「うろこ雲」「ひつじ雲」芸術作品のような雲を楽しもう
秋の季語としても有名なのが「うろこ雲」や「いわし雲」、「ひつじ雲」です。どれも秋の空の高さを実感させてくれる雲たちです。蒸し蒸しとした水蒸気の多い夏は空の低いところに雲ができやすいですが、秋になると空気が乾燥して高い空に広がる雲が増えます。
「うろこ雲」や「いわし雲」は小さな粒状に見える、空の高いところに現れる雲です。「巻積雲」といって上空約5~10㎞の位置に発生します。つぶつぶのかわいらしい姿をもっと近くで見てみたいと思う人もいるかもしれませんが、実はこの小さな丸いフォルムは、私たちが地上から見上げているからこそ楽しめるもの。
遠く離れた場所から見ているから小さく見えるだけで、飛行機で近づくと、実際は地上から見た積雲(「わた雲」と呼ばれる雲)くらいのサイズなのです。
「ひつじ雲」は上空2~7㎞の位置でできる「高積雲」と呼ばれる雲です。うろこ雲よりも地上から近いところにあるため、一回り以上は大きく見えます。
うろこ雲やひつじ雲は低気圧や前線が近づく前に現れることが多く、天気が崩れる前触れともいわれます。天気が下り坂へ向かう時は、上空の薄い雲から広がって、だんだんと下層の厚い雲が近づいてくるのです。天気予報で数日先が雨という予報が出たら、うろこ雲やひつじ雲と出合えるかもしれません!
こまめに空を見上げるようにしてみてください。
秋は「雲海」の季節。見えやすい気象条件は?
雲海とは、山など標高の高いところから見下ろした時に雲が海のように広がって見える現象のことです。
眼下に浮かぶ雲の神秘的な姿はとても美しくて圧倒されます。雲海は雨が上がった後、夜間に放射冷却が強まると翌朝に見られることが多いです。特にねらい目なのは、秋や春の明け方から早朝、おだやかに晴れて湿度が高い時です。前日に雨が降っていると空気中に水蒸気量が多く、なお見られるチャンスが高まります。
雲海スポットとして有名なのは、関東では埼玉県秩父市です。山に囲まれた盆地性気候の秩父市は夜間の放射冷却が強く、雲海ができやすいのです。ライブカメラによって雲海の様子を楽しむこともできますが、できれば現地を歩いて生で絶景を楽しみたいですね。秩父の雲海は市街地を覆うように発生するため、見る場所によって表情が変わります。
夜景の光が下から雲海を照らして虹色に輝く「雲海夜景」のほか、橋や工場が雲海の中にたたずむ「天空の橋」、「天空の工場」も魅力的です。秩父市以外にも北海道占冠村の雲海テラスや兵庫県朝来市の竹田城跡も、雲海スポットとして人気です。
「濃霧注意報」をチェック!実は身近にある雲海散歩のチャンス
「幻想的な雲海を人生で一度は見てみたい!」けれど、有名な雲海スポットまで出かけるのは難しいということもありますよね。そんな場合は、皆さんの身近な場所で雲海と出合えるチャンスをねらってみましょう。
雲海をつくる雲の多くは、高さ2㎞よりも低い場所で発生する層雲や霧です。ということは、濃い霧が出ている時に高層ビルや高層マンションなどの高いところから見下ろすと、「雲海」となるはずです。このため、濃い霧の発生が予想される「濃霧注意報」が発表されている時は、雲海散歩のチャンスといえそうです。
気象庁の「霧プロダクト」というウェブサイトでも、大まかに霧の発生している場所がわかるため参考になるかもしれません。ただし、霧の発生中は見通しが悪くなるため転ばないように足元に十分注意して楽しむようにしてください。
2024年は例年以上に夏の暑さが長引きましたが、ようやく過ごしやすい気候が続くようになりました。空を見上げて楽しむ「うろこ雲」や「ひつじ雲」はもちろん、時には見下ろしながら味わう「雲海」を眺める散歩もおすすめです。