松戸市民なら誰もがその名を知っている店

松戸駅東口の階段を降り始めるとすぐに視界に現れる「Café de KAORI」とローマ字で銘打った看板。その字体からもどこか麗美な雰囲気のする店は、地下1階に広々として明るい優雅な喫茶空間を設えている。

創業は1974年。今年でちょうど50周年を迎える。もともと1952年に設立した食料品店、伊勢卯商店を母体として喫茶店を始めると、一時は松戸を中心に数店舗も展開する人気となる。1978年には本格的なフランス料理を供するレストラン「LA KAORI」として営業していたこともあると、創業当時からの逸話を語るのはマダムの剱持英子さん。

「夫が本格的な西洋料理店を開きたいというので、お料理も内装も調度品もいろいろとこだわったお店でした」

レストランオープン当時の記念すべきポスターを携えるマダム。
レストランオープン当時の記念すべきポスターを携えるマダム。

現在の店は1985年に建て替えたビルに再オープンした、料理も喫茶も楽しめるサロン風な店。松戸では知らない人はいないほどの有名店だ。

店内のレジ回りエリアを覆うかわいらしい赤いファサード。外気を浴びる公園のテラスにいる気分。
店内のレジ回りエリアを覆うかわいらしい赤いファサード。外気を浴びる公園のテラスにいる気分。

人気メニューの中でも格別はアフタヌーンティー・セット

フランス料理店であったこともあり、メニューがとても豊富なのが特徴。なかでも人気のアフタヌーンティー・セットは格別だ。

トッピングも絶妙な厳選素材のアフタヌーンティー・セット3500円。
トッピングも絶妙な厳選素材のアフタヌーンティー・セット3500円。

松戸市の文化的なコミュニティースペースでもある聖徳大学で「アフタヌーンティー講座」のレクチャーも行っているというマダムの「まずは召し上がって」との言葉に従い……、1段目のサンドイッチとピクルス、2段目のスコーンと生クリームに杏子ジャム、3段目にはフルーツケーキにプティパフェ、焼き菓子、仕上げのフルーツにはメロン……という順でいただくうちに、そのどれもが素材から厳選され、丁寧に作られ供されている味わいだと気づく。ピクルスや生クリーム、ジャムなどのトッピングも、その絶妙な風合いの組み合わせに思わずうなってしまう。

「洋菓子協会の会長さんから教えていただいたり、それに、『銀座マキシム』のコックを務めたスタッフともいろいろ相談して出来上がったメニューです」と、にこやかなマダム。

その他、まるで雪解けのように口の中で淡くとろけるクレームダンジュや、リピーターが後を絶たないフワトロのオムライス、カオリ風ハンバーグやズワイガニとホタテのドリアなどなど、スイーツもお料理も人気メニューの枚挙にいとまがない。

夢心地の触感が楽しめるカマンベールチーズケーキ750円。自家製ラズベリーソースのほのかな酸味も絶妙。
夢心地の触感が楽しめるカマンベールチーズケーキ750円。自家製ラズベリーソースのほのかな酸味も絶妙。

全方向にオーセンティックを究める、これぞ老舗

地下にあることを忘れてしまうほど天井が高い店内には、大理石のテーブルに本革のチェア、食器はウェッジウッド。壁には秩序正しくフランスの巨匠マルク・シャガールのリトグラフ「エルサレムのためのステンドグラス」が飾られている。

天窓からあふれる空からの光が……と思わず書きたくなるが、ここは地下室。というギミックを備えるゆとり空間。
天窓からあふれる空からの光が……と思わず書きたくなるが、ここは地下室。というギミックを備えるゆとり空間。

淹れてもらった紅茶があまりにもおいしく、ホッとする香りなのでたずねると、世界三大銘茶といわれる中国の祁門紅茶(キーマン)を専門店から特別に入手しているとのこと。どうりで洗練の味わいである。ダージリンはインド、スリランカからはウバを取り寄せるなど、聞くほどにその本物志向が伺える。

茶葉は販売もしている。「紅茶は焦らず、じっくりと蒸らしてから召し上がってください」。なんだかとても心癒やされ、まぎれもなく“カオリ”よいお茶時間でした。

他店では買えない祁門(キームン)紅茶(520円/250g)や、すこぶるおいしい自家製の焼き菓子(250円~)も店頭で販売している。
他店では買えない祁門(キームン)紅茶(520円/250g)や、すこぶるおいしい自家製の焼き菓子(250円~)も店頭で販売している。
住所:千葉県松戸市松戸1178 B1

取材・撮影・文=常田 薫