてしまったのでは……」と思ってしまう。今回は、各地で石になっているキャラクターたちを見ていきたい。

「石にされてしまった感」を覚える理由

なぜキャラクターたちに「石にされてしまった感」を強く覚えるかというと、普通はカラフルな色彩のキャラクターが、石像ではたいてい灰色一色になってしまうからではないだろうか。

群馬県庁(前橋市)前に設置された群馬県キャラクター・ぐんまちゃん。単色ではあるが、ぐんまちゃんの優しい雰囲気に合った色。
群馬県庁(前橋市)前に設置された群馬県キャラクター・ぐんまちゃん。単色ではあるが、ぐんまちゃんの優しい雰囲気に合った色。
東京消防庁のキャラクター・キュータ。実際は赤スーツに水色ヘルメット、黄色いアンテナとカラフルである(府中消防署)。
東京消防庁のキャラクター・キュータ。実際は赤スーツに水色ヘルメット、黄色いアンテナとカラフルである(府中消防署)。

中にはキャラクターの色に合わせて、赤御影石などで作られている石像もあるが、こちらもやはり単色である。

館林市観光キャラクター・ぽんちゃん像。タヌキ色に合わせて赤御影石が使われている(東武鉄道館林駅前)。
館林市観光キャラクター・ぽんちゃん像。タヌキ色に合わせて赤御影石が使われている(東武鉄道館林駅前)。

こうした懸念を払拭するためか、埼玉県さいたま市浦和区のキャラクター「浦和うなこちゃん」石像は、黒との二色づかいで生き生きとした感じになっていた。

やなせたかし先生デザインの浦和うなこちゃん。手に持っているうちわは時期によって変えられる。
やなせたかし先生デザインの浦和うなこちゃん。手に持っているうちわは時期によって変えられる。

さらには、リボンや衣装などにワンポイントで赤色が用いられる石像も多く見られる。

天橋立傘松公園のキャラクター、かさぼう。蝶ネクタイの赤が効いている(京都府宮津市)。
天橋立傘松公園のキャラクター、かさぼう。蝶ネクタイの赤が効いている(京都府宮津市)。
三郷中央駅前に設置された、三郷市(埼玉県)キャラクターのかいちゃん&つぶちゃん像。かいちゃんのスカーフに赤が用いられている。
三郷中央駅前に設置された、三郷市(埼玉県)キャラクターのかいちゃん&つぶちゃん像。かいちゃんのスカーフに赤が用いられている。
王寺町(奈良県)キャラクターの雪丸。首のリボンは青紫に着色されており、ツヤ加工と合わせて生き生きとした像になっている。
王寺町(奈良県)キャラクターの雪丸。首のリボンは青紫に着色されており、ツヤ加工と合わせて生き生きとした像になっている。

ご当地キャラブームの火付け役でもある滋賀県彦根市のキャラクター「ひこにゃん」も、「井伊の赤備え」で知られる赤兜をかぶっているのが特徴で、市内各所で見られる石像も兜はだいたい赤色で作られている。

正座をするひこにゃん。よく見ると、赤兜の他にも鈴には黄色い石が使われている。
正座をするひこにゃん。よく見ると、赤兜の他にも鈴には黄色い石が使われている。
兜のつばの部分など、上に挙げたひこにゃんとは少し造形が異なる。
兜のつばの部分など、上に挙げたひこにゃんとは少し造形が異なる。

色を石で再現しようという苦労のあと

人気キャラクター「ハローキティ」は、サンリオ創業者が山梨県甲府市出身であることから、2022年に「甲府市ふるさと大使」に就任し、ある意味「ご当地キャラクター」となった。甲府市内に設置されたキティちゃんの石像は、チャームポイントのリボンや服が赤色で作られており、「石にされてしまった感」がだいぶ薄らいでいる。

甲府市・岡島百貨店入り口に設置されたキティちゃん。着色された文字がカラフル。
甲府市・岡島百貨店入り口に設置されたキティちゃん。着色された文字がカラフル。
ご当地ではないが、静岡市で見つけたキティちゃん。キティちゃん石像はリボンと服を赤く作るのが一般的なようである。
ご当地ではないが、静岡市で見つけたキティちゃん。キティちゃん石像はリボンと服を赤く作るのが一般的なようである。

群馬県太田市のキャラクター「おおたん」は、合併した4市町を象徴する4色の丸を頭に載せており、黄は「実り」、青は「空」、橙は「太陽」、水色は「清流」をあらわしているとのことだ(太田市ホームページより)。東武鉄道の太田駅前に設置された「おおたん」石像は、なんとかしてこの4色を石で再現しようという苦労のあとがうかがわれ、微笑(ほほえ)ましい。

とても苦労して作られたのだろうということがわかる、おおたん。
とても苦労して作られたのだろうということがわかる、おおたん。

各地で個性豊かなキャラ石像を見つける楽しさ

別の意味で微笑ましいキャラ石像もある。栃木県宇都宮市の餃子店『宇都宮餃子館』では、キャラクターの「スタミナ健太くん」石像を店頭に設置しているが、なんと台座に書かれた文字が「スタシナ健太」となっているのである。

赤字で上書きされているので一見「スタミナ」と見えるが、よくよく見ると「シ」と彫られているのがわかる。
赤字で上書きされているので一見「スタミナ」と見えるが、よくよく見ると「シ」と彫られているのがわかる。

説明書きによれば、海外の石屋さんに発注した際、「ミ」と「シ」を間違えて彫られてしまったとのことで、見ると思わず微笑んでしまう。

こうして個性豊かなキャラ石像を見ていると、「魔法で石にされてしまった」感覚は薄らぎ、逆に「石でいろいろな表現ができるのだな」という驚きのほうが強くなってくる。今後も各地で個性豊かなキャラ石像を見つけることを楽しみにしたい。

イラスト・文・写真=オギリマサホ

※注1:「日本経済新聞」2022年2月6日( https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC0429G0U2A200C2000000/

田無。それは西武新宿線沿線に住んでいた私にとって、各駅停車の終点としてなじみ深い地名であった。そんな田無市が、保谷市と合併して西東京市になったのは2001年のことだ。2024年になり、あれから23年が経った。かつて田無市があったことなど、もう忘れ去られてしまっているかもしれないと思っていた。ところが、先日用があって田無に赴いたところ、あちらこちらに旧田無市の痕跡が残っているではないか。私は史跡を巡るような気持ちで、旧田無市の名残を見つけることにした。
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先日、「パインアメの缶、約70年ぶりに復刻」というニュースを見た(※注1)。何でも、祖母の遺品整理をしていた女性が、手芸用品入れに使われていた1950年代のパインアメ缶を発見し、製造元に送ったことがきっかけだったという。