有楽町高架下のイタリアン大衆酒場
昼食どきにJR有楽町駅から線路沿いの道を新橋方面へ歩いていると、高架下のレンガにマッチした、おしゃれな外観のイタリア料理店を発見。ランチタイムの看板が出ていたので入店してみた。
店に入ると、かなり奥へ広いことに驚く。左側にはオープンキッチン、右側にはテーブル席が並び、さらに奥にもテーブル席がある。これだけのスペースがあれば、ゆったりと料理を楽しめそうだ。
「開業は1992年です。開業当初は『帝国ホテル』に近いところの高架下で営業していました。高架の補強工事のため、2017年にここへ移転してきたんです」と教えてくれたのは総料理長の長木邦彦さん。
「店名の“トラットリア”とは、イタリアでは家庭的なレストランや大衆居酒屋のようなイメージです。“チャオ”はイタリア語の挨拶の言葉で、『やあ!』『じゃあね!』といった意味。トラットリア チャオは『ようこそ、イタリアン大衆酒場へ』といった意味なんですよ」と長木さん。
たしかに気取ったところがなく、ワイワイガヤガヤと楽しめそうな雰囲気のあるお店だ。
選べる本格イタリアンランチと充実サラダバー
ランチメニューはパスタやピッツァなどのイタリアンメニューだけでなく、ハンバーグやカレーなどランチの定番メニューが並ぶ。毎日来ても、大人数で来ても、みんな満足できそうなラインアップだ。
あれこれ迷っていると、と長木さんが鶏ひき肉と茄子のトマトソーススパゲティ1550円をすすめてくれた。パスタが出来上がるのを待っている間に、サラダバーとドリンクバーへ向かう。
サラダバーで使う食材は契約している業者から新鮮な有機野菜を仕入れているそう。トマトやキュウリ、ブロッコリーなど彩り鮮やかなサラダが並んでいる。ドレッシングは週替わりで3種類。今回はシーザー、青じそ、オニオンが用意されていた。どれも店内で手作りのオリジナルドレッシングだ。
筆者が心を奪われたのはかぼちゃサラダ。ほどよい甘さとホクホク食感で、つい、多めに取ってしまい、パスタが出される前にこれだけで満足しそう。
バゲットやデザートのパンナコッタなど、野菜以外も魅力的! サラダバーの人気の理由がよくわかる。
ほどなくしてテーブルに鶏ひき肉と茄子のトマトソーススパゲティが到着。トマトの酸味は控えめで、チーズのコクとほのかな塩味がソースの味を引き立てる。オリーブオイルをたっぷりと含んでまろやかになった茄子と鶏ひき肉の食感も秀逸で、パスタの茹で具合も言うことなし。
「鶏肉と茄子は相性がいいんですよ。トマトソースはホールトマト缶を使っているんですが、その年によってトマトの甘みや酸味が変わるので、味付けで調整して、いつも最高の味になるようにしています」。なるほど、そういった細かいところまでこだわっているので、この味ができるんだと納得。
メニュー選びに迷った末、スパゲティをいただいたが、牛ほほカレー1750円も気になったので聞いてみると、「4〜5日熟成させた和牛のほほ肉を、9種類のスパイスと果物でじっくりと煮込んだカレーです。こちらもランチメニューでは人気の一品です」と長木さん。
イタリアンの達人が、日本の国民食カレーをどのように仕上げたのか、興味津々。筆者はカレー好きでもあるので、次回注文するランチメニューが早くも決定した。
ディナーメニューの人気はチーズリゾット
テーブル調味料のシーソルトとブラックペッパーはミルで砕いて使うタイプだ。「粉末の塩や胡椒はテーブルに置いているあいだに品質が変わってしまうことがあるんです。使う直前に挽いたほうが、おいしいんですよ」と長木さん。お客さんにおいしく食べてもらいたいという長木さんの気遣いを感じることができる。
イタリアン大衆酒場なら、ディナーメニューも気になるところ。長木さんにおすすめを聞いてみると、お客さんの前で、大きなパルミジャーノの上で仕上げる石焼パルメザンチーズリゾット1980円が人気だそう。話を聞いているだけでその人気の理由がわかる一品だ。ディナータイムに来て、おすすめワインを飲みながらリゾットを味わってみるのもいいなぁ。
ベテランシェフのこだわりメニューとスタッフの丁寧な接客、ゆったりとリラックスできる店内。とても居心地のいいお店だ。駅からのアクセスもよく、再び訪問するべきお店リストの上位にはいる1軒を見つけることができた満足感を胸にお店を後にした。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎