分福茶釜ゆかりの地・館林はタヌキまみれ

当日、寺の最寄り駅である東武鉄道・茂林寺前駅を出ると、早速親子のタヌキがお出迎えをしてくれた。

茂林寺へ向かう道には、「分福茶釜」のストーリーを復習できるパネルも設置されている。
茂林寺へ向かう道には、「分福茶釜」のストーリーを復習できるパネルも設置されている。

寺へ向かう道に設置された飛び出し看板もタヌキ、マンホールもタヌキ、これはいやが上にも期待が高まる。

本当にタヌキが横断するかどうかは定かではない。
本当にタヌキが横断するかどうかは定かではない。
人?の良さそうな茶釜タヌキ。この他にも、館林のキャラクター「ぽんちゃん」(こちらも分福茶釜がモチーフ)のデザインもある。
人?の良さそうな茶釜タヌキ。この他にも、館林のキャラクター「ぽんちゃん」(こちらも分福茶釜がモチーフ)のデザインもある。

茂林寺境内に入ると、参道の両脇にはずらりと並んだタヌキが出迎えてくれ、

参道の両側には、さまざまな格好をしたタヌキが並ぶ。
参道の両側には、さまざまな格好をしたタヌキが並ぶ。

奥には巨大タヌキも鎮座している。

茂林寺の中でもひときわ大きなタヌキ。
茂林寺の中でもひときわ大きなタヌキ。

堂内の膨大なタヌキコレクションを堪能した後は、参道の土産物店でタヌキグッズを買い求めることもできる。

茂林寺門前の土産物店で購入。ファンシーなデザイン。
茂林寺門前の土産物店で購入。ファンシーなデザイン。
タヌキの酒器セット。顔がタヌキっぽくないが、そこはご愛敬。
タヌキの酒器セット。顔がタヌキっぽくないが、そこはご愛敬。
「想い出」と書かれた徳利の中にタヌキ。みうらじゅん氏の言う「いやげもの」的な土産物。
「想い出」と書かれた徳利の中にタヌキ。みうらじゅん氏の言う「いやげもの」的な土産物。
昭和っぽいカラフルなタヌキキーホルダー。これまたレトロなシモジマ製の紙袋に入れてくれる。
昭和っぽいカラフルなタヌキキーホルダー。これまたレトロなシモジマ製の紙袋に入れてくれる。

寺を出た後はYさんの案内のままに、タヌキの器で有名なうどん店で昼食、

館林駅前の『花山うどん』にて。幅広麺の「鬼ひも川うどん」は、タヌキの器で供される。
館林駅前の『花山うどん』にて。幅広麺の「鬼ひも川うどん」は、タヌキの器で供される。

タヌキの像が立ち並ぶ館林市役所の見学等々、充実した一日を過ごしたのであった。

館林市役所前には、ありとあらゆるスタイルのタヌキが揃っている。
館林市役所前には、ありとあらゆるスタイルのタヌキが揃っている。

「分福ヘルスセンター」の看板を追い求めて

ところで、茂林寺堂内のタヌキコレクションを見学している際、ある掲示が目に留まった。それは昭和30年代のものと思われる、「分福ヘルスセンター」のパンフレットであった。そのパンフレットによれば、「分福ヘルスセンター」は「関東一を誇る大ローマ風呂」を備え、「のど自慢大会」や「ユーモア―たぬき葬」(説明文を何度読んでも催しの趣旨がわからなかったが)などのイベントも開催されていたようである。

「分福ヘルスセンター」は、残念ながら現在は閉館しており、跡地には「東武トレジャーガーデン」が建設されている(こちらも2021年に閉園)。帰宅後にネットで検索してみたところ、「分福ヘルスセンター これより9キロ」というサビ看板は現在でも残っているようなのだ。これはぜひ見てみたい、と思った。

ところがネットの情報だけでは、この看板がどこに設置されているのかが分からない。こうなったらストリートビューで片っ端から探してみようではないか。そう考えた私は、「分福ヘルスセンター」跡地から半径9㎞圏内の道路をしらみつぶしに見ていった。

1時間経ち、2時間が経った。しかし見つからない。もっと場所を絞り込める情報はないものか。サビ看板の画像をよくよく調べてみたところ、「板倉町商工会」と書かれた鉄柱が写りこんでいるのを発見した。「分福ヘルスセンターから9㎞の板倉町」、これで範囲はかなり限られてくる。そして遂に、県道除川板倉線沿い、「旧板倉変電所」バス停近くに看板が存在しているのを発見したのである。

一番のお気に入りのサビ看板を見つけた

後日、改めて館林に向かい、念願の「分福ヘルスセンター」看板を撮影することに成功した。

あ、あれは……
あ、あれは……
念願の「分福ヘルスセンター」の看板である。これを見るために片道3時間かけて来た。
念願の「分福ヘルスセンター」の看板である。これを見るために片道3時間かけて来た。

描かれたタヌキはユーモラスな姿で、今までに見たサビ看板の中で一番のお気に入りとなった。

近くには味わい深いサビ看板も多い。
近くには味わい深いサビ看板も多い。

ふだん気にも留めていないような古看板やオブジェにも、もしかすると根気強く探し当てて発見を喜ぶ人がいるのかも知れない、と思うと、あだやおろそかにはできないものだと改めて感じるのである。

イラスト・文・写真=オギリマサホ

さまざまな動物の中で、およそタヌキほど実像とかけ離れたデフォルメがなされているものはないのではないだろうか。野生のタヌキはシュッとした顔で太ってもおらず、むろん“八畳敷”でもない。ところが昔話に登場するタヌキたちは、いずれも丸々と太った腹を抱え、悪だくみをしたり、人を化かしたりする。多くの人が「タヌキ」と聞いて思い浮かべるのは後者のイメージではないだろうか。
20年ほど前、業界の人が集まる会合で「イラストレーターとして成功するなら、やっぱりキャラクターだよ」と言われたことがある。確かにキャラクターが当たれば大儲けできそうだ。しかし、お金のために魂を売るような真似をしてもよいのだろうか。その場ではそう考えた私であったが、現在に至るまで魅力的なキャラクターを生み出すこともできず、とはいえ売るほどの魂もなく、のらりくらりと生きている。
以前このコラムにおいて、ブロック塀に設置されているサビ看板について取り上げた。しかし、サビ看板はブロック塀のみにあるわけではない。店先などに設置された、ポールスタンド看板とか置き看板などと呼ばれる看板。これもまた、いい具合にサビているものが多いのだ。